3月29日 まだ、風邪は治ってません。

 寝起き以上の頭のボーッとする感じ。

 アカン、マジで長引いてる。


「桜木さん、おはようございます。体調、大丈夫ですか?」

「平行線だわ、あんまり良くない。オモイカネさんや、朝やで」


『もう起きないとだめ?』

「可愛いなぁ、2度寝するか」

「すみませんが、今日は予定が有りまして」


「ほう?ワシの死刑か?」

「違います。涎は大丈夫そうなんで、身支度を終えたら下に来て下さい、服は例祭服でお願いします」


「うい」

『私も、着替えた方がいい?』


「合わせるか」

【ふふふ、お任せを〜】


 主さんがくれた例祭服を着て、オモイカネさんには虚栄心の作ってくれた服を。

 色々な意味で似合うわ。


 ただな、何だ、国連が視察に来るんか?




 久し振りに会うハナは、何かパサパサ感。

 何だろう、パサパサ。


「おはよう、大丈夫?」

「おう、まだ風邪継続やねん」

「熱は、微妙に有りそうだな」


「ね、無理しないでね。コチラは?」


『オモキ、エナ。エナです』


 OMOIKANE

 ENA OMOKI


「エナちゃん、よろしくね」

「君じゃないのか?」

『くんのほう』


「桜木さん」

「ワシは何も知らんぞ」

「おう、それで良い。浮島くれ」

「新設したカーネーションズ用に、お願い」


「は、え?」

「転生者の団体、正式なのって無かったんですって」

「おう、一致団結した」


「浮島も、良いの?国は?国連は?」

「国は問題無い」

「それで、国連と話し合うの」


「お、ぉお、設置場所は?」

「ハワイだ」

「ふふ、最高でしょ?」


「え、一緒に行く」

「ねー、行きましょ」

「おう、お前も一緒だ」


「でも制御具が」

「もう少ししたら来る」

「ベールは?」


「帽子はするわ」


 風邪だけど元気、だけどパサパサ。

 何か不安。




 少し気を張って待ってたものの、以前に会った国連大使にマイケル補佐官がやって来た。

 そのまま中央分離帯跡地で、大使に解錠して貰う事に。


『すみません、使い方を』

「ソコに差し込んで、回す、はい、どうもです。1番デカいのにしますね」


『はい、宜しくお願いします』


 いつの間にか出来ていた大きな浮島に移動し、ハワイへ空間を開く。

 暖かい。


「ハワイの神様、居られますでしょうか」

《ハウメアです、既にお話は伺っております、さ、どうぞ》


「ありがとうございます」


《ふぉぉおおおおお!温かぃいいい!湿度も有る、うん、素晴らしいでは無いかぁ、最高じゃぁ》

「流石植物、が、瑞々しい」

「まさか、こう来る事になるとはな」

「暖かいよぅ、海バカ綺麗ぃい」


 つか、他のも付いて来てるけど良いんだろうか。

 ソロモンさんは勿論、マーリンに咲ちゃん、ウーちゃんまで。


『良い気候ですね、マーリン』

『来んな』

《ふふ、強い神様や精霊がいっぱいだねぇ》

『ハナ、夏の風はどう?大丈夫?』

「ふふ、良いね、凄く良い」


《ふふふ、では、接岸はソチラで》


 マジで良いんかい。


 フォートハス湾と呼ばれる場所の近くに浮島を置き、先ずは入国審査へ。

 日本大使館へ行き、次に補佐の自治区の大使館、そして国連はスイスなのでスイス大使館へ。


「桜木さん、フィンランド大使館から連絡が」

「はいはいはい」


 フィンランド大使館に向かうと、フィンランドで会った大使が。

 ココまで来るの大変だろうに。


『あの、遅くなりましたが、お受け取りを』

「意外と平気なんで大丈夫ですよ?」


『コチラも、問題有りませんのでお受け取りを』

「じゃあ、はい、頂きます」


 前とは随分と違う、人工皮膚を被せてあるからか。

 軽い、柔らかい。


『神経は、そのまま付けて頂ければ』

「ほう」


『はい、肌に馴染むまで手を当てて頂いて、魔力を流せば完了です』

「簡単過ぎ無い?」


『実は、少しイルマリネン様に調節して頂きました、ほんの少し』


 嘘か分からん。


「あぁ、お手数お掛けしまして」

『いえいえ、何か不具合がありましたら、直ぐに仰って下さいね』


「はい、ありがとうございました」


「やったね」

「おう、で、どうすべ」


「ゴハンでしょ」

「昼時だしな、何食いたい」

「せ、っかくだし、ショナは何が食べたいよ」

「魚介とステーキが食べられる場所にしませんか?」


 そのまま大使館員にオススメの店を聞き、ベールを被り空間移動。


 危ない、と言うかやってしまった。

 せいちゃんの事を思い出して、ウッカリ、先生にお母さんレベルだ、ヤベぇな。




 多分、桜木さんは観上さんの名前が出そうになってしまったんだと思う。

 好きじゃ無いにしても、多分、似た姿のオモイカネ様が居て、余計に思い出してしまったのかも知れない。


 だけど、どう聞けば良いのか。


「ハナ、もう美味しい、ウィンドウのメニューが美味しいもの」

「さ、行くか」

「あー、緊張するー」


 そして桜木さんがいつも気にしていたテーブルマナーは、リズさんや大使、補佐官のお陰で。

 僕の出る幕が全く無い、しかも普通に出来てるし。


「桜木さん、凄い普通に出来てますけど」

「最新の注意を払ってるわ、エナさん、痛い分かるか?」

『分かる、お腹とか痛いくなったら言う』


「超可愛いんだけど、何処で拾ったの?」

「キャベツ切ったら出て来た」

「どんだけデカいキャベツだよ」


「実は空から」

「更に天空に城が有るのかよ、見たいわ」

「あ、飛行石無いかなぁ」


「俺が3分間だけ」

「バルス」

「ハナ早く無い?!」


『あの、この方々の会話は、いつも』

「まぁ、半分はこんな感じですね」

『言うなれば合言葉。私も、もっと勉強すべきでしたね』


「いやー、難しいと思うよ、あの子に通じたか不明だし、何が通じるかワシ分からん」

「ハナは知識がね、中身が少し上だから」

「マジで年齢疑ったからな、マジで」


「お、ババ臭い言うか」


「ネクラ、ヲタク」

「腐女子」

『腐女子は』

「エナさん解説は勘弁して、ニンジンスープあげるから」


『あーん』

「マジで超可愛いんだけど、なにコレ」

「スーちゃん、ショタコンに目覚めたか」

「らしい」


「可愛いは正義、何歳なの?」

『精神年齢5000歳』

「面白いなぁ、仕込んだのか?」

「そんな間も無く、流されて藍蘭島」


「古いんだよ、俺ですらギリなのに」

「読破はしてない、エスカフローネ探してて、ビックリした」


「あぁ、著作権浮いてるんだよな」

「は、何でやねん」

「なんとなくは観てたけど」


「あのBGMが最高なのに」

「お前のアレ、録音出来ねぇかなぁ」

「ね、再現度高いし」


「いや、絶対音感の奴呼べや」

「あ、そっか」

「一般人だろ、そこがなぁ」


「良い抜け道を発見したねん」

「よし、後でな、一旦戻ってからだ」

「お買い物はー?」


「待った、その会議っぽいのは何時よ」

「夕飯位、昼寝か、大丈夫か?」


「まだ眠くないし、体も、治した」

「便利だなおい」

「良かったぁ、食べて食べて」

『あー』


「大人組、お酒飲め、分解してやるから飲め、飲みたい」

「くそ、許す」

「ジュースで良いもーん」


「ショナもだぞ、飲め」

「はい、ありがとうございます、頂きます」


 桜木さんの、こう優しいのが。




 桜木が見てない隙に、ショナ君がフリーズした。

 分からん、今のは俺でも分からん。


(スーちゃん)

(うん、確認した)


(何でだと思う)

(こう言う風に優しくて、好き、とか?)


(あー、あ?)

「笑顔鉄仮面なんだもの、難しいわよ」

「何が?」


「えっとね、ショナ君はちゃんと喜んでくれてるのかなって、無理して無いか分かり難いなって」

「あぁ、すみません、クーロンにも言われました」

「大丈夫大丈夫、今さっきのはかなり良い笑顔だから」

「見分け付くのか」


「多少は、つか機嫌悪いのなんてほぼ、いや、昨日は悪かったな」

「そんな出てました?」


「いや、少しだけね」

「なによ、喧嘩?」


「ショナ君がモテモテでさぁ、ふふ」

「今度ご説明しますね」

「今が良いんだけど」

「ほう、今度って何時か詳しく」


『粘り強さが素晴らしいですね』

『近頃の子もこうだと良いんですが、難しいですねぇ』

「やべぇ、一括で年寄り扱いやで」

『最近の子は、頓着薄い、研究結果有る』


「らしいな、勿体無い」

「私達も言われてたわよね、◯◯離れ」

「バカじゃ無けりゃ良いんじゃないかね、解脱に近付いてるのかもだし」

「偶に仏教出ますよね」


「わぉ、ワンコさんにヤキモチ?」

「コレは0の知識じゃよ」

「いや、別にそう言うワケじゃ」

「ほう」

『あー』


「はいはい」


(なに、見てない隙に赤面だと)

(え、可愛い)

『昨日もエナに嫉妬してた』


(え、なんで?)

『エナ構ってたから?』

(あー、身柱とかマティアスに似てんだな)


(あー、そうかも)

『ハナ、お肉はまだダメ?』

「ちょっとだけな、あー」


(マジだ、どうしたんだアレ)

「もうちょっとなのかも、今どっちかって感じかな」

「どした?もう満腹?」


「デザート入れるかどうか、よね?」

「欲張りたいが腹は壊したく無いって相談だ」

「デザート食ってこそだろ」


「そうよねー、メニュー見るー」


「良いのかねぇ」

「良い兆候よ、多分」




《ナイス!オモイカネナイスじゃ!赤面を引き出しおったぞ!》

《おぉ、進展したか!良い兆候だな》

『出歯亀ババァ共が』


《お、ココにもヤキモチ妬きさんが居たんだったかぁ》

『別に』

《ふふ、図星で逃げおって。はぁ、一時はどうなるかと心配したんじゃが》


《甘いぞドリアード、まだ赤面したのをハナは見てないのだろう、良い年のウブを舐めてはいかんよ》

《あぁ、じゃの!》




 それぞれに無事、デザートを食べ終え浮島へ戻ると。


 神殿の様な建物が出来上がって居た。

 誰だ。


「ソロモンさん?」

『はい、ご褒美ですよ』


「ご褒美?」

『はい』


 嫉妬して無いのに?

 まぁ、トイレ出来たから良いんだが。

 それとも誰か。


「もしや、スーちゃん?」

「違う違う」

「俺も」

『大丈夫ですよ、アナタだけですから』

《まぁ、セクシーな口説き文句ね、ふふふ》


『少しお邪魔しただけですのでご容赦を』

《問題無いわ、好きに過ごして頂いて結構よ、ふふふ》


『ありがとうございます、では』

「ありがとうございます」

「桜木さん、一応バイタルチェックを」


 低値、ストレスに弱いねん。


「すまん、ストレスに弱いねん」

「ずっと、従者に言わなかったんですね」


「言ってもどうにもならんでしょうよ」

「体も、まだ微熱ですよ」


「お腹と喉は治したんだが」

「異変が有ったら言って下さいね?」


「おう」


 一服していると、アレクがやって来た。

 疲れた顔。




「風邪は、熱は?」

「腹と喉は治したが微熱有り」


「ごめんな、風邪なのに」

「良い気分転換だ、ちゃんと寝てるか?」


「寝てるけど、疲れた、後で昼寝しに来るかも」

「なんか対価払って無いよな」


「無い無い、俺もそれ吸いたい」

「年はどうなってたよ」


「20、ココでもセーフ」


「倒れるなよ」


「目眩って、こんなんなの」

「あははは、バカだなぁ、百害あって一利無いんだから、一生止めとけ」


「うん、そうする」

「素直」


「でしょ」

「大丈夫か?どうにか治すか?」


「もう大丈夫、じゃあね」

「おう、がんばれー」


 めちゃめちゃハナとイチャイチャするのねアレク君、ショナ君に見せ付けて。

 何アレ、わざと?


「リズちゃん、アレク、ヤバ過ぎなんだけど」

「だな、挑発ってハッキリ分かんだね」


「マジでアレ、好きなの?ショナへの当て付け?」

「両方だろうな、今回は滅茶苦茶働いてるし、従者に桜木の世話も奪われてんだ。ほら、ショナが不機嫌になった理由が出たぞ」


「無理って、句読点も無しとか、凄い」

「相手はまだ辞めて無いな、図太いと良いんだけどな」


「そうなると、問題はマキちゃんよねぇ」

「あーぁ、彼氏でも出来ててくれねぇかなぁ」


「それも問題じゃない?呪いに気付いちゃうかもなのよ?」

「それなぁ、自分のデカいハードルに気付いて、良い方向には」


「行かないでしょう、何もしない理由になりそう、パサパサだし」

「パサパサ?」


「元気無いって言うか、パサパサ」

「神様達が言ってた枯れ木病か?」


「え、やだ、呪いの具現化?」

「有り得るが、もう、外界からの呪いって事にした方が、ダメか」


「やっぱりマキさんよ」

「だな、今日来ないかなぁ」




 お腹は痛く無い、鼻も喉も普通。

 頭が回らないのは低値だから、微熱は、何だ?


『大丈夫?』

「おう、腹心地はどうよ」


『八分目?』

「ならよろしい」


『まだ拡張してるらしい』

「まー、もう良いのに、どうしたら収まる?」


『生命の危機の回避、ストレス減らす』

「あぁ、無限増殖しそう」

《歯磨きのお時間です》


 全員で本拠地に戻り歯磨き、エナさんは電動歯ブラシ。

 良いな、電動歯ブラシ。


【備品にございます】


 有ったのね、今度から使うか。


『あー』

「赤いの懐かしいぃ」

「紫とかも有るぞ」

「青が良いな、リズちゃん上手」


「痛み回避に全力投球」

「生まれ付きも有るから難しいんだってね」

「スーちゃんも綺麗やん」


「お母さんが歯科衛生士だったから」

「良いなぁ、手に職持ち」

「あ、お前何になりたかった、俺は消防士、今じゃ考えられんわ」


「なんでも屋、スーちゃんは?」


「看護師って書かされてたけど…お姫様」

「スーちゃんに合う服」

《どうぞ》


「はい、バンザーイ」

「んー」


「はい、はい」


「あぁ、欲しぃなぁ、でも男の子でコレ、良いのかな」


「エナさんもだし、倒錯的で実に宜しい」

「再婚する?」


「手近に逃げるな」


「じゃあ2年後、16才になっても良い人が」

「探すか怪しいな君は、勉強だ何だで過ごすだろ」


「有り得るぅ」

「好みでも、自分が性的対象か分からんしな、クソ」

「どうどう、直ぐに諦めてくれた風でお婆ちゃん安心したわ、恋愛に振り回されて良い事は無い、タバコと一緒で一利も無いんやで」


「ドキドキとかキュンとか要らないのかよ」

「緊張の動悸で充分やで、謁見とか謁見とか謁見とか、寿命縮む感じがエグいねんで」


「今日も有るとか言ったらどうする」

「しっぺな、義手の方で」


「やべぇな、俺の腕吹き飛ぶんじゃねぇの」

「意外と、こわっ、素振り始めたし」


 圧着が弱かったのか、腕が吹き飛んだ。




「腕吹き飛んで大爆笑って」

「腕拾って…凄い笑ってる」

「桜木さんの大笑い、初めて見ました」


「俺も」

「私も」


「あはは、ひひぃ、リアルワイルドアーム、ぐっ、ふふ、凄いな、腕がっふっ、ぶふ」


「シャンクス!袖が!」

「あ、ツボった」


「ひぃい、助けて、笑い死ぬ」

「シュール好きか」


「好き、ぐふっ」


「バニーボーイ」

「ぶふっ、下高井戸店、やべぇ、腹筋割れる」


「日本語学校」

「ドイツ村、ひひひ」


「ダメだコイツ、もうマジで箸が転げても面白い状態だぞ」

「知らないぃ、観たぃ、もうお昼寝するぅ」


「猥、淫」

「バニー部、っく、ひっ、死んじゃぅう」


「ショナ君。今、竹馬乗って歩いたら殺せるぞコイツ」

「それか、ネイノーさんか、ふっ、ひぃ」


『面白いだけでも、一般公開ダメ?なんで?』

「それな、ふふ、笑うの、千差万別だから、んふ」

「見るの!ハナ寝て」


「大丈夫、もう出来てるんじゃない、んん、ふふ」

「寝かし付けて」


「はいはい、ふふ」

「俺も、久し振りに観るかな」


「はいよ」

『あの…』

『良ければ……』


 桜木さんが要望されるがままに透明な鍵で寝かし付けると、僕が最後に。

 コレ位は、許されるんじゃ無いだろうか。


「ふう、ちょっと落ち着いたわ。ショナも観るか?面白く無いかもだよ?」

「一応、お願い出来ますか?」


「批評禁止な」

「勿論ですよ」




「ふぅ、死ぬかと思ったわ」

《浮島の設定を変更致します》


「宜しくどうぞ」


 アレク以外、誰も彼も立ち入り禁止に変更、コレで大丈夫か。


 一服。


 死屍累々、大使さんまで映画館に来るとは驚きだ。


 ミーシャも今頃観てるか、ミーシャこそ大笑いしなさそうだが。


 疲れたのは、笑い疲れか、人疲れか。


 また制御具付くなら何かゲーム買って貰おうかな。


『アレ、人を選びますよねぇ』

「ね、だから公開しなかったんだが。でも、せいちゃんに見せておけば良かったかも」


『笑うかは別ですけどね』

「ね、何で晶君は混ぜなかったんだろ」


『どうなんでしょうねぇ』

「不安な事を言い残して。なんだ、つまんなかったかスーちゃん、金ピカジョッキー」

「ぶっ」

「お前さぁ、どんだけ観てたのよ」


「お気に入りは20回以上かと、DVD擦り切れて」

「ぶっ」


「そっか、リズちゃんは世代か。DVD!DVD!」

「やめ、今日、大事な」


「竹馬乗るか?」

「「ぐふっ」」


「桜木さん、竹馬買いましょう」

「練習だな」

「もー」

「くそ、墓穴を掘った」


 屍達は早々に蘇り、其々に反応を示した。

 日本語だからこその面白さも有るから、大使と補佐の反応は見ないでおこう。




「よし、じゃあ戻ってフィンランド大使に腕の相談をしましょ」

「竹馬で行く?」

「ぐっ、そうだ、抜け道の話はどうなった」


「神性と出会った人だけとかどうよ、スクナさんでも、妖精でも。施設長が来たんよ、ドリームランドの新しい場所に」

「報告に無いんだが?」


「報告しても良いって言ったんだけど、気を使ってくれたんだと思う」


「九龍城って、アレか」

「おう、ただ実況でな。つか高いし、酔うから出来無いし」


「コレだからヲタクは」

「スーちゃんやってるの見るか」

「え、私した事無いし」


「こう、携帯ゲームもか?」

「パズルゲームとか」

「百合に一心不乱で」


「あぁ、百合ゲームは?」

「音声でもうドキドキしちゃって無理」

「それ未成年用か?」


「えっち」

「スケッチ?」

「ワンタッチ。コレ全国共通か、なるほどな、情報欄に追加しとくわ」


「はっ、成人用のゲーム買い放題やんけ」

「ハナ、フィン見たいんだけど、水着とか」

「だな、ハワイに戻るか」


 どういった気の使い方なのか、鈴木さんが話を逸らし、桜木さんは浮島の再設定をし、チャラい方の紫苑さんへ。


 そしてハワイの裏道へ空間を開いた。


 鈴木さんやリズさんの水着だけで無く、桜木さん、アレクや僕のも購入され、次はフィンの店までお散歩に。


 途中で鈴木さんをお姫様だっこしたり、甘やかしたり。

 鈴木さんが、半分本気で再婚を迫るのも分かる気がした。


「リズさん、鈴木さんが半分本気なのが分かった気がします」

「あぁ、でも難しく考えないで欲しいんだが、あくまでも自分がして欲しい事も含んでるらしいし、兄弟からの調教やら何やらもだし。大概の人間は見様見真似らしいぞ、父さん曰くな」


「何事も知識と経験なんですね」

「ただ、無いなりの良さも有る。アレでこなれた態度を取られると引くのが、アンバランスなんだよなぁ」

『初心者と上級者、一緒のゲーム負ける』


「あぁ、そうか、エナ君は賢いなぁ」


 なんたってオモイカネ様ですからね。




「本当に惚れたらどうしてくれるのよ」

「チョロ過ぎ、うぐ」


「だって、慣れて無いし」

「ウブウブ」


「もー」

「究極の姫プレイってどんなんやろ」


「んー、何でもして貰えるとか」

「お世話したい人間には物足りなく無い?」


「最初は良くても、やっぱり、物足りなくなるのかしら」

「小心者にもキツイ、下着手洗いされるとか即死出来る」


「あー、それ無理かも」

「食べさせられるのとか、もう好きだと無理じゃない?」


「なるほど、確かに恥ずかしくて味が飛びそう」

「食べさせる方がまだ平常心保てるのは、性別かコレ、リズちゃーん」


「なんだよ、隔離してまで」

「食べさせるのと、食べさせられるの、どっちが恥ずかしい?」

「お相手が好きなの前提ね」


「食べさせる方がドキドキする」

「ほう、性差かもだぞコレ。男はほら」

「もー、あーあー」


「おま、そんな」


 桜木は、コレ、自分には活用しないんだろうなぁ。


「ワシとスーちゃんは食べさせられる方が恥ずかしい、うん、もっと母数を増や」

「ちょ、待った、大使は不味いだろう」


「なぜ」


「いや、ほら、仕事仲間だし」

「リズちゃんには結果は聞かせない」


「な、それはそれで気になる」

「ねぇ、ハナ、どっちも恥ずかしいとか、楽しい場合はどうなるのよ」

「両方いける?的な?」


「そうなると相手による、とかも有りそうだな」

「ちょっと、聞いて来てくれる?」

「おかのした」


「いってらー」


 スーちゃん、度胸ヤベェな。




 若いって良いですよね、常夏の国で瑞々しく。

 将来有望な。


「お伺いしたい」

『はい』

『何か有りましたか?』


「好きな人に、食べさせるのと、食べさせられるの、どっちで心が揺れ動きます?」

『んー、私は食べさせる方が、恥ずかしい気がしますね』


『私は、そうですね、同じく。食べさせられるのは少し嬉しいですけど、食べさせるのは恥ずかしさが大きいですね。心理テストか何かですか?』

「性差が有るのではと」

『あ、あぁ』


『なるほど、あはは』

「すみません、リズちゃん性別で振られちゃって」

『そうでしたか』


『なるほど、では女性的であったり、対象が男性だと』

「ですね、食べさせられる方が恥ずかしいのかもって。面白いなぁ、外れるまでもっと母数増やしたいんですけど」


『それ、私の研究テーマにしても宜しいでしょうか?』

「マイケル、ナイスマイケル、マジか」


『ははは、本来の仕事が心理学系なんですよ』

「お、どう思いますか教授」


『非常に良い観点だと思いますよ、ただ幾つか追加項目が欲しいですね』

「性指向の自認?」


『ですね。でも良いんですか本当に、私が貰ってしまって』

「冗談半分だし、例外が有った時点で報告下さい、楽しみだなぁ」




 成程、突拍子も無いと言うか。

 発見や疑問に素直でらっしゃるんですね、それを突拍子も無いで片付けるのは、どうなんでしょう。


『面白いと申しますか、不思議な方でらっしゃいますね』

『そうですね、敵と思われても仕方無いのに、教会で会った瞬間には、もう普通に接して下さって。ハードルがココとは少し違う位置と場所に、あるんでしょうかね』


『あぁ、確かに。失礼な言い方しか出来無いのですが』

『野生的、生き死にさえ関わらなければ、敵意さえ向けなければ、コチラに牙は向けないラーテル』


『恨まれる事さえしなければ』

『そこも、ラインと閾値が違うんでしょうね』


『プライドを持って頂きたい様な』

『このままで居て頂きたい様な』




 従者だけ除け者。

 可哀想で面白い、人間は面白い。


『君は、ハナに食べさせるのと、食べさせられる、どっちで心が揺れ動く』

「え、あ、食べさせられる方でしょうか。食べさせる事は、想定してるので」


『ハナー、例外発見ー』

「え、もうかー」


『多分、食べさせるは従者職の範囲内』

「あぁ、職業も関わるのか。教授ー、職業考慮しないとだー」

「あの、何のお話しなんでしょうか」


『性指向、食べさせるが恥ずかしいは男』

「なんて話しを」

「リズちゃんの為だ」

「おま」

「まぁまぁ、そっか、ショナ君みたいなお世話する職業は例外かぁ」


『そうとも限りませんよ、性行為の表現に食べる、食べられると表現する場合も有りますからね』

「間違うとカニバなんよなぁ」


『それこそ個体差かと、食糧難になれば同種食いも有りますから。多様性的には、食べられる事を問題としない個が居ても、可笑しくは無いかと』

「教授、ためになるなぁ、他にその関連のは?」


『そうですねぇ』




「なんでラブコメ路線が論文の話しになるのよぅ」

「本当にな、大使までとは」

『すみません、興味深くてつい。面白い方ですね』

『甘噛みは、ラブコメジャンル』


「え、そんな話しになってるの、行かないと」

「待て待て、大使、アレは予約でいっぱいだからダメだからな」

『はい、承知しました』


「リズちゃん知ってたか、可愛いから噛むて、タスマニアデビルかよ」

「あぁ、交尾のか、あの大人しくなり方、怖いよな」

「キュートアグレッションって言うんだって」


「寧ろ、オメガバースやんな」

「腐り豆野郎」

「それの百合が観たかったぁ」


「頑張れ」

「無理無理、恥ずかしいしか無いんだけど」

「じゃあナニで金稼ぐんだ、翻訳系、もう終わり見えてんだぞ?」


「スーちゃん、楽しいを仕事に」

「ムカつくー、フルスマイルムカつくー」

「あぁ、井縫スマイルな、ムカつくなお前」


「なー、だろー?してやったりがもう、殴りてぇ」

「結局殴らないんだものね」

「殴るよりエグかったけどな」


「あ、ショナ、著作権料よこせ。無理、の」

「ヨーグルトアイスで良いですか?」

「たべるー」

「エナ君、半分こしような」

『うん』


 俺とエナ君がイチャイチャしても、スーちゃんとエナ君がイチャイチャしても両者の変化は無し。

 じゃあ、俺と桜木、ショナ君とエナ君はどうだ、桜木は腐だから反応するのか?




「紫苑、交代」

「はいはい、トッピングまみれじゃねぇかよ、うまっアホうま」


 リズちゃんとハナだと、ショナ君の反応は無しね。

 残る組み合わせは、ショナ君とエナ君?

 でも腐女子は、違う意味で反応するんじゃ。




『ショナ君、はい、あーん』

「あ、はい」


 転生者様方の思惑がようやっと分かった気がするような、しない様な。

 エナ君とショナ君の組合せに、桜木様が実に奇妙な反応を示した。


 目元には喜び、眉には困惑、口元には悲しみと驚き。

 どちらに向けられているのかは不明ですが、多分、エナ君。

 彼は一体、何者なんでしょうか。




 ようやっとフィンの店、紫苑で良かったわ。

 花子なら死んでたわ、体も軽いし最高。


 にしても複雑だったわ、エナさんとショナ。

 ワシ、腐り過ぎにも程が有るだろうに、相手神ぞ。


「透明なのヤバいんだけど!」

「なー、ピンクか、赤か、黄色か?」

「俺は黄色」


「ピンクね」

「ショナは?」


「え」


 またフリーズ。


 あ、デザインが被る心配か?


「誰と色が被ってもええんやで、好きな色は?」


 フリーズ。

 好きな色が無いのか?


「えっと」

「好きな色が無いなら透明なままで、縁だけ何か色付けるとかどうよ?ラメ入れる?」


「ラメはちょっと」

「ですよね、魚みたいなのはどうよ、ほら、チョウチョウウオ」


「少し、見繕ってくれませんか?」

「ショナは青でしょ、あー、白か、白も良いなぁ、白縁。波、海の色」


「桜木、どや」

「クッソ派手」

「決まんないー、ショナ君も?」

「青色って沢山有って」


「縁、良いな、俺もやろ」

「桜木さんが、チョウチョウウオみたいにしたらどうかって」

「やる、花びらみたいにしよー」

「良いねそれ、妖精の羽根でも良いね」


「ハナも作りましょうよ」

「だな、経済を回せ」


「エナさん、大使、補佐も作ろう」




 桜木様は薄い乳白色とラメ、白いラインを入れ妖精の羽根イメージしたそうで。

 私は色が選べず、虹色に。


 大使はオレンジのグラデーション。

 リズ様は黄色のグラデーションに白と黒の縁で、チョウチョウウオの様に。

 鈴木様は淡いピンク、不透明から透明なグラデーションへ。


 従者さんは砂浜に広がる波の様な白い縁に、青やエメラルドグリーンのグラデーション。


 出来上がりは約6時間後、会議まで時間が有るので、海辺のカフェでテラスへ。


 従者さんのフリーズ具合を見るに、何か色々と引っ掛かってる事は分かるのですが。


 何が、どう引っ掛かっているのか。


『あの、鈴木様』


「え、あ、はい」

『あの、従者さんは何か問題を抱えてらっしゃいますよね』


「うん、でも大丈夫。良い問題だから」

『あぁ、そうでしたか』


「どうしたら、素直になってくれるのかしら」

『決断が必要になりますからね、人生を左右する大きな問題です』


「へー、なるほど。あのフリーズは何?」

『無意識に、選択を拒絶している可能性でしょうか。その思考の果ての結果を、選択出来無い』


「どうしたら選べるのかしら」

『情報、知識、経験。何かが足りなければ悩むでしょう』


「赤面してくれたらマシなのに」

『それすら、コントロールしてるのかも知れませんね。なんせ』


「従者だから」

『ですね』




 スーちゃんが補佐と話していると、ダンスショーが始まった。


 独特の歌は、魔法の呪文に似て不思議な雰囲気だ。


「なぁ、凄い上の上司を好きになったら、アンタは、大使はどうするんだ」

『え?あの』


「例えばだ」


『そうですね…規則に従って、辞めるかどうか検討します』

「だよなぁ…辞める程、好きじゃ無いなら辞めないよな」


『それと、お付き合い出来そうも無くても、諦めようとするでしょうね。距離を縮めるには、リスクが高過ぎますから』

「一緒に居られて、距離を縮められるなら?」


『辞めないで様子……あ、あぁ、従者の方』

「鈍いなアンタ」


『すみません、どうにも疎くて』

「ウブかよ」


 ヤバいな、マジで遠ざけないと。




「リズちゃんが国連の方を口説いてる場合、ワシはどうすれば良いのか」

「え」

『アレは違うから大丈夫』


「なんだ。大使が赤面してるからてっき、猥談か」

『もくひ』


「ココの神様、心広いな。エナさん自由にさせるなんて」

『信用してくれてる、悪用しないって』


「ワシが悪用しちゃうかもなのに」

『それも信用してる』


「なん、あぁ、観に来たのね」

『うん、今でも誰かが観てるはず』

「紫苑さん」


「構わんよ、評価されないし。正面から衝突するより良いし」

「だからって」


「其々に守るべき国民が居るんだもの、詰問されるより良い」


「会議の事なら」

「一般公開禁止なんだもの、詰問されるしか無いでしょうよ」

『大丈夫、皆が居る』


「最悪は頼むよ」


 そうしてショーが終わる前に浮島へ。

 花子に変身し着替え、後は、腕は敢えて付けないでいてやろ。

 抑制の魔法は、流石に誠実じゃ無いか。




 挨拶もそこそこに、天使も加わり会議が始まった。

 先ずは桜木への礼を伝え、そして浮島の話へ。


《浮島の移動の件なのですが》

「それぞれの神々や精霊が勝手に持って行ったんだろ、何で今コイツに言う」


《それが確認出来無いので》

「は、請うたのかよ」


《しましたが、最近、誰も、何も、接触出来ず》


 神々のストライキか、要求は。


「要求も無いのか」

《はい》


「どうしてか、心当たり有るよなアンタら」


 お互いに顔色を伺い、沈黙へ。

 長い沈黙の後、イギリス代表が話し始めた。


《まぁ、人間の何かが気に食わないんでしょう。例えば、桜木花子への処遇とか》

「あら、別に良いのに」


《詳しく知ってます?コレから先、かなり自由を制限されますよ》

「その、自由こそ正義、正しい、完璧って概念が分からんのだが。自由じゃ無いと死ぬの?全てが自由って危なく無い?無法地帯、無秩序は良くないでしょうよ、不自由の何が悪い」


「どの位、不自由になるって思ってんだ」

「誰かとは単独で会えない、人間関係の全てに介入が入る、出掛けるにしても誰かに何かしらを報告しなきゃダメ。魔法も魔道具も封印か制限が掛かる、とか。多分、エミールはその半分位でしょう、じゃないと荒ぶるぞ」


「ハナは、前も、そう思ってたの?」

「エミールと同じ半分位、普通の人間のフリして生きられる程度。第2では魔道具さえ封印すれば、第3では魔道具と魔法を封印すればと。ただもう、灯台だから、外に自由に出掛けるのは無理だと分かった。面倒は嫌だから、別に良い、引き籠もりは好きでやる事だし」


『人々との交流や出会い、繫がり、その中で』

「無いと死ぬの?つか寧ろ、人間関係で事件って起きるのでは?皆無で良いとは言って無い、リズちゃんとか…なるほど、交流が無いと困るのはそっちか。偉業を成したと思ってくれてるなら、色々な意味で子孫が居てしかるべき。なのに居ないとなれば、次代の召喚者やココの人間の不審に繋がる。とかの心配?」


『それだけでは』

「その物の言い方は、含んでると認めてる感じがするけど」


『より良い生活を』

「何処の誰の基準でよ。もう、どうしたいのよ、頭が悪いから率直に簡潔に手短に分かり易く言って欲しいんだが、時間が勿体無い」


 確かにな。




「そうだな、具体的に頼む」


 リズちゃんによって、ゆっくりと国連代表が話し始めた。


 制限したいが交流もさせたい、だから、まだどうしたいか決まって無いと。

 なのに、神様にも精霊にも相談出来無い、お伺いを立てられないから自信が無いのか。


「やってみれば良いじゃない、コッチはストレスは受け入れるって言ってんのに。自信無いの?」


 沈黙。

 無いんかい。


《コレ、我ら、完全に頼られ方を間違えたんじゃろなぁ》

『あぁ、だな』

『かと言って我々が見えていたなら、こんな事は言えないでしょうしねぇ』

【そうですね、ソロモン】

《コレ、面白いわね、ふふふ》


 ダメだ、楽しいと止めないぞこの神様達。


「頼り方を、お間違えでは」

《優しいのぅ、良い子じゃ良い子じゃ》

『ワシの分まで頼むぞ』

【ソロモン、私の分もお願いしますね】

『はいはい』

《ふふふ》


 何しても楽しいみたいになってるじゃんよ、どうすりゃ良いのよ。


 そして国連が呑んだのか折れたのか、カーネーションズの代表者2名が国連への加入が正式決定。

 会議への参加、議事録の閲覧等の権利は手に入れたが。


「神々の参加はどうなったんだ?」


『申し訳ございません』

『色々と無理だ、と。遠慮、配慮、色々です』

「それ、歴代の召喚者、転生者が納得するかね。民意も」

「ね、じゃあ先ずはその可否を、ココで問いましょうか」

「じゃ、休憩だな」


『ハナハナ、来て』

「はいはい、なんでしょうかエナさん」


『もう問うてる、スマホ出して』


 スマホには重要通知と、アクセスすると投票サイトへ。

 ジブリールさんを見るとダブルピースしてる。


 試しに賛成し、再アクセスしようとするとまた出来た。

 不正は大丈夫なんだろうか。


「不正とか大丈夫かね」

『うん、うそいやでしょ、もうお昼寝に帰ろう』


「すみませんが、お昼寝に帰っても?」

「あぁ、おう」

「うん、またね後でね」


 すまん、逃げる。

 嘘が苦手なんだわ。




「桜木さん、コレ」

「お、ショナにもか」

『ハナが最初の投票』


「知ってたんですか?」

「いや、今さっき知らされた」

『お昼寝、光合成も大事』


 桜木さんとエナさんが眠りについてしまったので、省庁に報告書を作成。


 ただ、10分置きに通知が来る。


「柏木さん」

【はいはい、投票して大丈夫ですよ。それとも他の事ですか?】


「いえ」

【はい、では】


 どうやら通知は投票するまで止まらないらしい、試しに電源を落とそうにも落ちず。

 電池を抜けば通知はされないが、仕事が出来無い。


 賛成か反対だけ、しかも理由が必要。

 時差によっては寝ている国民が居るだろうに、それも考慮されてなのか。

 それなら24時間以内に、決まるかどうか。


「ミーシャさん、少し起きて頂けませんか」


「なんですか」

「投票の通知、有りませんでしたか」


「……今、来ました。なるほど、良いんですか」

「はい、柏木さんに確認しました」


「賛成、今まで参加して無かったのがおかしい。うん、他に何か」

「いえ」


「桜木様は」

「お昼寝してらっしゃいます」


「そうですか、寝直します、おやすみなさい」


 その間にも通知が鳴り続け、投票するしか無かった。






 日本はオヤツの時間。

 ハワイは20時、結論は、まだ出ないよなぁ。


「おはよう、どや」

「おはようございます、特に通知は無いです」


「ですよねぇ、風呂行くわ」

『私も』


「じゃあ紫苑で、ショナも」

「え」


「冗談、行くべ、エナさん」

『うん』


 フリーズはしなかったが、そんな嫌か、紫苑ですら。

 マティアスは普通に入ってくれたのに。


 お風呂に入って一服。

 ハワイの夕飯、なんだろ。


「ショナ、ハワイの夕飯は何だろうか」

「お腹空きました?」


「それなり、1人前位は。向こうに勝手に戻って良いのかね」

「僕が聞いて来ますよ」


「宜しく」




 桜木さんから、紫苑さんとの入浴を断った時、ほんの少し悲しそうにされてしまった気がする。

 嫌がったと、受け止められたかも知れない。


「で、夕飯だと?」

「はい、1人前位なら食べれると」

「暫く煮詰まってるし良いんじゃないかしら、ハナにしたらオヤツで、ココで夕飯ねぇ……」


 紫苑さんから桜木さんへ再び戻り、皆さんで24時間営業のダイナーへ。

 そして元補佐と元国連代表代理、お二方は正式にカーネーションズに移籍となった。


「スーちゃん天才やん、ダイナーやん、何でもある」

「ヤバいな、ぽい、なんか、ぽくて良いな」

「ふふん、早く決めてよね、時間短いんだし。パンケーキ食べ比べるって決めてるの」

「持ち帰れるのが最高っすよね」


「持ち帰れるのか、全部欲しい」

「ダメー、ちょっとの休憩だから今度。ちゃんと遊びに来ましょうね?」


「へーい」


 ブリトーやパンケーキ、ワッフルにフレンチトースト、オムレツ等々。

 最初から持ち帰り用のパックを貰い半分に、皆さんがで桜木さんに預けてから、ゆっくり食事を摂る。


「はぁ、何かもう、帰ろう桜木」

「どしたのリズちゃん」


「堂々巡りなんだよ」

「ほう、ココじゃマズいだろ」


「あ、あぁ、知恵熱出そうだ。俺がもっと、頭が良かったらな」

「私も、ごめんね」

「ワシも」


「国連の中にも、頭良い人も居るんすよね?それで無理なんすよ?」

「「「たしかに」」」


 賢人君に助けられ、休憩は無事に終わった。

 そしてハワイの浮島へ、フィンランド大使へ腕の報告。


「しっぺの素振りをしたら、吹っ飛びました」

『圧着が弱かったんでしょうかね?今、見せて頂けます?』


「暫しお待ちを」


『ズレも何も無かったんですが、修理に出させましょうか?』

「剥がれる時に痛く無かった、魔道具でしょうコレ」


『え、あ、いやー、そう言って頂けると嬉しいですね、あはは』

「正直者だなぁ、愛しいわ。試してごめんね、イルマリネンさんとロウヒに宜しく」


『あ、はい、えへへ』


 桜木さんは、人たらしだ。

 紫苑さんも、いや、エルフのミーシャさん、神様や精霊にはこう甘くしていたし。


 紫苑さんだから、男性の時には男性で、女性の時には女性に優しく。

 言葉遣いも気にするなら、寧ろ当然の行為で。


 男としてお風呂に誘ってくれたなら、とんでもなく酷い事を。

 身柱と同じ事はするまいと思っていたのに、してしまった。


 しかも用事も終わったのに、桜木さんは帰らない。

 凄く不安。


「あの、桜木さん」

「煙いべ、どした」


「帰らないんですか?」

「やっぱり帰った方が良い?」


「あ、いえ、何をなさるのかなと」

「意見を述べる、何かが足りないから決断出来ないのかもだし」




 念の為のダメ押し程度だけれど、コレでさっさと終わらないかな。


「桜木、始めるぞ」

「おう」


「お試ししましょう引き籠もり、つか勝手にします、期限は3日〜1週間。毎日の面談、ストレス計測器とか付ける、それで如何にストレス無く過ごせるか知って貰いたい。加害出来そうな魔道具と魔法は封印するけど、他は好きにするし、従者はいつも通りにする。どうだろう、中道案だと思うんだが」

《どうしてそこまでするんです?》


「そこまで?この前はもっと制限有ったけど失神して無い、魔素低値でストレス掛かると寝込んだ事がある。だけどならなかった、日数が足りなかったかも知れんが。不便だったわ、ドライ無いし、言わないと乾かしてもくれないし、お陰で無能感が凄かった」

「桜木さん、それ」

「おい、どんな指示してんだよ国連共」

「普通に過ごせてるかとばっかり、ごめんね」


「それ、実は柏木さんの指示なんすよ、召喚者様が酷い生活をしてる報告をして、国連の場が変化してくれないかって。でも全然っすよね、このままじゃ日本は脱退するらしいっすよ、土蜘蛛族より酷い生活なのに、クソっすよね」


「思い切った事を、素敵過ぎやん柏木さん」

「良かった、誤解しないとは思ったんすけど、桜木さんならそう言ってくれますよね」


《すみません、責任取りたく無いって人間が居るのに。ソチラに負担が多い事ばかりで》

「エミールさえ守れれば良いので、そこで頑張って下さいよ」


《そこはもう自国の事なので、任せて下さい》

「あぁ、出入国制限もどうぞ、だけどトルコは勘弁して欲しいな、ケバブとハマムは大事だから」

《勿論ですよ、ウチはいつでも歓迎しますが、他はどうでしょうね》


 他国が、何か心配している。

 その国は、スイスか。


「あぁ、大罪には接触しない方が良いかな」

「それな、向こうから要望が有った。親友に会わせないなんてどうかしてる、会わせないと浮島で暮らすわよ、全員。って、ほれ」


「読めないんだが」

「だよな、まぁ、そう書いてある」

「ハナ、なんで怒らないのよ、酷い生活したって何したってダメなのに」


「決断するには何かが足りないんでしょう」

「度胸もな、柏木さんみたいに責任や悪意を被る度胸が無いんだよ」

「ハナは沢山、決断してきたのに」


「選ばないって選択肢も有るべ、誰にも責任はいかないだろうし」

「それは俺が許さない、選ぶ責任が有る」

「この世界が選ばなきゃ、もう転生者は力を貸さない」


「そこまでする?」

「お前の人生がかかってんだぞ?」


「お前もアンチ引き籠もり派か」

「違う、過剰な制限も放置も嫌なんだよ」

「ちゃんと生きる手助けがしたいの、これから先に来る全員にも、ハナにも」


「スーちゃん、リズちゃん、親かよ、最高じゃんか」


「それ、そうなんすよね、単純な話しだと思うんすよ、自分の子供に桜木様みたいな生活させたいのかって」


「賢人君、それは難しいみたいよ。鳶が鷹を生んだら、久し振りにペンギンが白鯨を産んだから、群れは大混乱」

「桜木さん、白鯨だなんて」


「まだ生きてる白鯨、生かすも殺すもココの人間次第。向こうでショックなニュースが有ったのよ、白い牡鹿が見付かり有名になった、それを人間が殺した、狩猟が可能な地域だから狩って何が悪いんだと。有名になりたい、目立ちたい、結局は何処でだって本当に白鯨なんて居たら死ぬと思う。魔女も妖精も人魚も、人間だって、珍しきゃ迫害されるんでしょうよ」


『ハナ、おトイレ』

「おう、休憩します。行こうかエナさん」




 人間は自分達がしてきた事を、改めて口に出されると、衝撃を受ける。

 客観性を人間に求めるのは、本当にかなり難しい事らしい。


「桜木さん、白鯨を読んだ事が?」

「ザックリシリーズでな、感性が貧相なもんで合わなかった。夢野久作の方が合う」


「絵本、出てますよ」

「は」


「向こうでも名義は違ったそうで、コチラでも出てますよ。転生者様が書かれました」

「マジか。その人の人生は知れるかね、ザックリで」


「グループでの育児、養護施設の建設、普通にご結婚されて、子孫の方が居られますよ。一般の方には、財団法人とだけ知らされています」


「リズちゃん、スーちゃんは大変になっ」


『だめ』

「まだ何も言ってないんだが」

《どうせ、縁の糸を切りまくれば良いとか思っとるんじゃろぅ》

『図星ですか』


「あの」

「縁切りまくれば守れるかと」

『だめ、繫がりを絶つのは自傷行為』


「誰かが死ぬよりマシ」


「信じて貰えないのは仕方無いとは思うんですが」

「周りは、身近な人は信じてるから大丈夫」


「ならそれを切るかも知れない事は」

「犯罪が誘発されたり死ぬよりマシ、切りたく無いのはワシの近くに居たら良いんだし、ジュラなんかは忘れた方が良いのかもだし」


「する時は言って貰えますよね?」

「君が急病の時にする」

『いじわるだ』


「そうだよ、優しく無いんだよ」

『もー、ダメ』


「エナさん協力してよ、鈴藤紫苑で生きるかもだし」

『最悪は協力するけど、ダメ』


「国連とかもさ、本当なら、人間1人に左右されるべきじゃないと思うし」

「苦労させるべきでも無いです、そもそも人見知りじゃないですか」


「そこは頑張る、やれば出来る子」

「どうしてこう、全力で後ずさりするんですか」


「生まれ付き、ハイハイせずに後ずさって立った」

「結構珍しいですけど、じゃあワザとですか」


「いや、つい癖で」


「引き籠もる案もですけど」

「健全じゃ無いとか言う気か」


「っ、まぁ、はい」

「却って健全なんだが。かなり自由にさせたら色欲のお店行っちゃうんだぞ、良いのか」


「僕も付いて、違いますからね、行きたいワケじゃ無いですんで」

「まだ何も言って無いが」


「顔に書いてました」

「紫苑で一緒なら安心でしょう」


「多少は」

「じゃあ、一緒に行こうな」




 これは、確実に誂われる。


 桜木さんは再びハワイへ。


「すまんな、全然かかるわこれ」

「数日?」

「かも」


《ですね、時差に合わせるなら、そろそろお休みになられては》

「よし、ウチに泊まらせますが良いですか」


《はい、宜しくお願い致します》


 ハンにリズさんや賢人君を送り届けると、再びハワイへ戻ってしまった。


「桜木さん」

「死の天使さん、魔法の封印出来るでしょう」


【そう言われてしまうと、出来るとしか言えませんね】

「宜しく、電気ショック以上の雷電とか、殺せる能力の封印をお願い」


【はい】


 国連の人間も、僕も止めなかった。

 きっと居るであろう、神々や精霊も止める気配は無い。


 そうして封印が完了すると、国連の検査員がアレクによって転移して来た。




『確かに、封印を確認しました』

「どうもお世話様です」


《まだ能力は有るんじゃし、痛くも痒くもないじゃろ》

『まぁ、この程度なら問題無いだろう』

『制御具よりはマシでしょうけど』

「サクラ、本当に良いのか?」

「別に死なないし、苦痛無いし」


「何で止めなかったんだよ」

「すみません、止める意味を探せ無かったんです」

「ほら正しい、転移もストレージも使えるからマシよ」


「でも、なんか嫌だ」

「具体的になってから文句を言いなさい、じゃ、帰ります。さようなら」


「俺も、昼寝させて」

「どうぞどうぞ」


 浮島に戻り一服。


 コート有るし、何が問題なのか。

 大きくなったら分かるってヤツか。

 もう大人な筈だが、今まで何1つ、なんの理屈も分からないままだが。


「桜木さん、これから本気で引き籠もるんですか?」

「休暇、長期休暇、お休みするだけ。一緒に遊ぼうや、ゲームして昼寝してダラダラ過ごす。あ、筋トレもしよう、健康的やろ」


「筋トレはそうですけど」

「川で泳ぐし日光浴もする、趣味を沢山するのに不満か」


「我慢していないか心配なんです」

「普通じゃないから我慢にならない、大丈夫、やりたい事は沢山有るから」


『ハナ、ドリームランド』

「はいはい、ショナも来て良いよ」

「はい」






 映画館前。

 ハウメアさんにエナさん、ショナも居る。


《ふふふ、面白かったわ》


「ハウメアさん、どこが面白かった?」

《全部、生まれてから今まで。面白く無い人生なんて無いわよ》


「ヤベ、そうか、全部か、すいません」

《ふふふ、本も映画も何もかも、雨の匂いは何処も一緒なのね》


「頭が良かったら、もっと役に立てたのに」

《頭が良かったら、勉強が出来ていたら、雨の匂いを覚えてられたかしらね。花と仔猫と蝶、あの景色は見れたかしら》


『私は自由だからハナの肌の匂いが嗅げる、暖かさが嬉しく感じる。あのままなら、私にはソレは無かった』

《アナタは学問の知識を対価に、それ以外の経験値を獲得したのよ》


「すんません、受け入れられない。なんせ自己評価が低いんで」


『知識だけで救えたら、誰も苦労しない』


「エナさん、クエビコさんが混ざってるのか」

『うん、少し』

「な、何故と言うか、良く分かりましたね」


「直感と、多分役割が違うし」

『難しいんだ、エナを抑えるのがな』

『アレもするな、コレもするな言う』


「頭の中で?」

『耳に居る』


「神様の耳の中にミニ神さ、クエビコさんの中にも?」

『小鳥に入れられた』

『無線機、感覚も共有してる』


「おぉ、クエビコさんや、どうですか」

『人肌は柔らかく、温かい』

『触り過ぎるな言う』

《ふふふ、温泉に行きましょう、温泉に》

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