第一章――カザド②――※ぬるいですが性描写を匂わす表現があります。
カザドほど、平穏と言う言葉が似合わない男はいなかった。確かに世界は平穏とは言えないが――特にほとんどの
カザドがほかの
カザドは今踏みしめているこのヴァナヘイムよりも、はるか東の地でその生を受けた。
父の顔も母の顔も知らず、誰が与えたのかわからない名前だけを持って、年の近い他の
遥か大昔に起こった神々の争い以来、多くの
珍しいことではなく、殺されなかっただけましなのだと当時のカザドは思っていた。
カザドを買ったのは、小太りな
貴族や成金が、どのような意味を持つのか知らなかったというのもあるが、そもそも、その男の顔も名前もとうの昔に忘れてしまった。
覚えているのは、その男が褒められない嗜好の持ち主だったことだ。男は己よりも弱く力の無い者を、いたぶり傷つけることを何より好んだ。
それだけではなく見た目の良い
男のお気に入りは胸糞の悪いことにカザドだった。理由は単純なもので、カザドが
「天王を抱いているような心地がする」と……
それを聞くたびに、舐めまわすような手つきを体に感じるたびに、カザドは粘るような気分の悪さを感じていた。
それが、嫌悪と言う感情であることも知らなかった。
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