第15話【永遠】



 僕が生まれて初めて、それこそ心から愛した女性は悪魔だった。

 その悪魔は僕に生きる希望を抱かせては、無責任にも姿を消してしまった。

 何事もなかったかのように年は明け、数日前までは聖夜だなんだと騒いでいた人々も一変して初詣に出かけ、おみくじで運試し。何の変哲もない毎年の光景だ。


 人は皆、繰り返しの中に生きている。

 知らず知らずのうちに、繰り返して生きている。そしてその繰り返しの中で死ぬ。

 あたかも人生を謳歌したと言わんばかりに、——ひとつの悔いもないとばかりに、静かにこの世を去る。大体はそうなる。

 そうなれたら、それが一番幸せなのだろう。


 柄にもなく神社を訪れた僕は、おみくじを買う。それを人ごみの中で開封した。


 ——待ち人来たる


 なるほど、しかし結果は凶ときた。

 僕に待ち人など、もう来ないのに。






 帰り道、僕は道の片隅で横たわり息を荒げる猫を見つけた。青がかった毛色の変わった猫だ。

 まるで、青猫のようだ。


 青猫のよう。





 抱き上げ、話しかけてみる。





「僕の願いを叶えてくれないか」





 完

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BLUE◇×◇CAT カピバラ @kappivara

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