第6話 太陽の花2
編入してから2週間経つが、自分が通ったときの廊下での潜み話は相変わらずだ。
−リチャード•レイノルズの息子だって。父親と違って眼鏡はないけど顔がそっくりだ。
–父親が凄くてもあんなに指を痛めて練習しなきゃ特待生になれないなんて。七光ですらないんだ。
−父親からサインもらえないかな?あいつに頼んだら貰えるのかな?レッスンもあいつと仲良くすればしてもらえるかな?
–なんか無愛想でいやな感じ。顔はレイノルズさんによく似てハンサムなのにねー。ツンケンしてる。
どれも聞き飽きた。近寄ってくる生徒も、ヨハンと純粋に話したいというよりは、父に興味があるのは明らかで、ヨハンははやくも誰とも話したくなくなっていた。
地域に友人はいたし、基礎学校のときの友人ともたまには会えている。もともとヨハンは社交的と言うよりは人見知りなほうだったので、当面は無視しよう。そう考え、個人レッスンの場所に向けて廊下を歩く。
「でもさ、苗字がレイノルズ、で英語姓なのに、名前がドイツ名のヨハンなんて。変だよなあ。」
ヨハンはいつも通り無視する気だったが、貶されたのが自分だけではない様に感じ、発言した隣のクラスの生徒を睨み、近寄る。
「!?お、おはよう。なんだよ?」
「おはよう。自分は名乗もせずに、人の名前に失礼なこと言うよね。
僕の名前は母さんと、、父さんがよく考えてつけたんだ。預言者の名前だから、どこの国に行っても読めるし、変形の名前があるし伝わる。
ドイツ風にヨハンなのは、僕がドイツで生まれて暮らしてるから馴染めるように、だ。
君はイギリス人とのハーフが許せない、差別主義者なわけ?それにどこのクラスの、どの先生の個人レッスンの誰だ?名乗りなよ。」
ヨハンが詰め寄ると、聞こえていないつもりだったらしい学生は慌て、一緒にいた学生はそそくさと逃げた。ヨハンは長身の父親に似て背も同級生の中では高いので怖いのもあるだろう。
「わ、悪かったよ。冗談のつもりだったけど、俺が悪かった。ミュラー先生のとこのフランツだ。」
ヨハンはフランツが謝り名乗ったのでフランツを一瞥してから踵を返し、無言でまた歩き出す。
「ねえねえ!ちょっと!君君!!」
後ろからやたら元気な女子の声がし、ヨハンはうんざりした気分で今度は何かと振り向いた。
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