第5話 ラッキーパンチ 【追放Side】

 俺達は王が待つ城へ向かう前に、魔物を倒そうと城近くにある岩山にきていた。ゴツゴツと突き出す岩場には、そこそこ強い魔物たちが済む。

 ま、俺達にかかれば雑魚同然だけどな。ましてや、子守りをする必要もなくなった完成形のパーティー。

 秒殺に決まっている。


 現れたのはオーガ。

 ギリ中級に位置する魔物だった。一匹の強さは問題ないが、数は6体か……。

 ちょっと面倒だな。


「これも今後のためだ」


 俺は気合の込めた斬撃を繰り出す。タイミングを合わせるようにアディが付与魔法を使う。


「【腕力強化!!】」


 グンと振り下ろす剣の速度が増す。


 ズバァ!! 

 ボォオオ!!


 切り口が燃える。いつもよりも多めに燃えていますって感じだな。これも腕力が強化されたからか。

 付与魔法のお陰で一撃で魔物を葬ることができた。もしも、これがユライだったら、ちまちまと弓を撃つか、何もせず見てるだけだ。


「流石、俺が見込んだだけのことはあるな、アディ」

「そっちこそ、私を誘うだけのことあるじゃない。特殊な武器を持ってるのね」

「まあな。じゃあ、こいつらは俺達が倒すとするか。プリス、オストラ。お前達はそこで見ていろ!!」


 二匹目のオーガに斬りかかる。


 ズバァ!


 よし、やっぱり、相手にならないな。

 三匹目ぇ!!


 大きく振りかぶり、先に倒した2体と同じく一撃で葬ろうとしたときだった。

 オーガが口から炎のブレスを吐き出した。


「なっ!?」


 炎を正面から受けた俺はゴロゴロと地面を転がり後退する。


「おい!! アディ! 相手が魔法を使うなら早く言えよ! 相手の様子を察知するのが後衛の役目だろうが!」

「……ごめんなさい。ちょっと、調子に乗ってたわ」

「分かればいいんだ。行くぞ!!」


 今の一撃は俺達がまだ連携が取れていなかっただけ。

 ラッキーパンチだ。

 気を引き締めた俺は、残っていた三匹を軽々と仕留めた。


「オーガのブレスを喰らうなんてらしくないんじゃないの?」


 出番がなかったから、嫌味ったらしくプリスが笑う。

 こいつ……。

 自分の立場が分かってるのか? 見た目がいいからパーティーに入れてやってるだけのこと。お前レベルの法撃使いはいくらでもいるんだぞ?

 次はこいつを追放しようか?


 駄目だ。

 堪えろ。

 俺はプリスの身体を見て怒りを鎮める。こいつは口は悪いが身体は最高だ。


「まあ、初めての戦いですから、こういうこともありますよ。事前にすり合わせて正解だったということです。むしろ、初めてでオーガを6体葬ったことを褒めるべきです」


 オストラが手を叩く。

 こいつは分かってるな。


「ああ。そうだ。だが、アディ。後衛は全体を見るのも仕事の一つだ。【炎の闘士】では通用していたかも知れないが、俺達は違う。次のレベルにお前は進んだことを忘れるな」

「分かってるわ!! 次は任せてよね!!」


 キラキラと目を輝かせる。俺達のパーティーで戦えることが心底嬉しいようだ。

 そうだろう、そうだろう。

 なんたって【選抜騎士団】なんだからな。


「さてと。じゃ、擦り合わせも終わったことだし、王が待つ城に向かうか!」


 俺を先頭に歩いていく。

 まさに国の象徴に相応しい光景だろう。雲一つない空が俺達の門出を歓迎しているようだった。

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