第6話 魔力=所持カード

「いいか? お前は今、二枚のカードを持っている状態。この時代ではソレを魔力が満タンだって言ってるだけのことだ!!」


 草原で僕はフェンリルに、カードに付いて教えを受けていた。

 魔力だと思っていたモノが魔力じゃない。

 未だに理解していないけど、フェンリルが嘘を付いているようには見えなかった。


 要するに、


 魔力=魔法カードの枚数


 と、考えればいいのかな?


「そう言うことだ。で、使える魔法を増やすのは簡単で、カードを集めればいい」

「集めるってどうやって?」


 魔法だろうとカードだろうと、僕がこれまで魔法を使えなかった事実は変わらないのではないか?


 僕の問いに「グルル」と喉を鳴らす。


「そりゃ、こカードを入手する方法を知らなかっただけだ。【魔眼】を使わないと、入手確率はかなり低いんだぁ!!」

「【魔眼】!? なにそれ?」

「まあ、簡単に言えばちょっと特別な武器みたいなもんだ。この時代にもあんだろ? 発火する剣とかよ」

「う、うん。バニスが持ってたよ」


 火龍の巣にあったんだよな。

 僕だって頑張ったのに触らせても貰えなかった。


「だから、ほら、渡してやるから顔をちょっと近付けろ」

「う、うん」


 ベロリ。


 フェンリルが舌を伸ばして右目を舐めた。


「うわぁっ! 何してるんだよ」

「何って【魔眼】をお前に渡したんだよ」

「特に変わったようには見えないけど……?」


 舐められた右目に触れてみる。唾液でちょっと湿ってるくらいで、道具が付いている感じはない。


「ていうか、ちょっと臭いし」

「お前なぁ、それが【魔眼】を渡した相手への態度か……!! と、丁度いいところにスライムが現れたな。違いを倒して実感してみろ!」

「うん」


 僕は昨日と同じ方法でスライムを倒した。


「この感じは……!!」


 身体の内側から力が溢れる感覚。

 僕が二回しか味わったことがない、忘れかけていた感覚。丹田から湧き上がるような熱さが。

 新しい魔法が使えるようになったんだ!


「よし、入手できたみたいだな。使える魔法をステータスで確認してみろよ」


 言われるがままにステータスを確認する。


□■□■□■□■□■□■□■□■


【強化の矢】×2

泡弾フォーム・ショット】×1


□■□■□■□■□■□■□■□■


「あれ……? 魔法の横に数字が表示されてる? 今まで、こんなの載ってなかったけど?」

「お前は次のステージに辿り着いたってことだ。その数字が使用回数だぁ!!」

「次のステージ……」

「どうした? 使える魔法が増えたのに浮かない顔してんな。もっと喜べ!!」


 今まで、僕がどれだけ努力しなかった魔法がこんな簡単に使えるようになったことは嬉しい。でも、このフェンリルはなんでそんなことを知っているのだろう?

 それに僕に教えてくれるなんて……。


「なんでって、そんなのお前が助けてくれたからに決まってるだろう!! フェンリルは恩はしっかり返すんだよ。フェンリルの恩返しって逸話が残ってるだろ?」

「そうだけど、あれって作り話じゃなかったの?」


 怪我しているフェンリルを助けたら、不思議なことが次々と起こってお金持ちになる話。

 子供なら誰だって知ってる昔話だ。


「だから、お前は気にせずに恩返しを受け取れぇ!!」

「恩返しっていう割にはなんか偉そうなんだよね」


 でも、そういうことなら素直に喜ぼう。


「本当、人間って馬鹿だよな~。見えるステータスが魔法だけだからって、使用回数は魔力によって決まってるんだぁ! なんて言うんだからな」


「カカカ」とフェンリルが笑う。

 牙と牙がぶつかり陽気な音を奏でていた。

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