十二日目:「すいか」『スイカの味』

 スイカは美味しくない。

 スイカは鉄の味がする。

 スイカを食べると吐き気がする。

 

 そんなスイカを毎日食べてる僕も僕だ。

 食べろと言われたので食べている。

 誰に?

 もちろん、神に。

 

 スイカを食べれば頭が良くなると言われた。

 スイカを食べれば社会の役に立てると言われた。

 だからスイカを食べている。

 

 いくら食べても何かがよくなる気配はなく、ただ吐き気をこらえるだけ。

 

 スイカは美味しくない。

 酢みたいな味がする。

 スイカは……

 

 神はスイカを食べたことがあるのだろうか?

 食べたことがないのなら、教えてあげないと。

 けれど神はこの世にいないので、祭壇にスイカを捧げる。

 

 「どうぞ食べてください、僕のスイカです」

 

 スイカになっても意識はあった。

 一瞬で消えたけど。

 

 だからこれからはもう、スイカなんて食べなくてもいい。

 ありがとう、神様。

 僕はスイカになりました。

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