第13話 10週目

 朗らかな秋晴れだが、この秋晴れが鬱陶しいと思うほどに俺はとても重い気持ちでいた。先週苦しむ彼女を見て以来、彼女には会っていないから、もし彼女の病室がすっからかんになっていたらどうしようなんて悪いことばかり考えていた。

 彼女の病室の前に立つと、中からメガホンを叩く音が聞こえてきて俺は安心した。ドアを開くと、酸素マスクは着けたままだけど、今までと変わらない元気で明るい広崎さんがいた。

「あ! 陽介さん! 今日の試合勝てそうなんですよ!」

「良かった、、ほんとに良かった…」

「ほんとによかったですよ! これでやっと魔の10連敗から抜け出せます…って陽介さんなんで泣いてるんですか?」

 不安が一気に拭われて、俺の目からは涙が溢れて来ていた。

「すいません、元気そうな広崎さん見たら安心して」

「あー先週はほんと、大変ご心配をおかけしました‥」

 俺が涙を拭っていると、ちょうどその時相模シャイニーズが勝利をあげていた。

「やった! やっと勝った!!」

 両手を上にあげてバンザイする広崎さんは本当に今までと何も変わっていなかった。体調も大丈夫そうに見えるから一安心だ。

「なんかすいません。陽介さんほったらかして、一人で盛り上がっちゃって」

「あ、いやいや。広崎さんが盛り上がってるの、見てて楽しいので」

 彼女はえへへと笑った。俺もその笑顔につられて微笑んだ。

 この時の俺は安心してばかりだった。そのせいで、彼女の笑顔が無理に作られたものであることに、俺は気づくことが出来なかった。

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