第12話 9週目

 10月に入り、さすがに夏から秋へと移り変わってきた頃、俺の腕にまとわりついていた、大きな固定器具が外れた。小さな板を包帯でぐるぐる巻きにしただけの腕に、涼しげな秋風が当たり気持ちが良い。俺の足取りも自然と軽くなって、いつもより軽やかなステップで彼女の病室へ行った。

 しかし、俺の目の前には、苦しむ彼女と数人の医師や看護師がいた。彼女の病室には珍しく緊迫した空気が立ち込めていた。呼吸が浅く、酸素マスクを付けた彼女の唇は青紫色に変色していた。

 呆然と立ち尽くしていると、薬を取りに行こうとした看護師とぶつかった。

「すいません! 怪我はないですか。」

「あ、大丈夫です…」

「大変失礼しました。」

 俺はここに立っているのが辛くなって、彼女を背に家に帰ってしまった。

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