何度繰り返しても辿り着くことのない正解

 昔の映画の名場面を再現しようとする、あるいはさせられる、AIの役者さんの物語。

 読み口は非常に静かながら、でもとても尖った内容のSFです。
 まるで詩や歌でも歌うかのような独特の文体、不思議なリズム感のある文章がとても特徴的。
 視点はどこまでもミクロというか、目の前の演技と自己の内面だけにクローズアップされていて、ひたすら同じことを繰り返す様子が印象深いです。

 いわゆる「哲学的ゾンビ」とか、あとは「クオリア」などの概念にも(それそのものではないと個人的には思うものの、その辺を連想するという意味では)通じるかもしれない物語。

 バリバリ滲む独特の感性というか、何か強烈な世界観のようなものを感じる作品でした。