リア充グループは〇〇が近い──①

 ……どうしてこうなった。

 俺の右には恋歌が座り、左には久我が座っている。

 そしてぐるりと円を描くようにして、他のトップカーストの面々がいる。


 今は全員で囲んで昼飯を食べてるけど……何これ、どういう状況?



「こほん。えっと、彼は常澄十夜くん。私の友達で、恋歌ちゃんの幼馴染」

「あ……ども」



 いきなりの紹介に、変な反応しか取れなかった。

 けどトップカーストの面々は気にしていないのか、各自自己紹介してくれた。



「常澄とも話すのは初めてだな。義樹って呼んでくれ。俺は十夜って呼ばせてもらうからよ」

「じゃあ僕は太一で。よろしく、十夜」

「よ、よろしく。義樹、太一……」



 ねえ、なんで陽キャって距離の詰め方が一瞬なの? やめてよ、泣いちゃうから。

 そんな中、星咲と道谷だけは笑顔で九鬼を見ていた。



「へぇ、くっきーの友達ねぇ〜」

「あらあら。円香って意外と奥手なのね」

「う、うっさい!」



 ……? なんの話しをしてるんだろう。わからん。

 でも九鬼って、このグループだといじられキャラなのか。なんか意外だ。



「ところで九鬼。なんで俺ここに呼ばれたの?」

「え? ……なんとなく、ノリと勢いで?」

「おい」

「まあまあ、恋歌ちゃんも喜んでるみたいだしさ」



 え? あ。

 恋歌は俺の服を摘んで、目を輝かせている。

 そんなに目をキラキラさせるなよ。余計抜けづらくなる。



「レンたんってそんな顔するんだっ。めっちゃかわいー!」

「ゎきゃっ……!?」



 恋歌の隣に座っていた星咲が、恋歌の腕に抱きつく。

 そうだろう。可愛いんだよ、恋歌は。



「見た目の派手さとは対極って感じね。えっと……恋歌と呼んでもいい? 私も智琉でいいわ」

「は、ぃっ。え、と……智琉ちゃん……」

「! ……た、確かに可愛いわね……」



 道谷はごくりと生唾を飲む。なんか生々しいからやめろ。

 どう反応していいのかわからず黙っていると、久我が俺の肩に腕を乗せた。

 ヒェッ、でかっ、こわっ。



「女子は置いといて、オレらはオレらで親睦を深めようぜ」

「し、親睦……?」

「おう。せっかく友達になったんだ、お互いのことを知った方がいいだろ?」



 え、友達なの、俺たち? こんな一瞬で?



「お? 見かけによらず筋肉ついてるな。太一より全然あるぜ」

「僕は中肉中背なの。でも意外だな。十夜って帰宅部でしょ?」

「え、どうして……?」

「授業が終わると、いつも真っ先に教室を出るから。なんとなくね」



 そんなに目立ってたの俺。やだ、恥ずかしい。

 それとも太一が、周りをよく見てるってこと、か? どっちにしろ、トップカーストに認知されてると知って、ちょっと嬉しい。



「お、俺は筋トレが趣味で……」

「おお、気が合うな。オレもだ。まあバスケ部の一貫でやってるんだけどさ」

「あー、ぽい」

「ぽいってなんだ! 人を見掛けで判断すんじゃねーよ」

「でもバスケ部なんだろ?」

「いやそうだけどさ」

「見掛け通りじゃん」

「ぐぬぬ……!」



 口合戦で負けたのが悔しいのか、義樹は乱雑にコロッケパンにかじりついた。

 その一部始終を見てたのか、星咲が義樹を指さして笑った。



「あはっ、くがっちが遊ばれてるー!」

「遊ばれてねぇ!」

「あははっ、無理があるよ! やるねぇ、つねっち!」



 星咲が俺の肩をバンバン叩く。

 なんで陽キャってこんな距離感近いの? ボディータッチしすぎだよ。もっとパーソナルエリアを守って。

 と、それを見ていた道谷もくすくすと笑った。



「十夜くんって、そんな感じなのね。いつもスマホいじってるから、もっと大人しい子なのかと思っていたけど」

「でしょ? でよ絡むと面白いんだよ、常澄くんって。いざって時には頼りになるし」



 ね? とウインクをしてくる九鬼。

 そんな持ち上げんな。周りもおーとか感心すんな。



「まだオレらの知らない十夜がいるっぽいな。ならさ、今日の放課後遊びに行かね?」

「僕はいいよ。でも義樹、部活は?」

「今腹痛になったから休む」

「サボりじゃん」



 やいのやいの。そうしてるうちに、いつの間にかこのメンバーで遊びに行くことになってしまった。

 恋歌を見ると、興奮したように鼻息が荒い。

 大人数で遊びに行くなんて、初めてだもんな。興奮する気持ちもわかる。


 俺? もちろん帰りたいよ。だって俺、完全に巻き込まれじゃん。



「申し訳ないけど、俺は──」






「十夜、行こ?」

「行きます」






 あ……はぁ。恋歌にお願いされると弱いんだよ、俺……。

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