リア充グループは〇〇が近い──②

   ◆



「刮目せよ! ジャンピングッ、ダーンク!!」



 ダアァンッッッ──!!

 おおっ、生ダンク初めて見た……!

 義樹がダンクを決めて、華麗に着地。さすがバスケ部。とんでもない身体能力だ。


 放課後、俺たちは駅チカにあるスポーツセンターに来ていた。

 バスケ、卓球、バッティングなどの運動はもちろん、ダーツやビリヤード、カラオケ、ゲーセン、なんとゴーカートまで遊べる施設らしい。

 あるのは知ってたけど、入るのは初めてだな。



「久我くん、相変わらず派手だねぇ」

「あれは馬鹿元気と言うのよ、円香」

「くがっち、あたしもやるー!」



 いつの間にかスカートの下に体操着を履いていた星咲が、義樹に混ざってバスケを始めた。

 目測だが、星咲の身長は150センチに満たない。

 なのに動きがすばしっこい上に、ドリブルがくっそうまい。

 陽キャはなんでもできるのか……。



「十夜は混ざらないのかい? 今日は十夜と横島さんとの親睦会だよ」

「お、俺、バスケってほとんどやったことないんだけど……」

「いいんだよ、やったことなくても。みんなで楽しむのが目的なんだから」

「……失敗しても笑わないか?」

「笑わない。笑うわけないよ」



 太一が爽やかな笑顔を向けてくる。

 そ、そうか……なら、やってみようかな……?


 少しだけ緊張しながらも、コートに入る。

 と、俺に気付いた義樹がボールを投げ渡してくれた。



「へいへい! 十夜、シュートだ!」

「させぬ!」



 えっ、うおっ!?

 星咲がシュートをさせまいと、至近距離でブロックしてくる。

 ちょ、ちかっ。異様に近い……!

 けど……身長が小さすぎて、まったくボールに届いてない。

 なんだろう。ちょっと昔の恋歌を思い出すな。



「うおー! この巨人ども! 卑怯者めー!」

「そんなこと言われても」

「ぎゃはははは! ほら柚姫、ジャンプだジャンプ!」

「だゃまれ!」



 まあ、うん。確かに小さい。ジャンプしても届いてない。

 可愛いけど、なんだか可哀想になってきた。

 恋歌も、ゲームで負けるとムキになってたからな……星咲に関しては、もはや勝敗の前に勝負にすらなってないけど。

 ……なんか、甘えさせたくなるな。

 そっと息を吐き、ボールを星咲の前に差し出す。



「ほら」

「え……いいの!?」

「うん。星咲のドリブルかっこいいし、もっと見せてよ」

「ぬはー! とーやくん、めっためたいい子じゃん! ありがと!」



 星咲はボールを受け取ると、また華麗にドリブルを始めた。

 まるでおもちゃを買ってもらった子供みたいなはしゃぎようだ。

 その様子を見てた義樹が、頭を掻いて近付いてきた。



「なんでぇ。十夜のシュート、見てみたかったのに」

「ぁー……お、俺、人生で1度もシュート決められたことないんだよ」

「マジ? 1度も?」

「……笑うなよ」

「笑わねーよ。オレだって最初は全然入らなかったから。なら教えてやるよ。ほら、こっち来い」

「うおっ……!」



 義樹に肩を組まれて、ゴール下まで歩いていく。

 なんでこう一々距離が近いんだよ……!



   ◆恋歌side◆



「なるほど……十夜のことが、少しだけわかったよ」

「そうね。十夜くん、すごく優しいみたい」



 隣で、智琉ちゃんと矢原くんが十夜のことを褒める。

 そうなんです。十夜は優しいのです。むふー。

 自分か褒められたわけじゃないのに、すごく嬉しい。

 ちょっと自慢気なウチを見て、円香ちゃんがお姉さんのような笑顔を見せた。



「ふふ。恋歌ちゃん、嬉しそうだね」

「うん、嬉しい。……ありがとう、円香ちゃん。ウチと……十夜を誘ってくれて」

「気にしないで。常澄くんなら、絶対私たちのグループでも仲良くできるって確信して呼んだんだし」



 そう……かな? 十夜って人見知りではないけど、ウチに負けず劣らずの陰キャなんだよね。

 まあ、十夜の優しさがみんなに知ってもらえて嬉しいのは間違いない。


 久我くんと柚姫ちゃんに教えてもらいながら、シュートに四苦八苦している十夜を見る。

 十夜があんなに人に囲まれてるの、初めて見たかも。



「恋歌はバスケやらないの?」

「ウチ、バスケって苦手なんだよね。というか、ジャンプする系は全部苦手。動きすぎると痛いし、ちぎれそうになるし」

「…………」

「だからスポブラを付けないとできないの。今日は持ってないし……あと、揺れないスポーツが好きかな」

「…………」

「……智琉ちゃん?」

「……ソウネ」



 え、なんで急によそよそしく……!?

 う、ウチ、変なこと言っちゃったかな……?



「恋歌ちゃん、あまり弱者をいじめちゃダメだよ」

「ま、円香ちゃん……? 弱者って……?」

「私たちと、智琉は住む世界が違うの」

「…………あ」

「ね?」

「円香、あとでお説教ね」

「ごめんなさい」



 智琉ちゃんの怖い笑顔に、円香ちゃんが直角で謝る。

 そうだね。うん、そうだね、今のは怖いね……。



「恋歌、なに顔を背けてるのかしら」

「ナンデモナイデス」

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