第3話
*
スカイツリーは噂通りとっても高い場所から東京の夜景を見渡せてロマンチックそのものだった。
「こんな場所で告白とか、やばくなぁい?」
どこからともなくそんな声も聞こえてくる。スカイツリーの展望室には私の中学校の三年生が全員集まっていて、班で行動すると言うよりは、仲の良い友達と一緒に写真を撮ったりしていると言ったほうが正しい感じの空気感だった。
「桃乃、一緒に写真撮ろうよ」
結衣が美幸と一緒に誘ってきたけれど、「いいよ」と言いながらも私の目線は雄太から離れることはなかった。
――今は隣のクラスの男子といる感じか。その班の子も一緒に。あ、離れて行った。こっちにやってくる。
「女子ばっか写真撮影ずるいって。俺たちにもタブレット貸してよ」
「えー、嫌だ。なんて嘘嘘、いいよいいよ。ちょうどトイレに行こうと思ってたんだよね。ね、桃乃!」
「え? 私?」
そんな会話があったのか、どうなのか、雄太ばっかりに意識を向けていて気づかない自分がいた。
「えっと……」私が回答を考えていると、別のクラスの女子と話していたヒカルが戻ってきた。
「トイレ行ってきてて」
「そっか、ヒカルはもうトイレに行ったんだね。じゃあ私たちも急いで行ってこようよ。ほら、桃乃、行くよー」
結衣が私の腕に自分の腕を引っ掛けてグイグイ引っ張っていこうとするけれど、よく見てみると、雄太のそばにはさっき戻ってきたヒカルがいて、それも少し壁際な目立たない場所のような気がした。ヒカルが雄太と何か話をして、誰かを手招きして呼んでいる。
――あっ! あれは、隣のクラスの
バレー部のキャプテンだと言う、学年一頭のいい、顔も可愛い山越さんが雄太の方に近づこうとしていた。
「私、今トイレ行きたくない」
「え? ちょっと桃乃、どうしたの?」
「私、今トイレに行きたくないから。ヒカルたちと待ってるわ」
「ダメだって。ほら、一緒にトイレ行ってこようよぉ」
「やだ。いいの、行きたくない気分だから」
私はヒカルと雄太の元に走り寄っていき、その場にとどまることにした。私が戻ってきたことで、山越さんはなんとなくどうでもいい会話をしてすぐに自分のクラスのメンバーがいる方に戻って行った。
――やった! 告白するのを阻止してやったわ。
全然気持ちのいい気分じゃなかった。
*
修学旅行が終わり、私はまた元どおりの明るい不登校に戻った。行きたい授業や行事がある時だけ学校に行って、それ以外は家にいる。
別に学校が嫌いなわけじゃない。
なんとなく、つまらないだけ。
なんとなく、めんどくさいだけ。
なんとなく、居場所がないかもって思っちゃう自分がいるだけ。
なんとなく、失恋をしたっぽいと言うだけ。
私の誰にも言えない恋は、誰にも言うことなく、静かに失恋したと言うことだけ。
ただ、それだけ。
落ち込むのはやめよう。
「高校デビューしかないな!」
私は今、自宅で結構真面目に勉強をしている。
だって、自分を変えるのは、自分でしかないような気が、あのスカイツリーでしたんだから。
「負けない」
完
明るい不登校でも恋はする 和響 @kazuchiai
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