やさぐれた料理人はモフッとな狐っ娘と出会う、さあご飯の時間だーー!!

人間と魔族が血肉を削り争う戦乱の世。戦いの最中ですべてを失い絶望の淵で彷徨っていた料理人のダズリーが辿り着いた砦、そこは森の奥にそびえ立つ革命軍のアジト。この場所から彼の再起が始まる。

本作は心に深い傷を負った一人の料理人ダズリーと行き倒れていた謎の狐っ娘ヒナを中心に森の砦の中で展開するグルメな物語。主人公は腕利きの料理人、その肩書通り章ごとに素晴らしい料理がお出しされ、読者の空腹神経を刺激します。
ここで上手いと思ったのは、下手に高級料理を出さずに、簡単な素材から作れる家庭料理を主軸にしてる点です。

ミートパイや野菜のクリームスープ、日本人なら良く知っている桜餅など、拝読中どれも簡単に想像でき、はとりさんが書く綿密な調理描写のおかげで、完成した時にはホッカホカなイメージが頭の中に広がっています。
出来上がった料理やお菓子を登場人物達が食べる場面は羨ましいの一言、私も何度食べたいと願った事か、そう思うほど読者を惹きつける文章力がこの作品にはあります。

特に今作のヒロインである狐っ娘のヒナちゃん、この子が見せる反応がとーっても可愛いのです!! ダズリーと初めて会った時は怖いくらいに警戒していたヒナちゃん、しかし彼が作る料理のおかげで心が解され、素直で優しい面を見せてきます。
目をキラキラと光らせ耳をピクピクと動かしながら、ダズリーにどんな料理を作るのか興味津々で尋ね、調理中はじっと待ちながら尻尾をぱたぱたさせるのです、もうこの子の仕草が可愛すぎて、エモさの余り心の中で何度も吐血しましたよ、ええ。
こんな愛らしいヒナちゃんと交流を重ね、ダズリーは心の傷を少しずつ癒していきます。

温もりと愛情の込められた料理の香りが、画面を越えて読者に届くハートフルな砦の一幕、紡がれる優しさに素敵な満腹感を得られる物語は如何ですか?

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