Day 8 さらさら

「おにーさん、やっぱりお困りでしょう?」


 無邪気な声と共に舞い降りたユーイェンはほくそ笑んだ。

 猛禽類のような深緑の瞳は星にも負けない強さで、女を睨む。


「わざとか」

「結局、こーなると思ってた。ユーちゃんが助けてあげよっか」

「タダで助けるようなヤツに見えないが」

「そーねぇ。お礼はほしーな?」


 うーん、うーんと唸りながら顎に手を当てたユーイェンの上半身をゆらした。顎に当てた拳から人差し指がのびる。


「相棒になってもらうとか」


 突飛な言葉にトキワは鼻白んだ。黙殺することもできたが、それでは話が進まない。いか仕方なく、半ば折れる形を取る。


「……護衛なら引き受ける」

「ヤダァ! おっとこまえー!」


 両手を鳴らし、大袈裟な言いようにその場の空気が冷えた。

 ほめてるのに、と紅い瞳は弧を描く。


「お兄さんの方が戦闘能力高いだろうし、とりあえずは、それでいっかな。あ、でも、協力しながらでないと奥には進めないと思うわ」


 情報は全て共有ね、と手が差し出された。輝きに満ちた瞳が男を捕られる。


「ワタシはユーイェン。そろそろ、アナタの名前を教えてもいいんじゃない?」

「……トキワだ」


 開かれた手を無視したトキワにユーイェンは肩をすくめた。手の平を見つめた後、ひらひらとふる。


「はいはい。仲良くする気なんて、さらさらないんでしょー。いいもんねぇ、後悔するんだからぁ」


 トキワは態度を改めなかった。

 ユーイェンは唇を尖らせたが、一瞬で表情を変える。


「行きましょ、老師ラオシーが待ってるわ」

「あてがあるのか」

「大丈夫。ユーちゃん、かしこいから」


 まっかせなさーいと一本だけ立てられた細い指は魔法をかけるように振られた。



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