21.新たな計画

「テスト・・・」


「そう、テスト」


「・・・」


都は急に難しい顔になった。静香は嫌な予感がした。

この顔・・・。

また何かくだらない事を企みだした??


「・・・都、いつもテストの時は和人君に頼りっぱなしだったの・・・」


「そうね。知ってる」


都はガバッと顔を上げて、静香を見た。

静香は思わず後ろにのけ反った。


「都! 今回のテストは和人君を頼らないで頑張ってみる!」


「はい?」


「そうして、少しでも成績上げて、和人君に見直してもらう!」


都は目を輝かせた。

反対に静香の目は曇った。


「・・・いや、それは無理じゃ・・・」


「だってね、この間、図書室で勉強して待っていた時、褒めてくれたの!『偉いね、都ちゃん』って!」


都は以前、偶然そこにいた高田に解らない問題を教えてもらいながら勉強した時の事を思い出した。

その日の帰り、勉強して待っていたことを和人に報告したら、偉いねと褒められたではないか!


「たまたま宿題をやってただけなんだけど。次の日の授業で絶対当たるの分かってたから、仕方なく」


「・・・そもそも、それくらいで褒められるってどうなの・・・?」


「ほら、都、いつもマンガ読んで待ってるから」


「・・・」


それだけではない。

和人と最後に登校した日・・・。


『都ちゃん、そろそろテストが始まるからちゃんと勉強しないと』


そう忠告された。

そうだ! 忠告された通りちゃんと勉強しよう!


都は目をキラキラさせて静香の両手を握った。


「都! ちゃんと勉強する!!」


「・・・うん、そうね、勉強して・・・。って、当たり前だけど」


「一人で頑張る!」


「・・・いや、そこは和人君を頼った方がいいかと・・・。むしろ、チャンスと思ったら?」


「頑張ったねって、褒めてもらう!」


「聞いてねーな、人の話・・・」


都に手を握られたまま、静香は盛大に溜息を付いた。





都は自分の部屋の勉強机の椅子に胡坐をかいて、腕を組んで考え込んだ。


はて、テストとは?


今まで、自力でテストを乗り切ったことが無い。

いつも和人が重要ポイントを解説した後、ヤマを張ってくれた問題をひたすら解く。

都がその問題をすべて解けるようなるまで、何度も繰り返す。


「・・・」


教科書とノートを前に都は顔を顰めた。

普段から予習復習をしない都は、普通のテスト勉強方法が思い浮かばない。

今考えると、和人と一緒の「追込み勉強」しかしたことがない。

授業では解らずに放っておいたものも、この時の和人の解説でやっと理解していたのだ。


「まずいわ・・・、何をどう勉強すればいいのか分からない・・・」


いかに自分が和人任せだったか気が付き、焦りだした。


これは酷い・・・。

これでは和人に呆れられても当然かも・・・。


都は机に突っ伏した。

改めて自分の無能ぶりを思い知った。


それにしても自分に課したハードルが高すぎないか?

既に、和人の助け無しでテストを乗り切れる気がしない。

その上、自分一人の力で少しでも成績アップなんて、何を寝ぼけたことを思ったのか。


都は机に顔を置いたまま、だらしなく教科書をパラパラめくった。


「でも、これじゃ、本当に和人君に呆れられちゃう・・・」


教科書をパンと閉じると、むくっと起き上がり、両頬をピシャっと叩いた。


「それはダメよ! 出来る限り頑張るのよ! 和人君に見直されるように!」


都は自分に活を入れた。

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