呪い

 塔の上で暮らす彼女の日課は歌うこと。その声は小さく高くかすれ、風にかき消されて、まるで囁きだ。

「飛ぶ鳥の翼はもがれ 業火に落ちて」

 閉じ込められた彼女は、下界に届かぬ声で世界を呪う。

 聴くのは世話役の僕ただ一人。

「好きなだけ歌って」

 耳元で甘く伝えると、彼女の瞳は沈んでいく。


―・―・―・―・―・―

『第3回140字小説コンテスト はのコン feat. 晃』参加

テーマ:囁き

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る