24 絶叫
悲鳴は、いや、悲鳴というよりは絶叫は、小さい子供の声だった。
この声は、ソウタ?
思い当たったアウリオンは剣を手に走る。
アパートの隣の、三兄妹の家の前。
コウタとナミと、母親は気を失っている。
ソウタだけが意識を保っているが、彼の目の前には四つ足の魔物が今にも獲物に食らいつかんと口を開けている。
「ソウタ! 走れ!」
声を張り、一層足に力をこめると、エルミナーラで戦っていた時の身体能力を発揮する。
まさに一足飛びで魔物とソウタの間に割って入る。
「リオン、おにいちゃん?」
ソウタは呆然とアウリオンを見ている。
「蒼の夜だ。知ってるか?」
「あ、いせかいとつながる……」
「そう。おまえは家へ入れ」
狩りの邪魔をされた魔物が吼える。
リオンも負けじと魔物を睨み返しながら、まだ動けないソウタに声をかけ続ける。
「でも、コウタとナミが、ママが……」
「俺が守る。魔物は俺が倒す。だからおまえは安全なところへ。おまえがそこにいたら剣が思い切り振れない」
魔物が襲い掛かってきた。爪を避けつつ、アウリオンはちらりとソウタに目配せする。
自分がいるとアウリオンが戦いづらいと理解したのだろう。ソウタは小さくうなずいて。震える足を一生懸命動かして走った。
よし、それでいい。
あとは俺の仕事だ。
魔物の攻撃を避けつつ、斬りつける。
相手は思っていたよりも素早い。ダメージは与えられるが、なかなか止めを刺せない。
詠唱魔法も使えたら。
そう思うと、アウリオンの体の中の魔力が一層高まった。
もしかして、この空間の中なら使えるかもしれない。
アウリオンは期待を込めて、魔法を詠唱した。
『拘束』
唱えると、魔物の動きが目に目て鈍った。自分の体が思うように動かないのをもどかしく感じているのか、魔物が低いうなり声をあげる。
効いているようだ。
アウリオンは難なく、魔物の胸を剣で貫いた。
断末魔の叫びをあげ、魔物は四散する。
暗くなっていた空が元の夕焼け空に戻っていく。
アウリオンは剣をマナ・ポケットに収納した。
戦えた。守ることができた。
アウリオンは、ほっと息をついた。
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