25 キラキラ

 魔物を倒したことで「蒼の夜」は消え去り、意識を失っていた子供達と母親も目を覚ました。

 ほっと一安心のアウリオンにソウタが飛びついてくる。


「リオンおにいちゃん、すごい! ありがとう!」

「リオンくんが『蒼の夜』の魔物をやっつけてくれたの?」


 子供達の母親から尋ねられてうなずくと、手をぎゅっと握られて頭を下げられた。


「ありがとう、ありがとうございます、子供達を助けてくれて」


 涙を含んだ彼女の声に、アウリオンは改めて、戦って誰かを守ることの大切さを実感した。


「いいなぁ、おれもリオンにーちゃんがたたかってるとこ、みたかった!」

「わたしもー」


 コウタとナミがうらやましそうにソウタとアウリオンを見る。


「けど、ばけもの、こわかったよ。ぼくはみたくなかったよ」


 ソウタは魔物を間近で見た、しかも襲われる直前だったので、恐怖が勝っているのだろう。


「そうだな。化け物は怖い。でも俺が近くにいる時は、俺が守るからな」


 それじゃまたな、と言ってアパートに戻ろうとすると子供達が「えー」と大合唱した。


「おれもっとはなしききたいよ。にーちゃんがどうやってまものをやっつけたのか」

「そうよー、ソウタおにいちゃんだけずるーい」


 怖さを知らない子供達は無邪気だ。

 アウリオンは苦笑を浮かべた。


「リオンくん、よかったらうちでご飯食べない? ご飯ぐらいじゃ助けてくれたお礼には釣り合わないかもしれないけど。新奈にいなちゃんももうすぐ帰ってくるんでしょう? 新奈ちゃんも一緒に」


 母親の申し出に喜んだのも子供達だ。


「新奈に相談してみます」

「ええ、そうね。都合があるでしょうし」


 その場はそういって離れたが、アウリオンとしてはあまり戦いのことは話さない方がいいな、と思っていた。


 だがお隣の子供達はアウリオンが思っていたより行動的だった。

 新奈が帰って来たタイミングで新奈とアウリオンを呼びに来たのだ。


 結局、断るに断り切れず、新奈と一緒にお隣に行くことになった。


 食卓は、アウリオンの戦いっぷりをソウタが興奮ぎみに身振り手振りを交えて話して、つられてコウタやナミが大喜びというとても賑やかなものになった。


 ソウタがまだ怖がっているのではと心配していたが、杞憂に終わってよかったとアウリオンは一安心だ。


 父親からも感謝のしるしとして酒をふるまわれた。


 自分としては当たり前のことをしたまでだ。

 だがこの一家にとってはまさに命の危機を救われたのだ。

 特に子供達の、ヒーローを見るようなキラキラと輝いた目に、アウリオンはやはり自分の力は正しく使われるべきものだなと思った。

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