八、石が転がるように
それは、些細な出来事だった。
言い合いになり感情的に突き飛ばされたその身体は、地面に叩きつけられる。
動かなくなった男を揺さぶると、後頭部が血で濡れていた。叩きつけられた地面にたまたまあった石が、その男の命を奪ったのだ。
五人の若者は、焦る。殺しの罪は重い。だが、小さな村だ。誤魔化す方法はある。怪異の仕業にすればいいのだ。
若者たちは一度家に戻り、各々鉈や斧を持ち寄ると、息絶えている男の身体を押さえ、首、両腕、両脚をバラバラに切断した。
そして切断した部位を震える腕でひとりひとり抱えると、首以外の部位をそれぞれ別の場所に埋めた。
最後に残った首はそのまま竹林に残し、血で濡れた石は掘り起こして川に捨てる。男の顔は驚愕したままの表情を残し、枯れた笹の上に転がっていた。
行方知らずとなった男はこうして怪異の仕業に仕立て上げられる。他の村人たちが術士に相談するかどうか話し合う場所で、呼ぶ必要はないだろうと五人の若者たちは提案を却下する。
真実は五人以外知るはずがなかった。夫を失い気の狂った女が、首を吊ったことに関してはさすがに後味が悪く、男たちは墓を掘って埋葬してやることにした。
だが、そこから悪夢が始まった。
関わった者たちが次々に死んでいく。男の復讐か、女の怨念か。ひとりまたひとりと殺される。
しかも自分たちが切断し、埋めた部位と同じ場所を引き千切られて。それは恐怖でしかなかった。
目が覚めた時、生き残ったことをほんの一瞬喜び、そして後悔する。すべてが暴かれ、これから自分の罪を問われることになる。
生き残ったのも束の間、若者は
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