四、怪異の謎
まだ寝る時間には早いが、村の灯りはほとんど消えていて、月明かりだけがぼんやりと辺りを照らすのみ。
怪異が起き始めたのは四日前からだという。一日一人、まるで生贄かなにかのように殺されているという。
しかも身体の一部を引き千切られて殺されていることから、到底人間の仕業ではないと解る。
妖者の中でも人を喰らう
今まで見てきた死体は、身体にたくさんの噛み痕があったり、欠損している部分があり、人の形を保っているものは稀だった。
だが今回この村で殺されている死体は、その一部の欠損だけで、他はほとんど目立った傷はないのだという。
ただ、死体の顔はどれも驚愕した表情のまま固まっており、よっぽど死ぬ間際に怖い思いをしたのだろうと店主は言っていた。
「なぜ一部を持っていく必要があるのか・・・・しかもそれぞれ違う部分を」
最初は右腕、次は左腕、その次に右脚、最後に左脚。この怪異はどうも奇妙なところがある。しかも人の身体を引き千切るほどの腕力だ。
「まるで呪詛の前の下準備みたいだね。死体を実際に見てみない事には確かではないけれど、」
辺鄙な地にある村だからこそ、
自我のない野良の
「呪詛や禁呪にはあまり詳しくないけど、この村にはなにかあるのかも」
村の端から端までの暗い道はほぼ一本道で、一軒一軒立ち並ぶ民家の間隔も広い。
合図もなく同時に振り向くと、
「子供が、こんな時間になにしてる」
村中を歩き回っていた時から、ずっと後ろをつけて来ていた者の正体。それは、まだ幼い子供だった。
「そんな怖い顔で迫ったら、何も答えられないよ?ねぇ?」
屈んで、
「君の、その眼・・・・」
はっと
歳は四、五歳くらいだろうか。手足が細く、髪もぼさぼさで、着ている衣も薄汚れていた。よく見れば履物も履いておらず、足も傷付いている。
「綺麗だね、お月様みたい」
こちらに顔を近づけて、汚れている顔に躊躇いなく触れてきた
長い前髪で隠されていた敵意のあるその眼は、金色をしていた。まるで月のような、瞳。
先ほどまで狼みたいに目の前の敵を睨んでいた
「だめだよ、
「いや、俺はなにもしていないが・・・・」
どちらかと言えば、
「とりあえず下ろしてあげて?」
ふふっと小さく笑って、
(・・・・こいつ、)
表情には全く出ていないが、内心は憎たらしいその態度に苛立ちを覚えた。
「君は、この村の子?」
後ろに隠れたままの少年の頭はちょうど
「こんな時間に外に出てはダメだよ?お家はどこ?」
ふるふると
外で騒いでいたからか、宿屋の店主がどうされましたか?と顔を覗かせる。しかし
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