第3話 サクヤの仕掛け…三人の裏話

 サクヤに別れを告げられた三人組は、見て解るくらいに動揺をして落ち込んでいた。

 そもそもの原因は…ミクの早とちりだった。

 

 ~~~~~城から出発前の会話~~~~~


 「サクヤ、こっちが用意する物とかってある?」

 「旅に必要な物は最低限揃えておけば良いさ! その他の必要な物はこっちで揃えておくから…皆にも言っておいてくれ!」


 ミクはこれをどう勘違いしたのか…?

 ハンカチとティッシュにスマホだけを用意していた。

 さらに「旅に」を抜かした必要な物だけで良いと、ミクは2人に伝えた結果…三人は手ぶらという事になった。

 ハッキリ言おう…ミクは頭が悪い。

 高校も結構ギリで補欠入学出来た位で、テストを受ければ赤点が八割を占めているという。

 下手すると、中学生の方が頭が良い場合がある。

 その原因が、多すぎる弟達の世話で勉強が出来ないという事だった。

 ただ…マミとユウトがそれに気付かなかったのだろうか?

 それは…?


 「城から旅の支給品が貰えるという話だけど? こっちも何か準備をした方が良いんじゃないか?」

 「そうね、水や少量の食べ物とか…あとは回復アイテムとかもね。」

 「旅慣れていない私達が余計な物を持って行くなんて、旅の足手纏いになるじゃない。 必要な物はサクヤが揃えてくれるという話だし、私達は気楽に行きましょうよ!」

 

 そう…そもそもの原因がこれだった。

 完全にミクの誤解である。

 旅慣れない私達が何か用意するよりも、旅慣れているサクヤに任せよう!

 ミクはそう思っていた。

 その意見にマミとユウトも賛成したのである。

 そして現在は…サクヤという旅慣れた者に別れを告げられたのも問題だが…?

 それ以上に所持金が少ないのも頭が痛かった。

 三人が泊っている宿の料金は、1泊銀貨1枚で食事付き…なんだけど、所持金を考えるとすぐにクエストをやらないと明日からはここよりランクの低い宿に泊まるしかなくなる。

 ミクとマミは、それだけは避けたかった。


 ~~~~~サクヤに転移魔法で宿の部屋に移動した後~~~~~


 「自分が冒険者ギルドの依頼書を何枚か借りて来たんだが?」

 「どれを見ても銅貨が報酬のクエストしかないね。」

 「銀貨の報酬のクエストは無かったの?」

 「銀貨の報酬は、Fランクでは受けられないんだ。 ランクを上げれば可能になるんだろうけど…」

 「なら、さっさとランクを上げましょうよ! 何をすればランクが上がるの?」

 「えーっと? 採集クエスト30個、討伐クエスト5個、試験官との戦闘で勝利する事によりランクが上がるみたいだ。」

 「採集って薬草とか?」

 「薬草、毒草、食材、その他…どれも報酬が銅貨100枚以下だな。」

 「銅貨1000枚で銀貨1枚だから、相当な数をこなさないとね。」

 「討伐クエストはどんな物なの?」

 「バーゲストなどのEランク魔物の討伐のコアらしい…」

 「なら楽勝ね!」

 「バーゲストなら、何度も倒しているし!」


 だが…この三人は、必要以上の討伐をしてからコアを回収して売れば良いと考えていたのだが、コアの買取はその場所によって安くなる事を知らず、全て同額で買い取りをして貰えると思っていた。

 スローヴィルの村の冒険者ギルドでは銀貨1枚だが、フレイラッツの街では銅貨80枚程度の価値しかなかった。

 更に言うと…楽勝の理由は、サクヤに没収された武具のお陰という事を知らなかった。

 今の装備では、苦戦は免れないのであった。

 そしてバーゲストの討伐に行き、倒せない事は無かったが思った以上に苦戦して、結局倒せたのは4匹程度だった。

 だが、4匹のコアで銀貨4枚と考えていた三人は、冒険者ギルドに持って行ったが…思った以上に安く買い取られ文句を言っていた。


 「駄目だわ、銅貨320枚にしかならない。」

 「それに前はあんなに簡単に倒せたのに、この街の周辺のバーゲストは何であんなに強いの⁉」

 「それでいて買取が安いなんて…」


 バーゲストでなくても、Eランクの魔物には銀貨が報酬の魔物がいる。

 だけど、バーゲストしか倒し方を知らない三人は、他の魔物に手を出すのは勇気がいるのだった。


 「このままだと…本当に2日後には、この宿に泊まれなくなるわ!」

 「私は嫌よ! 幾ら安くてもあんな治安が悪そうなばしょで不衛生な宿は!」

 「だが…そうも言ってられないぞ! 何かないか…?」


 すると部屋の扉をノックする音が聞こえてきて、宿の従業員が手紙を持って来た。

 その手紙はユウト宛で、三人は中を見るとこう書いてあった。


 【やぁ、ボクの可愛いユウト君♡ ボクはね…あの拷問で可愛い声で喘いでいる君の姿が忘れられないんだよ…それでね、多分君達の現状ではお金に余裕が無いと思うんだ。 なので、1回に付きあの拷問をさせてくれたら、銀貨10枚をプレゼントしちゃうけど、どうかな? 回数が多ければ多い程、宿に泊まれる日数も多くなるよ。 良い返事を待っているよ♡】


 ユウトはその手紙をビリビリに破いてゴミ箱に入れた。

 そして荒い息をしながら頭を抱えていた。

 空気を読めないミクがユウトに言った。


 「ユウトが何をされるかは解らないけど…銀貨10枚よ銀貨10枚! ユウト、頑張りなさい!」

 「やらんし、もう嫌だ‼」

 「確かにね…ユウトはあの後にしばらくの間は青い顔して震えていたし…でも、報酬は捨てがたいわよね?」

 「そうよ、ユウトが我慢すれば良いだけの話! 私達の為に体を張りなさい!」

 「お前等はあの拷問がどんな物かが知らないからそういえるんだ! あれだけは…報酬が高くても2度と御免だ‼」

 

 ユウトはあの拷問を思い出す度に、顔を青くして震えていた。

 だがそんな事はお構いないしにミクは言った。


 「ならユウトは1日で銀貨10枚を稼げる手立てが他にあるの? いえ…確か1回に付き銀貨10枚と書いてあったから…10回されれば銀貨100枚ね‼」

 「冗談じゃない‼ あれだけはもう二度と御免だ‼ そこまで言えるのなら、お前等二人、サクヤに抱かれろよ! そうすれば旅の同行は許して貰えるんじゃないか?」

 「いやよ! 私はサクヤに抱かれるなんて御免だわ‼」

 「私もそれは…私だけをというのならともかく、2人を指名するという事は遊び目的にしか思えないし…」

 「何だよ、結局自分が可愛いだけじゃないか‼ 自分達が出来なくて、よくも自分にソレを強要出来たな‼」

 「仕方ないでしょ! サクヤは感情とか関係なしに私の体を見て言ったんだから、そんな薄い関係にはなりたくないわよ‼」

 「あれ~? 学校では散々性の知識をひけらかしていたのに、あれは嘘だったのか?」

 「それは今は関係ないでしょ‼ ユウトが我慢すれば良いだけの話よ‼」

 「自分は別に、治安の悪い場所の不衛生な宿でも問題無いから明日からはそこに移れば良い。 もうあんなものは御免だ‼」

 「私達に病気になれとでも……」


 この三人の不毛な言い争いは、それから2時間くらい続いた。

 そして話し合いの結果…三人は冷静になるとある結論が出た。


 「やはりここは…サクヤに謝って許して貰うしかないわね。」

 「誠心誠意謝れば解って貰えるかもしれないしね。」

 「これからは心を入れ替えて…と、サクヤに頼んでみよう!」


 もう…それが修復可能な状態ではない事に気付いていない三人だった。

 三人は宿を出てから、ホテルに向かっている最中に…ホテルから出て来たサクヤとセルリアを見付けた。

 三人は急いでサクヤの元に行こうとしたが、サクヤは三人を見てから、セルリアの肩を抱いて転移した。

 そこで三人はやっと見捨てられた事を理解した。


 「声すら掛けて貰えなかった…」

 「私達は完全に見捨てられたのね…これからどうしたら良いのよ!」

 「3か月という話が今回の件で完全に無くなって、魔王を討伐するまでの話になった。」


 そして三人はその後はどうなったのか?

 翌日には宿を引き払って、安い宿に移動して細々と活動をし始めたという。

 

 この話の続きは…いすれ?

 これが、サクヤの仕掛けの裏話であった。

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