第1話 魔王会談

 此処は魔王城…マーデルリアの玉座の間でマーデルリアは、配下の各魔王達に召集を掛けた。


 「空の魔王・デスカイア到着致しました!」

 「海の魔王・マリナージュ参りましたわ!」

 「地の魔王・ガイアース到着致しました!」

 「「「我ら三魔王、マーデルリア様の招集に馳せ参上致しました!」」」

 「うむ、此度は貴公らに相談があるのです。 聞いてもらえますか?」


 マーデルリアは呼吸を整えようとして、深呼吸をした。

 そして話し始めた。


 「皆も知っているとは思うが…この度、人間側に召喚者が異世界から来たのは知っているか?」

 「はい、存じておりますわ!」

 「また…人間は懲りもせずに。」

 「それが…あれ? そういえば、ルック殿は何処に?」


 ガイアースは辺りを見渡したが、いつもいる筈の側近が居なくて首を傾げていた。


 「ルックは居るのだが…見せた方が早いな!」

 「「「?」」」


 マーデルリアは、メイドに命じてルックを連れてくる様に言った。

 するとメイド達は、円筒のガラス容器に回復水に浸かっているルックを運んで来た。


 「コレは…ルック殿⁉︎」

 「何故、この様なお姿に⁉︎」

 「ルック殿は、我等よりも遥かに強いお方ですのに…」

 「実はな…我は魔王を引退しようと思う。」

 「「「!?」」」


 マーデルリアの突然の発表に、三魔王達はショックを隠せなかった。

 三魔王達はマーデルリアを見ると、マーデルリアは震えていた。


 「一体何故ですか、マーデルリア様!」

 「落ち着きなさい、デスカイア! マーデルリア様、御説明を…」

 「今回、人間側から召喚された者の中に、化け物がいてな…ルックはその者にこの様な目に遭っていたのです。」


 マーデルリアはそう言うと、あの時の映像を再生した。

 ルックは数千匹のドラゴンを連れて人間に立ち向ったが、人間の魔法でドラゴン達は全て消滅されてから、ルックが腕や足を力付くで引き千切られてから顔を殴打される映像が流れた。

 三魔王はいずれも青い顔をしていて、その映像に声を出せなかった。


 「私が魔王を引退すると言ったのは、この者の格が…1879という事だからです。」

 「か…格が1879ですと⁉︎」

 「それで、ルック殿が手も足も出せずに一方的に…」

 「他にもですね…この者だけは異世界召喚で様々な世界に6度呼ばれて、その世界の魔王や魔神、破壊神を倒したと言っておりました。 破壊神のグラシャラボレイス様も…恐らく、突然音信不通になった魔神グレンロゼルガー様も、魔界大帝ハウゼルマジューガ様もこの者に…」

 「ブフッ‼︎」

 「あ…あの方達がですか⁉︎」

 「我は恐ろしいのじゃ! 異世界から召喚された勇者に立ち向かうのが我らの役目…だが、この者は…我…いや、私を…私を………」


 マーデルリアはサクヤを目にした時の事を思い出して、震え方が尋常で無くなっていた。

 そして威厳ある態度で示そうと思っていたが、余りの恐怖で素の自分が出ていた。


 「この者は言ったのです。 ルックを返す時に…まだ魔王を続けて世界をどうこうしようとする目的があるのなら、結界を破って殺しに来ると。 三魔王の鍵なんか無くても、すぐにお前に会いに来て殺すと‼︎」

 「確かに…この者ならそれが可能かもしれませんね。」

 「私とて、召喚勇者が倒しに来るのであれば命を賭けて向かって行く覚悟はあります。 ですが、あの者では…命を賭ける位では、いえ…魔王軍の全勢力を持ってしても敵わないでしょう。 戦いで命を落とすのは構いませんが、一方的な暴力で命を落とすのは望んではいません。 私とて命は惜しいのです。」

 「解ります、マーデルリア様…ドラゴン族を一瞬で数千匹を消滅させ、ルック殿をこの様な目に遭わせた者なんぞ、我等だって戦いたくはありません!」

 「だが…そう遠くない未来にこの者は来るぞ!」

 「この者に勝てるとは…いや、見逃しても貰えんだろ?」

 

 三魔王達は、いずれも真魔王の後釜を狙う者達で…魔王の引退は嬉しい事だが、真魔王になった途端に死ぬと分かっていて名乗りあげる者はいなかった。

 マーデルリアと三魔王の中で長い沈黙が流れた。

 あまりにも静か過ぎて、唾液を飲む音が響く位に…。

 そして長い沈黙の後に、海の魔王のマリナージュが言った。


 「私達は、あの化け物の様な人間と戦う事ばかりを考えていましたが、戦いを回避する方法があるかも知れません。」

 「どういう事ですか?」

 「人間達が魔力によって召喚を行ったのでしたら、私達の魔力であの者を元の世界に送還してあげれば良いのです! そうすれば、戦いは避けられ…マーデルリア様は引退せずに済むでしょう。」

 「良い考えだが…その送還を誰がやるんだ?」

 「そうですね…罠に嵌めるというやり方では、あの者を怒らせるでしょう。 ですので、正直に話してみるというのは如何でしょうか?」

 「正直に話して、あの者が聞き入れると思うか?」

 「過去の異世界召喚者もそうでしたが、この世界に留まろうとした者はいないはず? でしたら、そこを責めればもしかしたら…と。」


 マーデルリアはマリナージュの意見に賛成だった。

 そう…何も戦うだけが全てではない!

 そういう方法で戦いを回避出来る方法もあるのだ。


 「では、その方向で話を決めましょう! 後は…細かい事は話し合いで!」

 「「「賛成です!」」」


 こうして、マーデルリアの作戦が決まったのだが?

 果たして…そんなに上手く行くのだろうか?

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