第三章

序章 この男…近寄るな、超危険‼︎

 俺とセルリアは、この大陸の港を目指す為に山道を歩いていた。

 三人と別れて街を出てから2日経っていた。

 俺は腹が立っている…あの三人にもだが、自分自身にもだ!

 もっと親身になって教えてやれば良かった…とか、たくさん教えたい事があったがそれが出来なくなった。

 過去の異世界召喚以降、心を許しても良いと思っていたが…って!


 『いい加減しつこいんだよ、この猿ども‼』


 山道を歩いていると、Aランク討伐対象の魔物のバトルウォーリアエイプというのが群れで目の前にいた。

 セルリアは警戒しているが、俺は構わず前に進んで行き…


 『殲滅業火炎弾…メガフレア‼』


 俺は目の前の猿共を山ごと消し去った。

 本来なら討伐証明部位を手に入れる所だが、消滅したので回収する手立てがない。

 だがこれだけの魔法をぶっ放したのに、まだ俺の気が済まなかった。

 こんなに怒ったのはいつぶりだろうかと思う位の激しい怒りだった。

 そんな中、数千匹のドラゴンと共にあの男が現れた。


 「貴方には以前…お世話になりましたので、今回は魔王様のお力を借りて、龍の群れと共に参りました! 貴方は強い…ですが、これだけの数の龍族を相手ではいく…」

 「ごちゃごちゃとウルセェんだよ‼ せっかく生かしておいてやったんだから、怪我が治ったら魔王城で大好きな魔王ちゃんと寝てろ‼」

 「貴方のそういう態度が気に入らないのですよ…まぁ、ボクはね…」

 「お前の事情なんて知った事か‼ 俺は今…気が立っているんだよ‼ 今回は見逃してやるから、空にいる奴を連れて帰れ‼ さもないと…次はぞ‼」

 「ふっふっふ…殺すですか~? 虚勢を張っても無駄ですよ、これだけの数を相手にしては対抗策が無いから凄んで見せているだけでしょ?」


 俺は思いっ切り息を吐いて、もう1度言った。


 「今日はな…気分じゃねぇんだよ‼ 優しく言っている内に早くコイツ等を連れて帰れ‼ さもなくば、コイツ等とまとめて消すぞ‼」

 「この大軍を消す…ですか? 貴方のハッタリも大きく出ましたね?」

 「はぁ…セルリア、少し下がって地面に伏せていろ!」

 「あ…あぁ。」


 セルリアは俺から下がって地面に伏せていた。


 「本当に良いんだな?」

 「えぇ…貴方の言う事がハッタリでなければ…ね。」

 「そうか、なら…ブラックホール‼」


 空で飛んでいるドラゴンたちの中心に巨大な黒球が現れると、ドラゴンたちを吸い込んで行った。

 ドラゴンたちは必死に逃げようとするが、吸引力には敵わずに片っ端から全てを飲み込んで行った。

 そして最後の7匹も飲み込んで行くと…黒球は弾けて消えて行った。


 「な…貴方は何をしたのですか⁉」

 

 デーモンロードのルックは、青い顔をして地面に膝を付いた。


 「ちっ…あれだけいてもレベルは3つしか上がってねぇのか。 大した奴等じゃねぇんだな?」

 「レベルとは格の事ですか? あれだけいて格が3つしか上がらないって…しかも貴方が使った魔術は一体なんですか⁉」

 「質問の多い奴だな…これから死ぬ奴に答える必要があるか?」

 「ボクは何を相手にしているのかが気になりまして…」

 「面倒だが、自己紹介をしてやるよ! 俺の名は、サクヤ・シラヌイ! レベルは…この世界は格か、格は…1876だ。 今ので3つ上がったので、1879だな。」

 「せ…1879⁉ 貴方は化け物ですか⁉」

 「化け物に化け物呼ばわりされるのは心外だな?」

 「こ…このボクが勝てない理由が解りました! 魔界に伝承されるグラシャラボレイス様でも、貴方には勝てないでしょう!」

 「あ、そういえば…魔界はどの世界でも繋がっているんだっけか? グラシャラボレイスって魔界にいる破壊神だよな? あれなら、数年前に倒したぞ‼」

 「は⁉」

 「いや、だから…数年前に倒したぞ!」

 「貴方は…今回が異世界召喚が初ではないのですか⁉」

 「丁度良いから冥土の土産に教えておいてやるよ。 それと、この光景を見ている…魔王にもな!」


 俺は背後を見て言った。


 「俺は…この世界以外に6つの異世界を攻略し、そこの世界にいる魔王6匹、魔神17匹、破壊神3匹を葬った者だ。 それとなぁ、魔王…俺は三魔王何か倒さなくても、お前のちんけな結界なんかいつでも破壊出来るんだよ! 魔王…結界を解いて今すぐ姿を見せろ! さもなくば、この映像を観ているそこで、これからこの男が死んで行く様を見て居ろ‼」

 「え…?」


 俺はデーモンロードのルックに頭を掴んでから、右腕を力づくで引き千切った。

 さらに…左腕を、右足を、左足を引き千切ると、顔に一撃を入れた。

 デーモンロードのルックは、顔が潰れかけた。


 「おっと…力が強過ぎたな! レベルセーブ…300!」


 そして何度も何度も顔に殴打を喰らわせて行った。

 デーモンロードのルックはもう、声を上げる事すら出来なくなっていた。

 

 「魔王が助けに来ないという事は、お前は側近でも関係は薄いんだな? なら…トドメを刺してやるよ!」

 

 すると、空から空間が裂けて…魔王マーデルリアが姿を現した。

 そして魔王マーデルリアが地面に伏して懇願してきた。


 「我が臣下を殺すのは辞めて戴きたい…」

 「ほぉ? 運が良かったな…後一撃入っていたら、コイツは死んでいたぞ!」

 

 俺はルックを放り投げると、魔王マーデルリアはルックを受け止めた。

 そして魔王マーデルリアは、ルックを抱きしめながら言った。


 「臣下を助けていただき感謝する!」

 「#感謝する__・__#?」

 「いえ…感謝致します‼」

 「お前…まだ世界を狙おうとか考えているのか?」

 「それがわらわの役目なので…」

 「なら次は…お前を殺しに行く事になるんだが、良いんだな?」

 

 魔王マーデルリアは恐怖で震えながらガチガチと歯を鳴らしていた。


 「良いんだな…? さっさと答えろ‼」

 「く…はっ…くはっ……」

 「何を言っているんだ、聞こえねぇぞ‼…と、あまり脅すのも可哀想だな。 今回は見逃してやるが、そのデーモンロードを見て考えておけ。 魔王を続けるのなら、その男と同じ目が魔王のお前にも降り掛かるとな‼」

 「あ…あぅ…」

 「それと、これはお前等の御所望の勇者の灰だ。 受け取れ!」


 俺は勇者の灰を放り投げると、魔王マーデルリアはそれを受け取り…その場を去って行った。

 俺はそれを見届けると…すっかり怒りは収まっていた。


 「ふぅ…少しは気が晴れたな!」

 

 セルリアは今の光景を見て居て、意識が飛びかけていた。

 そしてセルリアは…サクヤに対する態度を改める事を決意した。


 ~~~~~魔王城~~~~~


 やっとの思いで魔王城に帰って来たマーデルリアとルックは、早速ルックの治療から始めた。

 そしてマーデルリアは地面に座り込んだまま、立ち上がれずにいた。


 「ルックが何度も敗北したり、デーモンロードに挑発を仕掛ける者など…ただ者では無いと思っていたが、とんだ化け物ではないか‼ 私が魔王を引退しなければ…あの者は私を殺しに来ると言うのか⁉」


 マーデルリアは考える…が、ルックがいない今では考えを纏める事が出来なかった。

 マーデルリアは、配下である三魔王を呼び出すのだった。


 「私の取るべき道は…もう…?」


 魔王すら畏怖させるサクヤは、今後どうなって行くのだろうか?

 そしてマーデルリアは、何を考えるのであろうか?


 第三章…ここより開始致します!

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