1-2 再襲
大一達と別れたヒョウ達は待ち合わせた信念の銅像から離れ、運動場付近の木の側にあるベンチで沙夜にスタルオについて話した。
「実は、この人‥‥緋翠と昨夜会った男は、本当に宇宙人なんだって」
「ぇえっ!!どゆこと?」
そんな反応にもあっけらかんと説明するヒョウに沙夜は驚きを隠せない。
「あの時沙夜ちゃんは男から光る石みたいなの貰ったけど、あれの力でこの緋翠がやって来たらしいんだ」
「そうだったの。この
ヒョウのざっくばらんな説明を聞いた後、沙夜はしばらく唖然とした様子だった。
「でもどうして、沙夜があんな夢を見たせいでこうなったのだろう」
それにはそこに居る誰もが謎だった。だって彼女は何も関係のない至って普通の少女だったから。
すると沙夜は、その
「‥‥あんな夢を見たのも、
‥‥葵竜から貰った時に感じたような、不気味な輝きはそれ以来無かったが、緋翠は手渡された宝石のように輝く《スタルオ》を眺め、しばらく考え込むとぽつりと言った。
「これには、姉さんの魂が入っている筈なのよ」
「えっ!?」
「━━姉さんがあれに喰われて魔物と一体化しても、葵竜は姉さんの心をこの中に封じ込めた筈だった。だから私は
もう必要ないって‥‥本当に‥‥?
色々気になっていたが、それはヒョウと沙夜も同じだった。
「まあ‥‥これは緋翠が持っていて良かったんだよね」
「二人とも、心配かけさせてごめんね」
「いや、いいんだよ。沙夜ちゃんが無事なら‥‥」
ヒョウはこれで一件落着のような顔をする。
「でも‥‥」
ふいに、沙夜は隣のヒョウの顔を覗き込んだ。
「私、ヒョウ君の事も心配したのよ」
ヒョウが沙夜から思わず視線を逸らすと、それを見た緋翠は思わず微笑ましい眼になる。
ヒョウは頭を掻くと照れながら緋翠の方を向いた。
「じゃあ、緋翠はこれからどうするの?」
「私は‥‥」
緋翠は何かを言いかけて黙る。すると、沙夜が緋翠に言った。
「私も何か出来る事があったら手伝うわ。ヒョウ君と一緒に‥‥」
緋翠はじっと沙夜とヒョウの顔を見たが、間を開けると後ろを向いた。
「でも、それは私たちにしか関係の無いことよ」
そう言って彼女は振り向き、笑顔を見せた。
「ありがとう、ヒョウ。もう迷惑はかけないわ」
「‥‥緋翠」
緋翠は、二人を残しそのまま去った。
「ヒョウ君、行かなくていいの?」
「‥うん、大丈夫だと思うけど」
沙夜は緋翠のことを聞いたが、ヒョウは相変わらずあっけらかんとした感じだった。
彼女なら心配無いだろう。緋翠は宇宙人で、最初怖かったけど‥‥。
「なぜか彼女とは、二度と会わないことは無いと思うんだよ」
隣にいた沙夜はそんなヒョウを見て微笑んでいる。
ヒョウは、いつの間にかすぐ隣の沙夜を意識していた。
柑橘系のような自然な甘い香りが隣から匂う、ちらっと見ると蜜柑みたいな唇で笑っている少女の姿、何故か可憐だと思った。
二人は校庭の隅にそのまま座っていた。木漏れ日が射す影の下で、現実的な世界の時間は止まっているかのように‥‥
緋翠はさっきまでのことを思い出していた。
ここで初めて会ったのはヒョウで、彼とは昨日会ったばかりの普通の少年だったが、そんな彼が嫌いでは無かった。
彼は「これからどうするの?」と聞いたけど‥‥。
でも、それは自分一人の問題だった。
私は葵竜を探す。
緋翠は《スタルオ》を握り締めると、もう一度校舎の方に振り向いた。そして行こうとしたその時━━彼女は意外なものを見た。
学校の隅に潜んでいる、不気味な姿‥‥‥。
「━━
ヒョウと沙夜が危ない!そう直感した緋翠は今来た道を戻って行った。
「きゃあっ!」
それまでほのかに甘い雰囲気だったヒョウと沙夜の前に
「逃げよう!」
ヒョウは沙夜の手を取ると、二人は追ってくる
そうすると前方からも別の
沙夜を庇いながら、死に物狂いでカゴに入っていたバスケットボールを連続でぶん投げるも二体の
━━ヒョウはこんな時にバイクがあれば良かったのに‥‥と思いつつ、何故か沙夜ばかりを狙う気がしていた。
「ヒョウ君!」
ヒョウの隙を見て沙夜の方へとまた一体。
一瞬の隙に、沙夜の目前に三体の
「やめろぉ!」
ヒョウが叫んだその時━━燕のように緋翠が現れ、振り投げた緋い
連続で三体もの
「まだいるわ、二人は安全なところに行って!」
そういうと緋翠は校舎の中に走っていった。
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