校下編
1−1 休息
緋翠の星の話を聞いたヒョウは思った。
何だかよく解らなかった。
何故、緋翠の姉さんがああなったとか‥‥あの男、葵竜がそんなに良い人間にも見えなかったし‥‥光紫と碧娥もだ。
それともう一つ、彼は気になる事があった‥‥。
「そういえばあの碧娥って人、土の中から出てきたんだ。最初見た時は死ぬ程驚いたよ」
ヒョウは緋翠に何気なく言ってみる。
「まるで化け物みたいだったなぁ」
「そうね」
緋翠はしれっと返した。
「だって私たち、一度死んでるんだもの」
‥‥えっ!?
ヒョウは思わず振り返って緋翠の顔を見た。
「葵竜は知らないけど」
「‥‥それって、緋翠も‥‥‥‥」
目が合う緋翠の顔が妖しく笑う。
‥‥化け物‥‥!?ヒョウの顔が引きつった。
宇宙人だから、良いのか!?
運転中にもかかわらず焦ったヒョウは、前方に向き直り必死で平常心を保つように考える。
さっきは緋翠から自分達の事を聞いたけど、会ったばかりの自分に全てを話すことは無いのは解っている‥‥。
あの時見た彼らは末恐ろしい感じはしたけど、一度死んでいるって‥‥死んで転生したってやつか?だけど‥‥、
更に彼女の場合は、話を聞くと以前より明るいような気がするが‥‥それは何故‥‥‥?
ヒョウの謎がもう一つ増えた。
あの
傷だらけの緋翠の姿に父は最初驚いたけど、緋翠の性格で快く迎え入れた。母が彼女をお風呂に入れて傷の手当てをし、夕飯もご馳走した。最初カレーには驚いていたけど美味しそうに食べていた。
緋翠には明日学校が終わったあと、沙夜に会わせる約束をする。
そういう話は他の人には信じてもらえないだろうが、沙夜だったら‥‥あの日二人は一緒だったので、緋翠の事を話しても大丈夫だろうと思ったのだ。
その後彼女は母親の部屋で眠ったらしい。
沙夜が無事だったらいいのだけど‥‥と思いながらヒョウも眠りについた。
次の日の朝、ヒョウは学校に向かった。
「ヒョーウ!」
学校へ行く途中、いつもの通学路を登校中にヒョウの友達の大一と信二がやって来る。
「ヒョウ、聞いたか?」
「何があったんだ?」
ヒョウは取り敢えず聞いてみると、信二はいつより高いテンションで話してくる。
「なんか、世間では怪しい事件が広まってるんだぜ」
予想通りの内容だった。
噂によると、街では喰い荒らされた変死体がそこらじゅうに出たという。
昨夜の事か‥‥
それでも学校は普通に授業はあるし二人とも何事もなくて安心した。
ヒョウはふと聞いてみた。
「沙夜ちゃんを見なかった?」
「えっ?まだ見てないよ。学校行ったら会えるんじゃない?」
学校へ向かった彼らは玄関から校舎に入ろうとする大勢を見渡す。
その中から沙夜を見つけると、ヒョウは叫んだ。
「おーい!」
沙夜はヒョウの声で振り返る。向かってくる人の波から手を振っているヒョウの姿を見つけた彼女は、後ろに結んだ髪を揺らしながら人の流れを逆走してくる。
「ヒョウ君!無事だったのね」
沙夜はヒョウの顔を見て安心したような顔で微笑む。
「君こそ家に帰れたのか心配だったんだよ‥‥ところで」
「何か解ったの?」
「それだけど‥‥放課後、話出来る?「信念」で」
放課後、ヒョウは信二達と校舎を出ると、玄関の脇にある「信念」をモチーフにしたという見上げるような銅製の裸像の横で沙夜が待っている。
「ヒョウ君、話って何?」
「実は‥‥」
すると、ヒョウの隣りに緋翠が突然現れる。
「こんにちは」
そう言って愛想よく微笑む緋翠はどこかで買って着替えた
気づいた三人は初めて見る女性にちょっと驚いた。
「ヒョウ‥‥その人は?」
「彼女?俺の姉さん」
緋翠は明るい表情で三人を見つめる。
「緋子です。始めまして」
「えっ?そうなの?」
にっこり笑う緋翠に沙夜はびっくりしたが昔からヒョウを知っている信二と大一はありえないという顔をした。
「聞いた事ないぞ!」
思わず突っ込んだ二人にも
「それは冗談だけど、私の名は緋翠、ヒョウの友達よ」
緋翠は明るく紹介すると沙夜の方を見た。
「実は沙夜に話があるの」
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