神の一手は世界を救えるのか

ちからを持っていれば、なにかを変えられるかもしれない。
誰しも夢想することがあるのではないだろうか?
けれどもそんな力(ギフト)を、神から授かったとして、それで世界が救えるのだろうか。


この作品の登場人物は、さまざまなギフトを持っている。
それは、癒やしの力であったり、戦闘能力であったり、決断力、行動力、忠義心……さまざまな形をしている。

そんな力を持った人々がさまざまに努力し、思い悩んでいるけれども、世界は変わらない。そういう話である。
変わらないことに業を煮やして、思い詰めた果てに、悲劇が起きたりもする。
そして本作、最大のギフトの持ち主は、一度、その悲劇に巻き込まれかけ、苦しい決断をして以降、世間からは一歩引いた暮らしをしている。

上手くいかないようにみえたさまざまなことが、あることをきっかけに動き出す。すべての「ギフト」が重なり合って、世界をちょっと変えていく。
そのきっかけは、結局、「ひとはひとりでは生きていけない」。当たり前のようでいて、悟るのは難しい結論のあたり、しみじみとよい話です。


しかし、本作でもっとも鮮烈な印象を残すであろうキャラクター、作中一のナイスガイ、マンドラゴラのジーク……彼だけは特別である。
たったひとりで、世界を何度も救っている。
場の重たい空気とか、沈んでいきそうになる哀しい気持ちとか……自分の力を持て余して、思い詰めたひとりの娘の魂とか。

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