「この尼ァ! 調子に乗りやがって!」


 リーダーの男はイリーナに刃物を向けて、振り下ろしてくる。


「お姉ちゃん!」


 アリスはイリーナに体当たりして、突き飛ばす。


「アリス!」


 刃物は、アリスの左腕に刺さる。


「グッ!」


 刺さった傷穴から大量の血が流れだし、アリスからは痛みからくる刺激が涙によって具現化される。


「このガキ! 邪魔しやがって!」


 リーダーの男は、アリスの腕から刃物を引っこ抜き、今度は心臓を外さず、アリスの背中を狙いにかかる。


「おーっと、ストップ」


 リーダーの男の手を止める。


「テメー!」


「お宅のお仲間さん、全員お眠だぜ」


 少年は、ニヤリと笑みを浮かべながら、男を見下す。


「遅いのよ。もっと早く助けてよね、シキ」


 地べたでうつ伏せになりながら、アリスが言う。


「うっせー、バーカー。誰が、お前なんかを助けるかよ。俺はただ、ここに金があるから来ただけだぜ」


 シキは、アリスの方を見る。


「俺を無視してんじゃねぇ‼」


 男はシキから手を振りほどき、シキは、少し交代する。


「おっと……。あぶねぇ、あぶねぇ」


 男は刃物を持ったまま、負傷しているアリスを盾にする。


「オラァ! 武器を捨てねぇーと、この女、ぶっ殺すぞぉ!」


 男はシキに警告する。


「だから何?」


「へぇ?」


 男は、キョトンとする。


「ああ、そういう事。別にいいよ。殺したければ、殺せば? 別にその女を殺したところで、俺には何にもないし、別に興味ねぇーから」


「おい!」


 アリスはシキの言動に腹が立つ。


「それよりさぁ。あんたらの金、どこに置いてんの? 教えてくれる?」


 シキは、懐に持っていた黒い銃を取り出して、男に向ける。


「この女ごと、俺を撃つ気かぁ⁉」


「だったらどうする?」


「仲間じゃないのか⁉」


「さーあ、どうかな? 知り合いといえば嘘ではないが、助けるほどの関係は持ってないからなぁ」


 シキは、銃を向けたまま男の話を聞かない。


「じゃあ、なぜ、テメーは、ここにいるんだ?」


「そうだな。なんとなくだ。ただ、金が欲しいだけ」


「この悪魔めっ!」


 男は、刃物をアリスに向けて、振り下ろす。


「悪魔で結構、俺にとっては誉め言葉だ」


 シキは、容赦なく引き金を引いた。


 すると、男の持っていた刃物が姿形なく消えてしまう。


「なっ‼」


 男は驚き、シキはそのまま距離を詰めた。


 男からアリスを引きはがし、男の顎に銃を当てる。


「どうやら形勢逆転のようだな」


「くっ……」


 男は両手を挙げて、抵抗しないという意思を伝える。


「まぁ、いいけど。とりあえず、軍には連絡しておいたから、その間、眠っていてくれ」


 パンッ!


 銃声が鳴り響き、男は天井ぶら下がったまま、気絶した。


「ふぅ……。終わったな」


 銃を懐に戻し、シキはアリスの方を向く。


「あ、ありがとう……」


 アリスは礼を言う。


「ああ? 別に助けたわけじゃねぇーよ。こいつらが持っている金が目当てだったからな」


 シキはアリスの縄をほどき、それから、イリーナの縄をほどく。


「そうだ。言っておくのを忘れておいた」


「はい?」


 シキは、イリーナの方を向く。

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