「φ」あめのむらくもP

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm40505116


YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=8l5UUuPrWHQ


作詞:あめのむらくもP

作曲:あめのむらくもP

編曲:あめのむらくもP

歌唱:GUMI


 次に紹介したい楽曲は『φ』である。フォントのよって表記が異なるため混乱するかもしれないが、一応同じ記号を用いているつもりである。記号の読み方は「ファイ」もしくは「フィー」である。特別な読みを与えているようではないので、ここでは記号通りの読みとしておく。数学の世界では、空集合や黄金比の意味を持つ記号としても使われる。

 記号の話はとりあえず置いておこう。製作者のあめのむらくもPは2017年に『エリカ』でデビューし、デビュー作ながら殿堂入りを達成している。その後も『他人事の音がする』『時の踊り子』などの人気作を残している。切ないメロディーで構成される楽曲が多く、「ききいるGUMIうた」などのタグが付いていることもある。

 そんなあめのむらくもPが新曲として投稿した『φ』であるが、この楽曲は伴奏にピアノしか使っていない。いわゆる「ボカロピアノ」のジャンルに分類される楽曲である。シンプルな構成だからこそ、メロディや歌詞がスッと心に入ってくる。しっとりと沁みるピアノのメロディが美しい。シンプルな伴奏だが、だからこそ一度は聴くべき仕上がりになっているのかもしれない。

 歌詞も見ていきたい。心に沁みるピアノのメロディとは裏腹に、やや暗い内容を歌っている。


「これが私 これが僕って

 ねぇ うるさい?うるさい?

 多数の派だからうるさいの?」

「一人一人違うされど

 所詮 人類の範疇

 一切合切 一人じゃ

 足りないや」


 これはBメロの一部である。どんなに個性を叫ぼうとも、しょせんは人類という大きなくくりでしか見られないという嘆きが感じ取れる。サビの部分の紹介をしたい。


「あるがまま あるがまま

 正しい響き

 あるがまま あるがまま

 生きるが解か?

 なのになぜ なのになぜ

 世界は乱れ

 なのになぜ なのになぜ

 偏り割れる?」


 あるがまま個性を表していくことはおそらく正しいことだろう。しかし、現実にはそれだけでは世界は平和には回らない。ただ「あるがまま」に生きようとしているだけなのに。

 ここでタイトルの『φ』について考えるとどうなるだろうか。個性を表しても世界は正しく回らない、つまり正しい答えがないという意味合いで「空集合」(答えの集合に合致するものを持たないというニュアンス)という意味を持つ「φ」にしたのか、もしくは叶うことのない「黄金比」という意味にしたのかもしれない。

 シンプルな構成のボカロピアノ楽曲であるが、一曲から様々なことを考えられる深さがある。何度も聴いて、自分なりの正解を見つけていきたくなるボカロ曲であると感じた。

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