第48話 帰って来た才華と、捏造と、ゴーヤチャンプルーカレー味

 起訴状が届いた。

 在宅起訴されるらしい。


 テレビを付けると俺の顔のモザイクが無くなっていて、容疑者畑山はたけやま創太そうたと名前がでかでかと出ている。

 玄関から、出ると一斉にフラッシュが焚かれた。

 ご苦労な事だ。

 俺は慌てて引っ込んだ。


 たぶん、マイクを向けられ『起訴されましたが、今のお気持ちは?』とか聞かれるんだろうな。

 テレビでは俺の事件のまとめとかやっている。


 玄関の方が騒がしい。

 誰か来たのか。

 玄関を開けると、才華がいて、カメラ目線でほほ笑んでいた。


「初めまして。わたくし、福耳ふくみみ才華さいかと申します。創太そうたさんの恋人になるために来ました」


 はて、なんのこっちゃ。

 フラッシュが鬱陶しい。


「とにかく、入って」


 『突然、押し掛けて来た女性を中に入れました』とレポートしているのが聞こえた。


 才華の背中を押して玄関に押し込む。

 玄関を閉めたがまだ騒然としている。


 才華は唇に指を当てた。

 喋るなって事ね。

 才華はトランシーバーみたいなのを取り出してチャンネルを弄り始めた。


「盗聴器はないようね。喋って良いわよ」

「お帰り」

「ただいま」

「説明して?」


「今日からあなたの恋人って事よ」

「前から目撃されているんじゃないの」

「そこは気をつけていたから」

「計画通りって事か」

「ええ。在宅起訴させるのに大変だったわ。単身者の場合、在宅起訴にはならないものなのよ」

「それはありがと。収監されると嫌だったからな。これからどうするの?」


「あなた、尿検査で覚せい剤が出ているわよ。ガサ入れの時も覚せい剤が見つかったわ。これで、裁判に勝てたわね」

「えっ」

「証拠を捏造されたのよ。でも捏造した刑事の名前は既に調べてあるわ。精神的に少し追い込めば一人ぐらい裏切って内部告発させられると思う」

「用意がいいね」

「もうばっちりよ。楽しくて仕方ないわ」

「さいですか」


 警察がパニックになったんだな。

 それで捏造に手を染めた。

 そこまでするのかよ。

 じゃあ俺も容赦しなくていいな。


 キュウリをお供えしてクルームの所と繋いだ。

 境界越しに話す分には独り言だと思われるだろう。

 畑側にもマスコミはいた。

 だが構うものか。


「証拠を捏造された。覆す為の魔法がほしい」

「精神魔法に真実を喋らすと言うのがあるぞ。それと、大魔法になるが、過去の映像が見られる」


 両方行っとくか。

 真実を喋る魔法を、マイクに掛けて貰った。


 大魔法、時空、過去映像で捏造の映像が映し出される。

 俺はスマホで録画した。


 過去映像には音声もあるし、ばっちりだ。

 隠し撮りは証拠にならないらしいが、警察側の心証は悪くなるだろう。


 お供え物を下げると、背景が畑に切り替わった。

 マスコミはカメラを向けている。

 さっきの奴はちゃんと録画出来ているだろうな。

 スマホを操作して確認するとちゃんと映ってた。

 映像は、覚せい剤を証拠品倉庫から持ち出す場面と、尿検査に細工する場面と、ガサ入れの細工の場面だ。


 才華に映像と、魔法が掛かったマイクを渡す。


「裁判が始まる前に捏造の証拠が手に入って手間が省けたわ」

「マスコミが鬱陶しいな」

「仕方ないわよ。万能細胞の技術は最先端だから。よく関連の話題がニュースにも流れているでしょ」

「そういえば、よく見るな。マイナスイオンを浴びる会に行って来るか」


【朗報】マイナスイオンを浴びる会25【気軽に来てね】

745

場所は○○神社の横手の森。時間は午後2時から、午後3時まで。

参加料一万円。

飴をサービス。


746

うほっ、起訴されてもやるのかよ

さすが、創太きゅんクオリティ


747

彼女が出来て羨ましい


748

アメリカとかで有名だけどさ

犯罪者を好きになるなんてどういう気持ちなんだろね


749

それな

俺も理解に苦しむ


750

有名になれば何でもありかよ


751 スレ主

お前らも悔しかったら彼女ぐらい作れ


752

俺はもうだめぽ


753

死ぬな!死ぬんじゃない!


754

俺は彼女いるから勝ち組だな


755

>>751,754にあそこが爆発する呪いを掛けた


 さあ、行こう。

 玄関を出るとフラッシュが。

 もう飽きたよ。

 自転車を押して人を押しのける。

 囲みを突破したところで、自転車に乗る。

 マスコミは車で追いかけて来た。

 神社に着くとやっぱりフラッシュ。

 客が来たところでフラッシュ。

 飴を渡す所でフラッシュ。


 ここで、臨時の記者会見でもやるか。


「質問に答えますよ。順番にお願いします」


 マスコミは話し合った。

 順番が決まったらしい。


「飴は万能細胞ですか?」

「いいえ、ただの飴です」

「飴は何で光っているのですか?」

「何故かは分かりません」

「起訴されたお気持ちは?」

「捜査には全面的に協力するつもりです」

「今朝、入って来た女性との関係は?」

「今朝、初めて会いましたが、お付き合いしたいというので、前向きに検討します」


 次の人にバトンタッチするらしい。


「犯罪だとの自覚はありますか?」

「ええ」

「罪を認めますか?」

「それは裁判で明らかにします」

「組織はあるのですか?」

「なんの組織かは分かりませんが、どこの組織にも属してません」


 もう良いな。

 打ち切って家に帰った。


 さて、何を作ろう。

 才華にゴーヤを食わせてないな。

 ゴーヤチャンプルーを作ろう。

 ゴーヤとナスとキュウリと豚肉と豆腐。

 これらを炒めて作った。

 今回はカレー粉を入れてカレー味にした。


 食べるとカレーの風味が野菜とマッチして美味しい。

 才華もお替わりしてた。

 カレーが好きなのか。

 覚えておこう。

 明日からまた大騒ぎになるな。

 早く寝よう。


 眷属契約? もちろんしたさ。

 久しぶりだったんで、念入りにな。

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