第47話 マスコミと、番組と、キュウリのサラダ

 朝、起きたらマスコミだろう人が家の前に一杯いた。

 何なんだ。

 朝の情報番組を見ると『検証!謎の万能細胞治療』とある。

 話題になっているんだな。


「では事件の経緯を簡単に説明します。7月に謎の人物が癌が治ると言って心霊治療を始めます。8月になり姿を現したわけなんですが、マイナスイオンを浴びる会と名前を変えまして、謎の薬品を付与した飴を配っているわけです。この飴が万能細胞技術を使っているとの推測がなされています。では屋久下やくしも教授にお伺いします。現在の科学力で可能ですか?」

「えー、万能細胞は皆さんご存じのように色々な細胞に変化します。ですが、それを移植する手術が必要なわけでして。万能細胞を飲んだからと言って病気が治るわけがない」

「この事について丘都おかと教授はどうですか?」

「超科学力をもってすれば可能です。宇宙人はすでにそれを持っています」

「ナンセンスだ!」


「最後まで言わせて下さい。科学が発展して100年先でも不可能と言えますか。そういう技術を持っているのは宇宙人しかあり得ない」

「馬鹿らしい。論文すら存在しないのです。それは無い物と一緒だ。秘密裏になんてのは不可能なのですよ。研究施設は衛星で監視されている。すぐに発覚してしまいます」

「月の裏側だとしたらどうです」

「馬鹿らしい。全く理解できん」


「では話題を変えまして、この番組では独自入手した飴を病気のマウスに与えました。病気が治ったという事です。これについては?」

「薬なら可能だ」

「私の所で飴を分析しましたが、飴と豆の成分しか検出されませんでした。超科学力で隠蔽しているのです」

屋久下やくしも教授の所の分析はどう出ました?」

「現在、分析中で、まだ不明だ」


「分析できなかったと認めなさい。もしくは何も分からなかったと」

「とにかく分析中だ」


 コメンテーターは賛否両論だ。

 そういう人を選んでいるのだろう。

 つまらんな。


 飴を入手して分析した局は多い。

 現在の分析では豆と飴しか出てない。

 魔力が発見されるなら、とっくにされているはずだ。

 どこも大体同じで、すぐに飽きた。

 でも関心は高いらしい。

 万能細胞だからか。

 そんなのじゃないんだけどな。


 マイナスイオンを浴びる会に行くと、カメラで撮影された。

 インタビューもされたが治療行為はしていないと繰り返した。


 客の数が多い。

 3百人は超えている。


 金を取り、飴を配った。

 警察が来て飴を差し押さえた。


「飴を家に取りに行ってきます。お待ち下さい」


 家に帰りエリクサーを生らせて、飴にまぶす。

 再び神社に戻り飴を配り始めた。

 警察は歯がゆいだろうな。

 飴と豆の成分しか出て来ないんだから。

 でも光っているから普通ではないと分かる。

 光っているメカニズムさえ分からないのにどうしようもないだろう。


 よく勾留しないもんだと思う。

 警察はパニックになっているのかもな。

 唯一の物証が正体不明では仕方ない。


 家に帰ってテレビをつけると俺の話題で持ち切りだった。

 誰もなぜ飴が光っているのか分からない。

 警察から電話があった。

 取り調べしたいのだそうだ。


 新しく買った自転車で警察に行った。

 取調室に入れられたので、頷くだけの状態にする。

 取り調べが終わり、調書に署名捺印する。


 警察はどうするんだろう。

 まあいいや。


 さて、今日の晩飯はどうするかな。

 キュウリとか沢山余っているが、近所におすそ分けにも行けないし。

 異世界に行くと、消えた所を目撃されたら大変だ。


 佃煮を作るか。

 キュウリをスライス、ネジ式の漬物容器に入れて、ぎゅうぎゅう水を絞る。

 最後に良く絞ったら、鍋に入れて煮込む。

 水分が飛んだら、味付けして佃煮の完成だ。


 これは今日は食べない。

 佃煮を作るのに暑すぎたので、冷たい物が食いたくなったのだ。

 キュウリのサラダで良いや。

 ツナ缶と、キュウリと、ランチョンミートの残りでサラダにする。


 ツナの旨味と油、キュウリのさっぱり、ランチョンミートの肉の旨味、それらが一体になって良いハーモニーになる。

 スタミナも満点だし、冷たいし、いう事なしだ。

 これで才華がいればなあ。

 そうすればもっとご飯が美味い気がする。

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