第43話 エリクサーと、掲示板と、チキンライス

 ここ3日間は午後3時ぐらいになると雷雨になった。

 そして停電する。

 コンピューターを使っていたらアウトになるところだ。

 夕立三日とはよく言ったものだ。

 今日はどうかな。

 いつも、朝は晴れているんだよな。


 蒸し暑さはいつもと変わらない。

 行きたくはなかったが村へ行く事にした。

 伴侶が出来た事を報告すれば、嫁をとる事を勧められないだろう。


 ツルムラサキを地蔵に供える。

 背景が村に切り替わった。

 シイタケを持っておすそ分けスタンピード。

 カボチャのツルも出した。


 話をした村人の所に行く。


「ついに嫁をとる決意がついたかね」

「それですが、伴侶が出来まして」

「ぬっ! 残念だな。良い男ほどすぐに結婚が決まる」

「これ、おすそ分けです」

「すまないね」


 カボチャのツルは今日一杯出しておこう。

 村が豊作になるかも知れない。


 さあ、心霊治療に出かけよう。

 最初の患者は大抵困った者が多い。

 切羽詰まったという事なのだろうか、時間前から待っている者が多い。


 掲示板に張り付いて、情報が出ると真っ先に神社に駆け付けるという事を、しているのだろう。

 この日の患者も回復魔法では治らなかった。

 仕方ない。

 あれを使うか。


 エリクサーの豆を炒って粉にした。

 それを飴にまぶしたのだ。

 患者は子供だったので、口に押し込む。

 子供は飴だと分かるとにっこり笑った。

 みるみる水ぶくれが治る。

 水ぶくれなのにウイルスじゃないのだよな。


 病気の名前なんか聞いても仕方ない。

 遺伝が関係している病気かな。


「ありがとう、ございます」


 付き添いの母親が涙ながらに礼を言う。

 良いんだよ。

 試験だから。

 エリクサーは使いたいな。


 回復魔法の上位互換だからな。

 次の患者は指が曲がっていて自由に動かないらしい。

 今は歩けないようだ。

 車いすに乗っている。

 なんの病気なのか分からない。

 やっぱり回復魔法で治らなかった。


「飴をやるから舐めろ」


 念話で声を掛けた。

 患者が頷いて口を開く。

 飴を入れてやった。

 そして、手を握ったり開いたりしている。


 どうやら治ったようだ。

 口の中から、虫歯に被せたと思われる金属を吐き出した。

 大騒ぎになるんだろうな。


 でも、治らない人を見るとエリクサーは使いたい。

 覚悟はしている。


 帰りに買い物してから帰る

 畑仕事をして昼飯を食べて、掲示板の様子が気になった。

 姿隠しを使い量販店に行く。

 掲示板をチェック。


【朗報】心霊治療開催11【気軽に来てね】

850

場所は○○神社の横手の森。時間は午前11時から、午前12時まで。

一回一万円。

痛み止めは千円。

元気が出る松ぼっくりをサービス。

※声を掛けられても驚かないように。


851

ありがとう

早速行きます


852

私も患者を連れて行きます


853

一万円をどぶに捨てる奴らの多い事


854

言ってやるなよ

病気になって胡散臭いところに最後の希望を見出しているのさ


855

治ったっていう人もいるぜ

俺は信じている


856

それは偶然ちょっと良くなっただけだろ

診断書を上げれば信じるよ


857

そういうお前がやってみろよ


858

俺どこも悪くないから


859

行ってきました。

リウマチが治りました。

ついでに虫歯も治ったみたいです。

ありがとう、ございました。


860

まじか?


861

虫歯の痛みを止めるぐらいなら市販薬でも可能だ


862

いいえ、治療痕も全てなくなって綺麗な歯です。


863

信者乙w


864

信者ではありません。

あなたは悲しい人ですね。

私は他に悩んでいる人に伝えたい。この心霊治療は本物だと。


865

はいはい

何を言っても無駄かなw


866

それを言ったらお終いよ

検証しようぜ


867

おお、フーテンさんがいる


868

わらたw


869

もれはナノマシンだと思うな


870

万能細胞に100ガベス


871

エクストラ・カムチャッカ・ヒールだよ


872

今までの治療は癌が治ったんだよな

あれは放射線治療の凄いのって事で良いのか


873

抗癌剤という手もあるぞ


874

ウイルスは抗ウイルス薬で決まりでしょ


875

何度言えば分かるんだ

スペシャル・インフィニティ・ビックバン・ヒールだよ


876

爆発してどうするんだ


 それから凄い勢いで書き込みが続いている。


 次のスレも検証で埋まっている。

 その次のスレも。


 万能細胞を使っているとの結論になったようだ。

 難病が治ると知れば、沢山患者がくる可能性がある。

 かと言ってエリクサーは製薬会社では売れない。

 どういう仕組みなのか解明できないからだ。

 才華も推測はできるが、分からないと言っていた。


 エリクサーは不味いよな。

 でも辞める選択肢はない。

 エリクサーを作ればそれだけ魔力を消費する。

 微々たる量だとしても続けたい。


 夕飯は何にしようかな。

 前に作ったトマトピューレが悪くなりそうだから、チキンライスでも作ろうか。

 チャーハンの要領でご飯と鶏肉を炒める。

 そこにトマトピューレをドバっと入れて、塩と胡椒で味を調えて完成。

 ありゃ、出汁というかコクが足りないな。

 まあ、いいや。


 才華が帰って来た。

 チキンライスを食って。


「30点」

「さいですか。作り直してやるよ」


 市販のデミグラスソースでチキンライスを作る。


「60点」

「まあいいか」


 失敗作は俺の胃袋に消えた。

 二人分食って食い過ぎた。

 眷属契約で腹ごなしだ。


「120点」


 なんの点数なのかは、言わない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る