第42話 クライマックスと、解説と、ねぎ焼き餃子風

 今日は墓場に繋いだ。

 そして、カボチャのツルを出してみた。

 そうしたら、ホラー映画のクライマックスみたいに地面が盛り上がった。


「なんじゃこりゃあ」


 慌てて畑に戻る。

 スケルトンの大群が現れた。

 やばい、街の人に迷惑が掛かる。


 家に駆けこみ回復のバスタオルを持って戻る。

 境界から手近にいたスケルトンにバスタオルを掛けると、崩れ去った。

 満足した顔が宙に浮かぶ。


 全部を成仏させるのは骨だな。

 ダジャレじゃなく本当にそう思う。


 そうだ、カボチャはどうなった。

 カボチャのツルをみるとスケルトンが群がっていた。

 これを餌に使えば。


 気分は釣りだ。

 カボチャのツルを投げてスケルトンを引き寄せる。

 そして、成仏させる。


 ダンジョンモンスターにする事も考えたが、これ以上養う人数が増えるのは勘弁してほしい。

 増えるのは欠員の補充程度で良いんだ。


 スケルトン釣りを何度もすると次第に慣れてきた。

 二つのツルを操る余裕さえある。

 だが、生ったカボチャの実が傷ついたり、もげたりするんだよ。


 ごめん。

 カボチャに謝った。


 スケルトンの大群は徐々にへり、最後には居なくなった。

 カボチャのツルを出したままだと、またスケルトンが増殖する。

 そう思いカボチャのツルを引っ込めた。


「何やっているの?」


 才華が起きてきて寝ぼけまなこを擦りながら言った。

 眼鏡かけてない顔は可愛いな。

 コンタクトにしないのだろうか。


「カボチャのツルを墓場に出したらスケルトンが増殖したんだ。その後片付け」

「見たい! スケルトンが産まれる所。待って、眼鏡取って来る」


 才華が眼鏡を掛けてきたので、ツルを投げる。

 しばらく待ったがスケルトンは現れない。


「あれっ、さっきまでは沢山出て来たんだよ」

「疑ってないわよ。物事には限界というものがあるのよ。無限という言葉は容易いけど、宇宙すら無限ではないわ」

「限界が来たのかな」

「スケルトンの発生は魔力だけではないという事ね。ナノマシンは機械だから、人間の様な動きは難しいわ。そこから推測するにアンデッドは人工知能の役割をするものが関わっているはず」

「思考する脳みそが要るわけだ。何だと思う」

「たぶんだけど思考パターンね。死んだら魔力が思考パターンをコピーするのよ」

「魂じゃないんだね」

「ええ、脳のニューロンの動きと電気信号の代わりを、魔力がするに違いないわ」


「回復魔法でアンデッドが倒されるのはどうしてだと思う」

「回復魔法は細胞を正常化する力だわ。癌細胞が治るのはその為よ。アンデッドの状態は正常じゃないって事ね」


「おっ、スケルトンが産まれそうだ」


 土が盛り上がるのが見えた。

 ほどなくして、スケルトンが現れた。


「骨を利用しているのは何でかしら。金属が関係しているのかも。骨にはカルシウムが含まれるから」

「その説だと、鉄とかがアンデッドになりそうだ」

「なる可能性もあるんじゃない。呪いの剣とかありそうだわ」

「あるかもね」


 ツルにスケルトンが引き寄せられたので、バスタオルで成仏させてやった。


「顔が見えたわね。やっぱり思考パターンが入っているのね」

「俺は魂でも良いかもと思ったりする。その方がロマンがあるだろ」

「非科学的だわ」


「じゃ、朝食にするか」


 今日の朝飯は、ねぎ焼きだ。

 朝からこってりいく。

 肉体労働だからな、がっつり食わないとパワーが出ない。


 小麦粉を溶いて、ねぎを入れる。

 さて何を入れようか。

 サクラエビを入れちゃうか。

 天かすも入れてと。

 貰ったニラがあったな。

 それと肉だ。

 豚肉で良いだろう。

 こんなもんで良いか。


 ホットプレートで焼くと、餃子みたいな匂いがした。

 よし、タレは醤油と酢とラー油だ。

 ねぎ焼き餃子風、いっちょ上がり。


「よし、食うぞ。頂きます」

「頂きます」


「はふはふ。うん、ねぎ焼きと餃子の中間だな。割合といける。朝からビール飲んじゃうか」

「スタミナ満点ね」

「よし、食べたら、運動しよう」

「もう、えっちな目つきして。駄目よ、これから私は仕事だから」

「ちぇっ」


「キスだけで我慢して、夜には眷属契約してあげるから」


 濃厚なキスをした。

 キスは餃子の味がした。

 ムードがないな。


「やり直しを要求する」


 アイスクリームを出してきて食った。

 バニラ味のキスをする。

 これなら合格だ。


 行ってらっしゃい。

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