第41話 世界樹の回復と、魅了と、ごまだれ素麺

 今日はカボチャのツルをクルームの所に出す事にした。

 シイタケが余っているんだよな。

 エイザークの所に毎日50本ぐらい持って行っているけど、収穫はそれの何倍もある。

 栽培キット100セットは多すぎたか。


 食いきれない。

 シイタケでおすそ分けスタンピードを起こした。


「キノコか。我らも良く食すぞ」

「食いきれないんだよ。毎日もってくるから」


 そして、手に持っているツルを展開する。


「これは何だ?」

「カボチャのツルだよ。実の小さいのが生っているだろ。あれが熟したら食うんだ」

「ツルを出すと何か良い事があるのか?」

「エルフの森が豊作になる」

「本当か? 誰か、世界樹の様子を見に行って来い」

「はい」


 エルフがターザンの様にツルを使って森の奥に消えていく。

 クルームと少し話をしていたら、さっきのエルフが戻ってきた。


「世界樹が少しずつ回復しています」

「恩がまた増えたな。どうやって返せば良い?」

「気にするなよ。友達だろ」

「そうだな、友よ」


 でも何か考える必要があるかもな。

 植物成長と迷い魔法の杭は役に立っている。

 これだけでも十分だが。

 目下の悩みの種は裁判だ。

 待てよ。

 印象を良くするのは別に良いよな。


「精神魔法を最大出力で掛けると何日ぐらい持つ?」

「3ヶ月は持つな」

「良い人に見えるというのは出来るか?」

「もちろん出来るぞ」


 勾留期間は20日と聞いている。

 伝手があるからすぐに裁判が始まるはずだ。

 3ヶ月あれば問題ないだろう。

 保釈が認められる場合もあるし。

 大丈夫だと思いたい。


「じゃ、やってくれ」

「しばし待て」


 エルフが200人ぐらい集まってきた。

 村の人間が全員いるんじゃないか。


 境界にブレスレットを持って立つ俺に向かってエルフ達は手を突き出した。


「【大魔法起動、精神魔法、魅了】」


 クルームの指揮の下、魔法が始まった。

 凄いな。

 儀式魔法という奴か。

 200人分の魔力がこもったブレスレットを撫でた。


 良い人っぽく見えているのかな。

 極悪人顔でもないから、あまり変わらないかもしれないが、打てる手は打っておくに限る。


 シイタケで何度がおすそ分けスタンピードを起こす。

 在庫一斉処分だ。

 世界樹も見に行った。


 回復しているのかどうかは分からない。

 前に見た時より、心なしか枯れ枝が少なくなったような気がする。


 みんなでシイタケのスープを作った。

 キノコの出汁が出ていて旨い。


「このスープを飲むと魔力が回復するぞ」


 エルフが騒ぎ始めた。

 地球の栽培キットから出たシイタケだからな。

 魔力を沢山含んでいるのはそのせいだろう。


 儀式魔法の回復になっていれば嬉しい。


 あと、何か裁判までに出来る事がないかな。

 洗脳みたいな魔法もあるんだろうけど、それを使うのは嫌だな。


 取り調べがだるいな。

 はいはい、頷くだけの仕事だ。

 眠っていても起きているみたいな事ができないかな。

 そうすればストレスを感じないし。

 ストレスを感じると体調が悪くなる病気は治ってない。

 取り調べ中でも病院には入れてくれるだろうけど、ならなくて済むならそうしたい。


「クルーム、夢遊病みたいな状態に出来ないかな。相槌を返すだけで良いんだ」

「精神魔法で可能だ。催眠術みたいな状態になるけど良いのか?」

「良いんだ」


 暗示の魔法も掛けて貰った。

 取り調べスタートというと、意識が無くなって、相槌を打つだけの存在になる。


 これで準備は良いな。


 さあ、帰って昼飯を作ろう。

 今日は素麺だ。

 まず、用意するのは素麺。

 手早く茹でて洗って冷やす。


 そして取り出したるは焼肉のごまだれ。

 これに麺つゆをブレンドして出来上がり。


 よし、食うぞ。

 タレに素麺を付ける。

 そして口に運んだ。

 広がるゴマの香りとコク。

 そして、ニンニクの香りと味。


 シンプルだが、美味いぞー。

 これぞ男料理。

 手間かけずに美味く食う。


 追加で薬味にキュウリを千切りにして、やはりタレに付けて食う。

 キュウリのシャキシャキ感も良い。


 そうだ。

 縁側から庭に出て紫蘇の葉を摘んで来た。

 紫蘇は作物ではない。

 雑草の如く勝手に生えてくるのだ。

 雑草ではないから抜かないので、余計に増える。


 梅干し作りとか薬味に重宝する。

 紫蘇を加えたら、またタレの風味が変わって、素麺が美味い。

 ねぎもあるけど、今回は良いだろう。


 心の赴くままに料理して食う。

 素晴らしい事だ。

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