第40話 ダンジョン焼き畑と、焼肉と、眷属契約

「植物魔法に急成長させる物はないのかな?」


 俺はクルームにそう話し掛けた。


「あるぞ。使うと不毛の地になるので、滅多に使わないが。植物で拘束する時などには重宝する」


 やっぱりな。

 そんな事だと思ったよ。

 土が痩せたら、土を召喚するのは良い。

 痩せた土は送還できるのか。

 出来ないに賭けたくなってきた。

 オークを総動員しても、土が産廃になって、結局また金が掛かる。


 何でこんなに上手くいかないんだ。

 日本にダンジョンがこんなに馴染まないとはな。


 クルームの所から帰ると才華が起きていた。


「土の召喚だけど、痩せた土を送還出来ないんだ」

「ダンジョンの組み換えは出来るのよね」

「たぶん」

「畑が駄目になったら、放棄してダンジョンの組み替えよ」

「まるで焼き畑だな。ダンジョン焼き畑」

「いいんじゃない。迷惑掛からないし」


 やってみるか。

 クルームにまた会って、杭に植物成長の魔法を掛けて貰った。

 オークダンジョンの一室で大豆を撒いて、杭を打った。


 瞬く間に大豆が実る。

 オーク達が収穫する。


「ダンジョン焼き畑」


 今まであった部屋が消えて、新しい部屋が出来た。


「召喚、豆栽培に適した土」


 部屋に土が敷き詰められた。

 大豆を撒いて、また促成栽培する。


 こんな簡単でいいのか。

 食費は助かるけども。


 次は麦をいってみよう。

 麦や蕎麦や米を収穫する。

 脱穀はオークに手作業でやって貰おう。

 食費は浮くようになったな。

 あとは肉とか魚とか玉子とかだけだ。

 卵と肉はニワトリを飼う事にしよう。


 こんな簡単ならもっと早くやっていれば良かった。


「マスター、オークダンジョンの魔力が足りません」


 豚平とんぺいがそう言ってきた。

 解決策ならある。

 カボチャのツルを引っ張ってオークダンジョンにいれた。


「チャージ開始」


 カボチャの葉からキラキラと魔力が出る。

 あとでアンデッドダンジョンもチャージしておこう。


 オークがもしゃもしゃ食っているから、何だと思ったら、脱穀してない米を食っていた。

 モンスターだって忘れていたよ。

 脱穀なんか必要ないんだな。


「マスター、二十日大根が収穫できます」

「そういやそんなのも植えたな。今となっては要らないな。サラダ用に少し持って帰るか。残りはみんなで食え」

「はい」


 お土産に二十日大根を持って、オークダンジョンを後にした。

 放棄されたダンジョンの部屋はどうなるんだろう。

 たぶん異世界の地中に埋もれるのだろう。

 気にする事はないか。


 日常の日課をこなし、またクルームの所に繋ぐ。


「植物成長の魔法は役にたった。お礼をしたい。受け取ってくれ」


 俺はエリクサーを渡した。


「この豆はもしや、エリクサーか」

「ポーション瓶には入ってないが、そうだな」

「豆はエルフにとって大事な食べ物だ。豆の形のエリクサーとは気が利いている。ありがたく受け取っておこう」


 今日の1品が決まった。

 インゲン豆のサラダだな。

 茹でたインゲン豆にキャベツとレタス。

 それに二十日大根とキュウリのスライス。

 ドレッシングは市販のだが、素材が良いから美味しいだろう。


 それと、メインは焼肉にするか。

 食費が浮いたので、これからはリッチな生活が出来る。


 スーパーに行って霜降り和牛を買った。

 サラダを作って肉を焼き始めると、才華が帰って来た。


「いい匂いがするから、どこの家だと思ったら、ここだったのね」

「問題が一つ片付いたからお祝いだ」


 肉を噛むと肉汁が口の中に溢れた。

 付け合わせのレタスを食う。

 焼いたピーマンも食った。


 うん、美味いな。

 幸せだ。

 才華はあまり嬉しくなさそう。


「焼肉嫌いだったか」

「ううん、食べ慣れているのよ」

「そうだよな。公務員は給料が良さそうだ」

「私、特許をいくつか持っているから」


「金持ちなのか?」

「ええ、長者番付に載るけど、上位ではないわね。年収は1億を超えています」


 物凄い敗北感に襲われた。

 そういえば化粧品も高そうだったし、ノートパソコンも高いモデルだった。

 靴も高級そうな革だったな。

 時計も携帯も思い起こせば高い奴ばっかりだ。


 憮然として、サラダを食う。


「サラダ美味しいわね」

「有機無農薬野菜だから」

「さすが専門家ね」

「俺は畑を取ったら何にも残らない男なんだ」

「ダンジョンと異世界があるでしょ」

「あんなのは、偶然手に入っただけだ」

「今夜も眷属契約してあげるから。誇りなさい、私を眷属にしているのよ」

「そうだね」


 この後、滅茶苦茶、眷属契約した。

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