第39話 朝飯と、エリクサーと、その効果

 朝になった。

 昨日丸1日、エイザークの所にカボチャのツルを出したままだ。


「おはよう」


 エイザークに挨拶する。


「いい朝だ」

「おはようございます」


 エイザークとアルカナが迎えてくれた。

 二人とも早起きだな。


「どのぐらいの魔力がそっちに行った?」

「およそ、9千万人分の魔力ですね。量が多そうですが、世界規模で見ると微々たる量です」


 微々たる量か。

 たしかにツルを伝わって流れる分だからな。

 こんな物だろう。

 毎日コツコツとやっても世界破滅の延命には程遠い。


 来年のカボチャの作付けを4倍ぐらいには増やせられる。

 でもそれじゃ駄目だ。


 境界に葛を植えよう。

 100本ぐらいは余裕のはずだ。


 でもそれでも足りない。

 才華に相談したいな。


 目玉焼きを作ってキャベツの千切りの上に乗せた。

 納豆をかき混ぜる。

 目刺しを焼いて、味付け海苔を用意。

 キュウリの浅漬けを冷蔵庫から出して、ツルムラサキの味噌汁を作って朝食が出来た。

 才華が起きて来る。


「おはよう」

「おはよう。ここの朝は清々しいわね」

「田んぼと川があるから、水で空気が冷やされるんだ。クーラーが苦手なのでここを選んだ」

「自然のクーラーというわけね」

「まあな。さあ食べよう。頂きます」

「頂きます」


 納豆をどばっとご飯の上に掛けて、かき込んだ。

 最近の納豆はタレの研究しているから、どこの奴でも美味い。

 キュウリの浅漬けをポリポリと齧る。

 歯ごたえといい味といい美味いな。

 乳酸菌が良い仕事している。

 味噌汁をずずっと飲んで、目刺しをパクパク頭から齧る。

 目玉焼きに今日は醤油を掛けて、キャベツと一緒に食べた。


 才華と朝飯の会話にさっきのアルカナとの話をした。


「魔力を消費するのがいいかもしれないわね。地球の魔力が余っているのは使ってないからだわ。素粒子だとしたら体積は小さいから凝縮するのもいいかもね。ダンジョンってアイテムを作り出せるのよね?」

「そうだね」

「じゃあエリクサーみたいなのをバンバン作りましょう。きっと魔力が凄く使用されているはず」


 アイテムってどう作るんだ。

 ダンジョンメイカーの知識はないが、召喚は出来たのだから作れるはずだ。


 畑の真ん中でエリクサー出来ろと念じる。

 光が凝縮して、畑のインゲンの所が光っていて、光る莢があるのが分かった。


 莢を取ると、豆が膨らんでいる。

 莢から豆を取り出した。

 光る豆が手の中にある。


 これがエリクサーか。

 どんな病気も治るんだよな。

 こんなの地球では使えないぞ。

 どうする?


「ちょうだい」


 才華が媚びるように言う。


「分かっていると思うが気をつけろよ」

「どんな病気も治るエリクサーなのよね。研究するだけだから、外部には出さないわ」


 才華はエリクサーを受け取ると、早足で去って行った。

 どんな分析結果が出る事やら。


 収穫するはずだったインゲンを全てエリクサーに変えた。

 さて、エイザークとクルームの所に後でいくつか持って行くとして、頻繁に持って行くと迷惑だよな。

 過度のおすそ分けは嫌われるもとだ。

 しかし、なんでエリクサーが豆なんだろうな。


 香水みたいなガラス瓶に入ってるのが普通だろう。

 イメージの問題か。

 俺が畑でエリクサーが出来るはずないと思っているのだろうな。

 すっごい豆なら出来ると深層意識で思っているのかも知れない。


 でもなぁ。

 落ちが見えるんだよな。

 たぶんエリクサーでも100万人分ぐらいの魔力しかこもってないって。


 くそう、魔力が結晶化すれば良い。

 結晶を作る野菜なんてない。

 甘い実をつけるのはあるけど、実に魔力を込めたぐらいでは、大した事がないんだろうな。

 上手く行かないものだ。


「エリクサーって要る?」


 エイザークに聞いてみた。


「我らは物乞いではないぞ。対価が払えん」

「そうだよね。そんな気がしてた。ラスボスのドロップ品だものな」


 うーん、対価ねぇ。


「魔力結晶化の技術とかどう?」

「魔力炉が欲しいというわけか。エリクサーの対価としては釣り合うぞ」

「持って来られないから、要らないよ」


 魔力炉か。

 地球にそんなのを作れば滅亡回避もできるのかな。

 ふと、骨造ほねぞうなら作れそうな気がした。


 よし、相談してみよう。

 境界を切り替えた。


骨造ほねぞう、相談がある」


 そう言うと、しばらくして骨造ほねぞうが現れた。


「殿、御用ですか?」

「畑に魔力炉って作れる? 魔力をじゃんじゃん結晶にしたいんだけど」

「材料があれば可能ですな」

「そうだよね。材料がないと始まらない」


 くそう、上手くいかないな。

 結局、無理って事か。


 畑の世話と心霊治療とかをやりながら考えたが良い案は出なかった。

 晩御飯の時間になって才華が帰ってきた。


「エリクサーは謎ね。成分分析では完全に豆そのもの。発光メカニズムが分からない。放射能とかではないから安心だけど」

「病気に対する効力は?」

「マウスの病気は全部治ったわ。まだ調べてない病気もあるけど、たぶん治ると思う」

「効力があり過ぎて使えないか」

「欠損も治るから、世間に流すとやばいわね。虫歯の治療跡とかきれいに治るんじゃないかしら」

「こっそり使うとすぐにばれるな。虫歯の治療している人は多いから」


 結局、やばいって事ね。

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