最強の家庭菜園ダンジョン~最強のダンジョンとは準備期間のダンジョンだ。入口がなければ攻略出来ない。俺のダンジョンは永遠に準備が終わらない。畑に終りなんてないからな~
第32話 ゲソコンと、才華と、ジャガイモのオムレツピザ風
第32話 ゲソコンと、才華と、ジャガイモのオムレツピザ風
Side:刑事
「どうです。ゲソコンは出ましたか」
俺は現場の神社の森で、鑑識の主任に話し掛けた。
「多すぎて、客と区別がつかないな。こりゃ、照合作業は骨が折れるぞ」
「今日来た客の名前は全て控えています」
「それなら、時間の問題だろう」
「靴のメーカーが割り出せたとしてそこからがまた大変です。売っている店を回って調べないと」
「主任、見て下さい。自転車のタイヤ痕です」
鑑識の人間が得意そうに、石膏で固めたタイヤ痕を見せた。
「でかした」
やったぞ。
自転車なら持ち主を特定するのは容易い。
なぜなら、防犯登録があるからな。
これとゲソコンを合わせれば、ホシを絞り込めるな。
ただ、確たる証拠がない。
指紋でも出れば一発だが。
「先輩、松ぼっくりを配っていたという証言が多数あります。これから辿れるのでは」
「そうだな。ネットとかで注文したなら、特定できるだろう」
犯人の髪の毛でも落ちてないか。
いや、偶然だと冤罪になる可能性もある。
そういう事は鑑識さんに任せよう。
俺は署に戻って報告書を待った。
しばらくして、自転車のメーカーは分かったし、買った人間のリストも手に入った。
これを持って事情を聴きに行って平気だろうか。
不思議な力を使う犯人だ。
奇想天外な手を使わないだろうか。
自首を薦めに行って、その後は迷うようになった。
捜査も不思議な手で攪乱されたりしないだろうか。
足で稼いでいくしかないか。
「おい、掲示板に余計な事を、書き込んだ奴は分かったか?」
俺は後輩に尋ねた。
「警察から客が事情を聴かれているのを知って、書き込んだそうです」
「警察内部じゃなかったか。不祥事じゃなくて良かったよ」
「ですね」
「自転車の線を当たるぞ」
「はい、先輩」
俺達は自転車の持ち主らに会った。
どの人物も怪しさの欠片もない。
刑事の勘が違うと言っている。
さりげなく靴も見たが、ゲソコンから割り出した犯人の靴を持っている人物はいない。
何か見落としがあるのか。
「先輩、県外で自転車を購入したって線はないですか?」
「あるな」
「だとしたら厄介ですよ。数が多くて、署の人間を総動員しても調べられない」
「分かってる」
やっぱり不思議な力の謎を解かないと駄目か。
掲示板では超科学とオカルトの二つに分かれていたな。
犯人は魔法だと書き込んだらしいが、嘘かも知れん。
超科学だと組織ぐるみだ。
それこそ国家規模のな。
だが、刑事の勘では単独犯だ。
Side:才華
私は才華、警察官で、仕事は鑑識です。
ふふふっ、見つけましたよ。
松ぼっくりの指紋を繋ぎ合わせAIで補完して、一つの指紋を作り上げました。
指紋の破片のパズルもAIにかかれば容易い。
馬鹿ですね。
手袋を使わないなんて。
さてこの指紋のデーターはコンピューターから削除しておきましょう。
なぜかって?
この人物はおばあちゃんの命を救ってくれたからです。
こういっては何ですが私は天才です。
医師免許も弁護士資格も博士号も持っています。
おばあちゃんが病気に倒れた時に必死になって治療法を探しました。
ですが、見つかりません。
悲嘆にくれた時に心霊治療で治ったという嘘のような報せが来ました。
悔しかった。
人生で初めて負けたような気がしたのです。
それと同時に会ってみたいと強く思うようになりました。
恋かも知れません。
この気持ちの正体を暴きたい。
そして、彼の正体も。
いったいどんな科学的なアプローチでおばあちゃんを治したのか聞きたい。
さて、どこから彼を突き止めましょうか。
防犯カメラは駄目ね。
今のところ犯人の乗っていた自転車は防犯カメラに映ってない。
でもね。
罠を仕掛ける事は出来るんですよ。
紫外線に反応する塗料とかね。
自転車にこれを踏ませれば良い。
捜査でないのなら、どんな手も使えるのです。
光学迷彩を使っても、
通り道にレーザーのセンサーを付ければ、横切った時に発信機を取り付ける事も。
取れる手は限りなくあります。
待ってなさい。
まだ見ぬ彼。
Side:創太
今日は失敗した。
自転車でスーパーに買い物に行ったら、久しぶりの買い出しだったので、買い過ぎてしまった。
そうしたら、あまりの重さに自転車を倒してしまったのだ。
くそっ、玉子が安売りでも、割れちゃったら意味がないじゃないか。
買い物袋の中は玉子でぐちょぐちょになっている。
大半が密閉してあるから、拭けば問題ないけど。
気分が最悪。
気分を取り直そう。
玉子は割れたけどプラスチックの容器の中には残っている。
しょうがない。
適当に料理を作るか。
スライサーで千切りしたジャガイモをフライパンに敷き詰める。
溶いた玉子に塩と胡椒で味付けしたのを流し込む。
ピザ用チーズを上に乗せて、ケチャップで味を調えれば、何だろね。
ジャガイモのオムレツピザ風かな。
ビールのつまみには、まあまあだな。
失敗した気分が少し和らいだ。
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