第24話 異世界の繋がりと、偽牛丼と、ナスチーズグラタン

 夜中じゅう、雨が降って涼しく寝られた。

 今朝は快適な目覚め。

 朝早くに雨は上がったようだ。


 あと何時間かして野菜に付いた水滴が乾いたら、農作業をしよう。


 やっておく事がある。

 お供え無しで配下のダンジョンに繋げる事だ。

 ナスを思い浮かべて、オークダンジョンに繋がれとやると、見慣れたオークダンジョンの入口が見えた。

 インゲンを思い浮かべると、アンデッドダンジョンに繋がる。

 ここまでは良い調子だ。


 インゲンをお供えして墓場を思い浮かべる。

 やった、墓場に繋がった。


 エルフの領域にも繋げたが、ダンジョンと違って、お供えしないと繋がらない。

 ドワーフの所もだ。


 ダンジョンでない場所に繋ぐのはお供えがないと駄目みたいだ。

 俺の心がそう思い込んでいるだけかも知れないが、出来ないものは仕方ない。


 インゲンをお供えして、猫車に麺つゆのキュウリ漬けを沢山積んだ。

 乾燥ナスと、ヤーコンの葉の乾燥したのと、玉ねぎの皮もだ。

 ミニトマトがまた40個ほど採れたので、それでおすそ分けスタンピードを起こす。


 アンデッドはいないようだな。

 アンデッドを見かけたら、骨造ほねぞうを呼んで欲しいと言っていた。

 ダンジョンモンスターにしたいと言っていた。


 オークとアンデッドは眷属なので、説得に成功すれば、ダンジョンモンスターにできるらしい。

 平和な事でなによりだ。


 街に10円玉を払って入る。

 足税を猫車の分取られたが、すんなり入れた。


「あっ、おじちゃん」

「よし早速、麺つゆを保管できるようにするぞ」


 鍋に麺つゆを入れてキュウリのスティックを取り出す。

 キュウリのスティックを齧ると、甘辛く浅漬けになっていた。

 濃縮麺つゆの原液だったが、別に問題はないな。

 ただ、時間が短いので、漬物と呼ぶにはちょっと物足りないが。


 鍋の麺つゆを沸騰させて殺菌する。

 殺菌が終わったら、元のペットボトルに戻した。

 これで何ヶ月かは保存できるだろう。


 麺つゆの殺菌にかなり時間が掛かった。

 見るとユークスは、キュウリの麺つゆ漬けを、1つ銅貨1枚で売っていた。


 ヤーコン茶と玉ねぎ茶を作る。

 ヤーコンと玉ねぎのお茶はあまり美味くないが、健康には良い。

 銅貨1枚で売るにはちょうどいいだろう。

 味はヤーコンの方が少し渋みがある。

 渋みがお茶の雰囲気があってそれなりだ。


 玉ねぎの皮は、玉ねぎスープを薄くした味で、ほんの少しだが微かな甘味がある。

 出来立ては美味そうな匂いがする。

 あまり時間をおくと少し臭い。

 作って出来立てを売るには良いと思う。


 ユークスはヤーコン茶を飲んで苦々しい表情になった。

 美味くないのは分かるよ。

 子供向けの味じゃないからな。


 玉ねぎ茶はユークスも気に入ったようだ。

 ごくごく飲んでいた。


 偽牛丼を作る。

 取り出したのは乾燥ナス。

 ナスを切って乾燥させた物だ。

 作ったのは1年前。


 これを水で戻して、麺つゆと玉ねぎに似た野菜とキノコと煮る。

 煮えたら、偽牛丼の完成だ。

 乾燥ナスの食感が牛丼の肉に似ているそうだ。

 食ってみた感じはそんなでもないが、まあまあには食える。


「これ、美味しいけど、露店では売りづらいね」

「そうだな、汁が垂れるし。和風だからな」


 何か良い物はないかな。

 甘くない、小玉スイカの皮みたいなのを売っている。

 これを器にしよう。


 ユークスと相談して、果物に偽牛丼を盛りつけた。

 場違い感があるが、気にしない。

 米を持って来ても良かったのだが、パンの分化の人には、受けないのではないかと思って辞めた。


 小玉スイカの皮に麺つゆが染み込んで意外に美味い。

 ユークスも食べて、頷いた。

 どうやら合格のようだ。


 帰りに墓地でスケルトンを見つけた。

 よし、捕獲するぞ。


「そこの君ダンジョンで働いてみないか」

「カタカタカタ」


 何を言っているか分からない。


骨造ほねぞうさん、出番だ」


 しばらくスケルトンはカタカタ言っていたが、頷いて消えた。


『殿、成功しました』


 念話があった。

 念話なら下級のスケルトンに通ずるんだな。


 オークを仲間に入れたいのなら、オークでスタンピードを起こして迎えに来てもらわないといけないな。

 それとも話をしただけで説得に応じてくれたりするのだろうか。

 その時になってみないと分からない。


 日本に帰って来ると、また雨が降り出していた。

 今日は振ったり止んだりかな。

 梅雨明け宣言がでたけど梅雨に戻ったみたいだ。


 雨の涼しい日には暖かい食べ物を食べよう。

 ナスのグラタンを作ろう。

 ナスとミートソースの素を入れて、チーズをたっぷり上に掛けて、オーブントースターで焼く。

 チーズの焼ける匂いが漂ってきた。

 ぐつぐつと煮えているのが分かる。


 もういいかな。

 グラタン皿を鍋掴みを使って取り出す。

 フォークでチーズを突くとトロリと溶けていた。

 ミートソースを絡ませ口に入れる。

 ミートソースとチーズのダブルこってりが良い感じだ。

 ナスにフォークを刺してソースとチーズを絡めて口に運ぶ。

 ナスのさっぱりした淡白な味とソースとチーズがいい塩梅あんばいだ。


 ビールを開けてぐびぐひと飲む。

 ぷはぁ、美味い。

 あとでオーク達にもグラタンを振る舞ってやろう。

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