第23話 ダンジョン戦と、雑草と、カルビ丼

 ダンジョン戦はどうなったかな。

 インゲンをお供えして暗闇空間に切り換える。

 おー、骨人間がびっしりいるな。

 剣や鎧を装備した奴までいる。

 一番偉そうなのは骨の馬に乗っていた。


 意思疎通できないかな。


「話し合いたい」


 馬に乗った骸骨騎士が進み出た。


「結界を解け。尋常に立ち会え。いざ勝負」


 骸骨騎士いきり立っている。

 会話になりそうにない。

 放っておくと何時までも居付きそうだ。


 こいつら、何を食うんだろうか。

 いや食わないのかも知れない。


 やっぱりタオルを使って始末する手かな。

 俺はイボ竹の先にタオルをつけて突き出した。

 スケルトンの一人が浄化された。


「おのれ、卑怯な」


 骸骨騎士が駆け付けて来る。

 イボ竹とタオルが剣で斬られそうだ。

 俺は慌てて引っ込めた。

 埒が明かないな。


 こいつら、味は感じたりしないだろうな。

 光や音は反応するようだから。

 もしかしたら匂いに反応するかも知れない。

 境界近くにのあぜに生えているドクダミに目がいった。

 ドクダミの臭さでこいつら逃げないかな。


 ドクダミを千切ってスケルトンの群れに向かって投げつけた。


 スケルトンの様子がおかしい。

 境界から離れていく。

 匂い作戦成功か。

 剣や鎧を身に着けたスケルトンは退く様子がない。


 強いと匂いにも耐性があるのか。

 ドクダミがなくなったので、雑草を投げる。

 草むしりだと思えば、作業が無駄になっても苦ではない。


 あぜの草はむしらないといけないと思っていたんだよな。

 良い機会だ。

 どんどんいくぞ。

 スケルトンの事を忘れ、草むしりに精を出した。


 気が付くと骸骨騎士がひざまずいている。


「殿。お下知を」


 えー、雑草を与えると味方になっちゃうのか。

 なんという安上がり。


「雑草はどうした?」

「草なら精気と魔力を吸い取りました。何か不味かったでしょうか」

「枯らしてくれた方が良い。雑草はしつこいんだよな。抜いて地面放置すると根付く。腐らせないといけないんだが、手間だ。助かるよ」


「助かるなどという暖かいお言葉」

「雑草はまだあるから、ダンジョンにお土産として持ってかえってやれ」

「誠心誠意、事に当たります」


 スケルトンは精気と魔力を食うのか。

 だから生きている者を襲うんだな。

 さあ、あぜの雑草を全部引き抜くぞ。

 草刈り機は使わない。

 根が残るとまた生えてくるからだ。


 エンドレスはなんとなく嫌だ。

 根源をやらないとな。


 除草剤も使わない。

 雨が降ると畑に流れ込むかむ知れないだろう。

 それは嫌だ。

 やっぱり手で抜くのが一番だ。


 草刈り鎌で地面を掘り起こし、雑草を抜いていく。

 ふう、暑い。

 周りは暗闇だが、上の空は日本の物でさんさんと太陽が照り付けている。

 3時間も掛かってあぜの雑草を全部始末した。


 ついでに地蔵様の周り掃除しておいた。

 カルビを召喚するぞ。

 こんだけ働いたんだから良いだろう。


 どんぶりにご飯を敷き詰めて、薄く切った生の玉ねぎを敷く、その上にカルビの焼肉を乗せてタレをどばっと掛けた。

 ご飯と玉ねぎ肉を一緒に頬張る。

 ご飯には焼肉のタレが染み込んで、甘辛い味とニンニクの味で美味い。

 生の玉ねぎはシャキっとした食感と辛みと甘味を伝えてくる。

 肉は肉汁とタレがミックスして、肉汁と濃厚な味に仕上がっている。


 噛むとそれらが一体になって、何とも言えない極上の味を奏でる。

 労働した体にこってりとした料理が染み込んでいくようだ。


 いつのまにか、背景は石の入口に変わっていた。

 豪華なゆったりとした衣装と杖を身に着けた骸骨が歩いてくる。

 俺は縁側からサンダルを履いて迎えに出た。


「初めてお目に掛かります。王よ。私が、前のダンジョンマスターのリッチです」

「ご苦労様。ミニトマト食べる?」


 俺は畑からミニトマトをもぎって与えた。


「頂きます」


 リッチがミニトマトを手に取ると、それは干からびて塵になった。


「名前はあるのか?」

「ございません」

「そうだな。骨造ほねぞうを名乗れ」

「名前、賜りました」


「魔法が得意そうだな。頭の中に言葉を伝える魔法ってあるか?」

「念話ですな。精神魔法です。私も使えます」

「永久的に使いたいから魔石が良いな。そういうのを持ったモンスターはいるか?」

「おります。いくつかおりますが、私どもの眷属だとシャドウが稀に出します」


 あるのなら、エイザークになんとかしてもらおう。

 インゲンを供えて、アンデッドダンジョンに繋がると、ユークスに会えない。

 墓場に繋がって貰わないと。


「そこにある。神様にインゲンをお供えするとアンデッドダンジョンに繋がるんだ。元は墓場に繋がっていた。なんとかしてほしい」

「見てみます【鑑定魔法】。ふむ、お供えは切り換えスイッチのようです。ダンジョン戦を別にすると、ダンジョンをどこに繋ぐかはダンジョンメイカーの権能になります。お供えは心理的な物で、あなた様にその能力があるようです。配下のダンジョンに好きに繋げられないなんて事はありません」


 俺の心持ち次第なのか。

 骨造ほねぞうが帰ったら試してみよう。


 アンデッドの食い物は生の野菜か。

 いくらでも召喚できる。


 食料はそれで良いとして、アンデッドがやる畑も考えないと。

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