流星が連れてきた場所

流星兄さんは、やっと俺から離れてくれた。


「送るよ」そう言われて立たされた。


腕を引っ張られて連れて行かれる。


ひかるもどこかに連れて行かれようとしている。


星が、俺を呼んでくれる。俺も星を呼ぶけど…。


どんどん引き離される。


手首をすごい力で掴まれていて、振り払えない。


星が、小さくなっていく。


体に力をうまくいれられないせいで、踏ん張ろうとしてもすぐに引っ張られていく。


胸が痛くて、苦しくてたまらない。


愛してるけど、一緒にいれない。その言葉しか流星兄さんに思えないのが辛い。


俺は、星とのさっきのキスが楽しかった。


俺の半年間を支えてくれたのは、星で…。


星といると楽しくて、そこまでのドキドキ感はないけど、穏やかでいれる。


でも、今はどうだろうか?


流星兄さんに、掴まれて歩いてるだけで胸が苦しくてたまらない。


もう、ここをあげるから許して下さいと言いたくなってしまう。


苦しくて、悲しくて、辛い。


二人で居ても、安らげる日がないのがわかる。


車に、乗せられてしまった。


無言で車が走っていく。


どこに行くのだろうか?


しばらく走ると車は、止まった。


「懐かしいだろ、ここ」


「なんでここ?」


それは、久しぶりの実家だった。


「今は、誰も住んでないから」


「えっ?」


「4ヶ月前、父さんも母さんも引っ越したんだ。」


病院とくっついていた家だ。


「病院は?」


「移転させてるよ。」


「なんで、ここがあるの?」


「俺が残してもらったから…。時々、掃除するからって」


そう言って、リビングに行く。


胸が苦しくなる、ここでの日々を思い出したくない。


「思い出したくないか?」


そう言って流星兄さんは、ビールを持ってきた。


俺は、うなずく。


「きて」


そう言って流星兄さんに引っ張られた。


「俺のお仕置き部屋」


廊下の一番奥にあった。


「そのまま置いてある」


ベッドだけがただある部屋。


その脇には、母親が使ったであろうメスや縄や手錠?やムチなんかも見える。ホコリが被ってる。


「ずっと使ってないから、ホコリにまみれてるよな。俺の中にはちゃんと残ってるのに」


そう言うと流星兄さんは、また俺を連れていく。


「俺が、月に酷いことしてた場所」


物置小屋だった。


よく見るとベビーベッドやベビーカーも置いてある。


「あのベビー用品は、月のものだよ。」そう言って流星兄さんは、中に入っていく。


ズキズキ胸が痛むけど、俺もついていく。


「このベビーカーは、お年玉で買ったんだよ。あの人達は、月に無関心だったから…。ベビーベッドは、婆ちゃんがくれてさ、この玩具も俺が買ったんだよ」


嬉しそうな笑顔を浮かべて話してる。


「なんで、ここに連れてきたかわかる?」  


俺は、首を横にふった。


「俺はね、ここに来るだけで月に愛されてた事を思い出せるんだよ。」


そう言って、頬に手を当てられる。


「週に二回は、ここに来て物置小屋でお酒を飲む。そしたら、胸の中に月がくれた愛が湧き出てきて俺は、また家族を愛せるんだ。だから、俺には月が必要なんだ。」


そう言って、キスをされた。


ビールを床に落としてしまった。


「こぼすなよ。」そう言って流星兄さんが、ビールを拾った。


「ここでは、キスされたくなかったか?」


嫌そうじゃない、もう流星兄さんに愛をあげれないって伝えなくちゃいけないんだよ。


苦しいから、辛いから、だからもう終わりにしたいって伝えなくちゃいけないんだよ。


言葉のかわりに涙が流れてくる。



「リビングにもどる方がいいね。」


ここでのキスが、嫌だと思われたようだった。


俺は、ビールを飲んで頭がクラクラしてきていた。


ちゃんと言いたいのに、頭が回らない。


なんで、ここに連れてくるの?


「過去の俺とお別れしたいんだよ。」


そう言って、お仕置き部屋のベッドに座らされた。


「月とここで一緒に寝たら、新しい記憶になる気がしてたんだ。」


どういう意味かわからない。


流星兄さんは、俺をベッドに倒してキスをしてきた。


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