おまけ2 陸田はこういうヤツ

 管理人さんが帰ると、多少華やいでいた部屋の空気が秒で“独身男の独り暮らし”に戻った。

 残酷なほどの変わり身の早さ。

 少しくらい余韻があってもいいんじゃないかと思うんだけどね。小さな悲しみに、すんと鼻を鳴らす。


 ぶり返してきた頭痛を、こめかみをぎゅっと押さえて堪えながら、彼女の言葉を思い出した。


『そんなに彼がいいなら……』


 アレはやばかったな……。


 いくら猫に懐かれようが、かわいくてテンション上がろうがな。飼い主さんの前で仲良しアピールなんて、市中引き回しの刑にされてもおかしくない愚行だよ。昔それで友達んちの猫に会わせてもらえなくなったもん。


 猫の飼い主って、嫉妬深いのかな……。


 一緒に寝たのがバレた時の、管理人さんの表情には心底焦った。浮気した恋人を責めるような視線で、ペペロンチーノを見てた。


 ぜんぶ俺が悪いので、彼を責めないであげてください! とフォローする勇気も出ないほどの圧だった。


 けど、猫からしたらそんなのわからないんだろうな。人間の気も知らず、ゴロゴロスリスリ甘えてきちゃってさぁ……ホントかわいかったな。猫って最高だな。酔って記憶なくすなんてもったいないことした。


 つーか……俺めっちゃデレデレしてて、キモかっただろうな。


 以前、休みの日にスウェットに健康サンダルというだらしねえカッコで外に出て、すっ転びかけたことがある。ことがある、というか、よくある。疲れてる。


 で、それを管理人さんに見られたんだけどさ、それはもう冷ややかな視線向けられてたよ。


 ゴミを見るような目ってああいうのを言うのかなあ。あの人、クール系の美人だから迫力あるんだよな。


 そういえば、追い出されはしなかったけど、なんか意味深なことをおっしゃってなかったか……?


『引っ越してもらいましょうか』


 ここまではわかる。

 調子に乗ったら契約切るぞ、だ。

 そのあとなんだよ。


『……陸から海に』

 

 ……。


「うーん」


 俺は海に沈められるのだろうか?


《こんどこそおわり。ありがとうございました!》

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見知らぬ猫と朝チュンしたら管理人さんが凸してきた 神庭 @kakuIvuki

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