第7話 クローズド・ルーム♦️

 (ガラガラ――)


 ……あ、先輩。こんにちは。

 すみません、わざわざお昼休みに呼び出したりして。

 それに、職員室まで行って鍵を借りてきてもらったうえに、この理科準備室のドアを開けてもらったりして……。

 

 ……いえ、むしろご褒美です? 

 ……ハァ、それなら私が気に病むことはないですね。


 ……でも、どうしてこんなことに? そう! それなんですよ、先輩。

 さっきの授業のあと、私、この理科準備室で実験器具の後片付けをしてたんです。

 そしたら先生が、私が中にいることに気付かないで、ドアをロックしちゃったみたいなんです。


 この部屋のドアって特別古くて、鍵がないとロックの開閉ができないじゃないですか? だから、私、困っちゃって……。

 ちょうどケータイを持っていたので、先輩には申し訳ないかな、と思いつつ、お願いしちゃいました。

 本当に助かりました。ありがとうございます、先輩。


 ……え? うちのご主人様にこんなことして、先生に文句を言ってやる?

 あ、いえ! そこまでしていただかなくて結構です! 誰にでも間違いはありますし、できれば、おおごとにしたくないので……。

 ……まあ、君がそう言うなら? はい、私は大丈夫ですので……。


 ……。


 ……そ、そうだ先輩! こうして助けてもらったお返しに、先輩にご褒美あげますよ!

 先輩の利き手って、右手ですか? なら、右手を出してください。はい、手のひらを私の方に向けて……。

 ちょっとそのまま、動かないでくださいね。


(キュ、キュキュキュ)


 ……はい、できた。

 どうです? 手のひらにペンで『奴隷』って書いてみました。けっこう目立ちますね。

 

 先輩、今日の午後はこのままで過ごしてみてください。

 授業もあるし、先輩の場合は放課後、委員会もあるんですよね?

 

 うまく隠さないとその文字、見えちゃいますね?

 左手だったらずっと握っていればいいかもしれませんけど、利き手じゃペンを持ったり、色々しなくちゃいけませんからね。

 気を抜いたら、いつの間にか手をひろげちゃってるかもしれませんよ?

 そしたら、手のひらに『奴隷』なんて書かれてるのがバレちゃって……大変ですよね?

 それが嫌なら、しっかり右手、握って隠しててくださいね? 先輩が見られたいなら別ですが。


 ……どうです? Mな先輩には、こういうの、ご褒美になりませんか?


 じゃあ、ここの戸締まりして教室に戻りましょうか。

 すみませんが、鍵は、先輩の方から職員室に返しておいてもらえませんか? 借りた人が返しに行かないと、変に思われちゃいますから。


(ガラガラ――)


 では、私はこれで。

 本当にありがとうございました。


 ……午後はそれ、バレないように頑張ってください。

 夜にまた、お話しましょうね……?



 それじゃあ、また。 

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