第37話 水族館作戦が最終段階へと移行するまで

「そう……だよな。悪い。確かに反省するよ。昔のことを思えば、文殊みことが俺の事心配してくれるのもわかる。でも、せっかく俺たちを頼ってくれたんだし、渡辺さんの恋を絶対に成功させたい。だから、一旦最後にするから頼んでもいいか?」


「うん、わかった。ってあれ、2人ともどこいったの?」


「先に探そう」


「うん」


 そう遠くはいっていないはずだが、すぐ見失ってしまったな。


「あれじゃない?」


「本当だ」


 2人はそのままどこかに歩いていくらしい。

 もう時刻は5時をまわっている。

 今から行く場所としては一緒にご飯でも食べに行くのだろうか。


「今だったら出来るんじゃないの?」


「すまん」


 俺たちの成果が今、明かされる。


 ……


 あれ……。

 結局結果は変わってねえじゃねえか。

 渡辺さんはこのままじゃまたふられてしまう。

 でも、前視た時とは違うことがあった。

 フラれた理由に今のごうくんという言葉が無くなった。

 しかし、今は剛くんという言葉が存在していた。

 ここから考えられる理由は2つだ。

 1つはシンプルに渡辺さんと付き合うことが出来ない。でも、これは元も子もない話だ。考えるまでもない。さすがに、あれほど喜んでいた茨木さんが渡辺さんを本気でふるとは思えない。

 ならば、考えられるのは2つ目の理由だ。

 それはクラブだろう。

 1度目と2度目。そのどちらにも理由にクラブのことが上がっていた。

 もう渡辺さんだけではどうしても無理だ。未来を変えるために俺たちに何が出来る? どうすれば……。



「どうだった?」


「結果は変わらなかった」


「それじゃ……もうダメなの?」


「いや、まだ諦める訳には行かない。結果が変わらなかっただけでまだ俺たち次第では変わる可能性がある」


「どういうこと?」


「渡辺さんのフラれる原因がクラブのことオンリーになっていたんだ」


「えぇー。そっちの方が詰んでるんじゃ」


「そうかもしれない。でも、何かクラブの問題を解決できる方法があればいいんだが」


梨花りかに聞いたら、また何かわかるかも」


「そうだな。とりあえず、今は俺たちは2人にバレないように尾行しよう」


「うん」


 俺たちは2人を追いつつ、梨花と芦屋の買い物の終了連絡を待つことにした。



 現在時刻5:20。


「あれ? 電話来たんじゃない?」


「梨花からだ」


「もしもーし。今どこー?」


「今公園そろそろ抜けそうな場所だな」


「2人はどこ行く感じなの?」


「どこかまでは分かんねえけどご飯でも食べに行くんじゃないかって思ってる」


「ここから歩いて行くって言ったら大井埠頭じゃないの?」


 文殊が横から教えてくれたが、実は俺はあんまり詳しくないためその場所が分からなかった。


「大井埠頭? かもしれないらしい」


「キヨアキくんの現在地送れる?」


「送れるけど、結局そっからどうするんだ?」


「一旦そっちまで行ってまた2人が着いたら場所教えてよ」


「分かった」


「自転車はどうしてるの?」


「俺たちはそっちに置きっぱなしだけど」


「了解ー。じゃあ、また後でー」


「ああ、ちょっと待ってくれ」


「どうしたの?」


 ここで先程の告白は失敗するであろうことを梨花たちに伝えなければいけない。

 しかし、梨花たちからしたら根拠もない話をこれ以上しても俺の信用を失ってしまうだけだろう。

 俺が未来を視れることを今伝えるべきなのか。

 伝えなければ行けないと分かっているのに、上手く声に出ない。

 ただ怖い。今すらも失ってしまいそうで。


「ちょっとー。電話で黙らないでよー」


「ああ、すまん。もしも、もしもの話なんだけど」


「え? うん」


「こんなけ俺たちが尽くしても茨木さんが渡辺さんをふるとしたら、クラブの話だと思ってさ」


「え? ああーうん」


「なにか知らないか? 茨木さんがそれほどクラブに熱中する理由」


「よく分からないけど、キヨアキくんはまだ剛くんがふられるって思ってるってこと?」


「いや、もしも、もしもの話だ」


「今はクラブのことで忙しいって前に言ってたのは多分、次の大会が全国かかってるからじゃないかな」


「え?全国?」


「うん。都大会がそろそろあるからそれで上位入らなきゃダメらしいし。正直言ってフラれる理由もうちはずっとその事だと思ってたんだけど」


 そんなでかい大会待ってたのかよ。

 それが1、2ヶ月で終わるならもう少し待てばいい……。

 いや、俺が視た未来じゃフラれてしまうんだ。1度傷ついた関係は簡単には埋められない。

 やっぱり、告白を成功させるしかない。


「ありがとう梨花。それだけ聞けたらどうにかできそうだ」


「ホント?」


「じゃあな」


「うん」


 梨花との通話を終え、文殊が「どうするの?」と本日何度目か分からない質問を尋ねてきた。


「やっぱり、このミッションは渡辺さんが鍵だ」









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