第36話 安倍 清明の過去が明らかになるまで①

 先程、みんなに告白は夜に行われるなどと言ったが場所に関しては全く知らないから結局つ2人について行くしかない。

 あとは成功を祈るのみなのだが、未来を視なければやはり不安で仕方がない。

 なんだよこれ。未来を見れないことって普通のことのはずなのに。禁断症状みたいになってるじゃねえか。


「それで2人はこの後どこに行くの?」


「そこまでは聞いてないからただ見守るしか無いな」


「そっかー」


 現在時刻は既に4時30分。

 空も春らしい茜色というほどでは無いが、水族館に入った時よりは確実に日が沈み、暗さが増したように思われる。

 つうかすげえ長い時間いたんだな。


「2人が出てきたよ」


「あの感じだと、ショップで買い物とかするんじゃないか?」


「じゃあ、私たちはまだここで待機だね」


「うーん」


 梨花が少し残念そうな顔を見せていた。


「どうした梨花?」


「うちも買いたいものとかあったんだけど、買う時間もうないなって思って……」


「ああ、そういうことか。別に買ってきてもいいぞ全然」


「え? でも……2人が来たらうちらもついて行くんでしょ?」


「まあ、別に俺は2人を追いかけるし、俺たちはあとから連絡して合流すれば大丈夫だろ」


「じゃあ、僕も残るよ。さっき見た水族館特別仕様のインスタントラーメンが気になってさ」


 インスタントラーメンにも抜かりがないんですね。さすがです。


「私はキヨが1人は可哀想だから残るよ」


「そりゃ、どうも」


「とりあえずはあの2人が出てくるのを待つか」




 ようやく2人がショップから出てきた。

 30分くらい待っただろうか。

 思ってるより長かった。例えるならば、小さい頃の母さんとの買い物くらい長かった。

 例えじゃなくてそのままだなこれ。


「じゃあ、うちら行ってくるね。よろしくー」


「ああ、任せろ」


「それで、渡辺さん。成功しそうなの?」


「いや、申し訳ねえんだけど、もう1回視させてくんない?」


「ええ? 別にいいけど。結構気持ち悪いんだからね。感覚的に」


「多分次が最後のはずだ。成功していれば」


「ちょっと前まで未来を視るの怖い怖い言ってたのに」


「成長したってことだな」


「それはどうだか。私は心配してるの。あんまり見ない方がいいんじゃないかって思って」


「どうして?」


「今日の朝言ってたじゃん。昨日も華泉けいちゃんの未来見れなかったって」


「それはそうだけど」


「昔のこともあるしさ。それがキヨの言う昔と向き合うってことならまあ否定しないけど、なんかあんま良くない気がしてさ。キヨにも華泉ちゃんにもなにかあるんじゃないかって心配なんだよね」


「それは……たしかにな」


 文殊の言うことは筋が通っていて今の俺に響くような言葉だった。

 俺が未来を視れるようになったのも生まれつきなんてもんじゃない。

 あの日からだ。




『じゃじゃーん。みてこれタロットカード』


『うわ、なんかヤバそう』


『何その感想? そしてなんとこれを使って清明くんを占います』


『いや、いいよ。俺そういうの信じないし』


『信じるか信じないかじゃないでーす。することに意味があるんでーす』


『意味わかんねえ』


『とにかく、清明は何か占って欲しいこととかある?』


『いや、別にないけど……』


『じゃあ、恋愛でいっか』


『そんな適当に決めるなよ……』


『別にいいでしょ?』


『まあ、いいけど』


『じゃあ、今から私が質問するから清明はその質問を強く思ってカードを引いてね』


『わかった』


『あなたの理想の人はどのような人ですか?』


 ……


『何このカード?』


『これは恋人の正位置のカードだよ』


『正位置?』


『そう正位置と逆位置があってこのカードは正位置が良いの。だいたい正位置の方がいいんだけどね』


『へー』


『それでずばり占い結果としてはあなたの弱いところを見せられる人です。それに既に出会ってる可能性が高いことを示すカードなのでーす』



『……』


『あれ、どうしたの?』


『いや……』


『思い当たる人でもいるの?』


『うるさい。それよりこれ全部覚えたの?』


『そうだよ。すごいでしょ』


『まあ、すごいけど』


『じゃあ、次清明が私にやって』


『ええー。俺カードの意味とか知らねえんだけど』


『意味は私が分かるから』


『質問はどうするんだよ』


『うーん……』


『明日の席替えの調子を占って欲しいな。高校入って2回目の席替えだよ。大事に決まってるじゃん!』


『調子ってなんだよ……』


『とにかくやりなさい!』


『じゃあ、あなたの席替えの調子はどうですか?』


『いや、これむちゃくちゃ恥ずいんだけど』


『はい、じゃあこのカードにしまーす』


 ………



『これはえーとなんだったっけ』


『どうしたの清明?』


『え、ああいや、なんでもない』


『なになにー。私に見とれちゃった?』


『違う。ただ、祝雪の明日の席が1番後ろな気がして……。気がしたというよりかは今はっきりと見えたような』


『すごいよ、清明。雰囲気に騙されて、絶対大学とか行って変な人について行ったらダメだからね。色々怖いらしいよ』


『占い師になった気分で言ってる訳じゃないから。やめろよ』


『後、全く覚えてないのかよ』


『仕方ないじゃーん。昨日頑張っただけなんだし。清明がやってよ』


『ええー嫌だよ。めんどくさい』


『清明ってこういうのすごい向いてると思うけどな。清明と話すとね結構落ち着くんだよ。だから、その話術と占いの腕が合わさればすごいと思う。これが清明と私流の占い術だよ。清明と話をして元気になる子だっているかもしれないし。ちなみに、第一人者は私ね』


『ええ? まじで……やらなきゃダメ?』


『うん、まじでやろー』


『わかった』


『物分かりが良いガキは好きだぞー』


『おい』


『ということで今日はゲームしよー』


『これはどうするの?』


『あげるよ。清明に』


『さっきの本気なのかよ!?』


『頑張って覚えてね。高かったんだし』


『まじかよ』


 ◆


『ねえ、キヨ……本当に席替え1番後ろになったんだけど』


『ええ。まじか』


『やっぱり、キヨは占いに向いてるね』


『占い関係ないだろ別に』


『それより……やる気になった?』


『まあ、今度文殊に試してみるよ』


『うん。良き心がけだ』


 ◆


『清明、私の教えた占い術はどうかな?』


……

















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