第9話 10月

「すぅ、はぁ……よ、よし、行くよ!」

(ちょっとドキドキ、ううん、かなりドキドキする。でも、インターフォン押しちゃったし、やっぱやめたはムリだよね!

 うん、ガチャってドアが開いた。さあ、行くよ!)

「ト、トリックオアトリ~トォ~♪

 お菓子か、イタズラか。キミはどっちだ~?


 …………って、そんなポカーンって顔しないでよ! わたしだってちょっとこれは攻めすぎたかな~って思ってるんだからね!?

 『だったら、普通に魔法使いみたいな帽子とステッキだけで良かったんじゃ』って? そ、そう思ったんだけどさ……、キミがどんな反応するかなってドキドキして……その、気づいたらポチってまして……で、届いたこれを着てみたら、その……すそが、ね?」

(うぅ、やっぱりストッキングでも履けばよかったかな? でも、なんか黒すぎるかなって思ったし……でも、すそが短すぎるよぉ!

 う、動いたらパンツ見えるんじゃない? この魔女のコスプレ衣装……!)


「うぅ、本当冒険しすぎだよわたしぃ~……。って、うぇ!? か、かわいい?

 あ、ありがと……。け、けど、やっぱり恥ずかし――って、せっかくの魔女コスプレだから、魔法使ってみないって!? 使えないから!!」

(使えないどころか、わたし……キミに恋の魔法かかっちゃってるから! 言えないけど……)

「そこをなんとか? も、もう、わかったよ。じゃ、じゃあ……ってどんな魔法を唱えればいいんだよ?

 え、体が勝手に動くような魔法とか? それって催眠じゃ……ま、まあ、それなら……。

 カ、カラダガカッテニウゴキタクナール~♪ ――ま、魔法の言葉なんて思いつかないよ! って――ひゃあ!? ちょ、ちょっと、キミっ!」

(だ、抱きしめられてる! わたし、抱きしめられてる!! ……あ、キミのにおい、好き……頭がぽわ~んってなるくらい、好き……♥

 だから、しかたない……よね? きっと、わたしも、魔法にかかってるんだから……)


「す、きぃ……。わたし、キミのことが……好き。大好き……♥

 だから、友達じゃなくて……恋人に、して。

 ……え? もう、恋人だって……思ってた?

 ……バ、バカァ……。でも、うれしい」

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