第8話 9月

「お、おじゃましまーす……。

 え? なんで緊張してるんだって? ……そ、その、えっと……。

 きゅ、急にお月見しようって言ったじゃん? それって、つまりお泊りデートってことで……ごにょごにょ。

 えぇ!? ち、違うの!? そ、そうなんだ……っ。え!? が、がっかりなんてしてないから! もうっ、違うったら違うの!

 そ、それより、どう……かな? キミ、ずっと前から着物姿似合うって言ってたじゃん? それで安いけど、買ってみたんだ。

 え? 似合う? 可愛い? うなじを見せて? ~~~~っ! へ、変態!

 けど……似合うって言ってくれて、ありがと……」


「今日は雲ひとつない天気だから、月がキレイに見えるね。

 じ~……。お団子……、食べてもいい?

 うん、じゃあいただくね。

 もにゅもにゅ……ん~、おいしい~♪ やっぱり、お月見ってキレイな満月見ながらお団子を食べるにかぎるな~♪

 ん? キミもちゃんと食べなよ? でないとわたしだけで食べちゃうよ?

 そ、それとも、また……あ~んって、してほしい? な、なに驚いた顔してるんだよ? それとも、してほしくない?」

(真っ赤になってるキミの顔、わたし……好きだな。

 気づいてる? わたしね、お泊りするんだって本気で思ってたんだよ?

 キ、キミが受け入れたら……え、えっちなことだって、しちゃうんだからね?

 い――言えないけど! 言ったら、恥ずかしいし、えっちな子って思われちゃうし……!)


「『口に入れないのか?』――え、あ、う、うん。そ、それじゃあ、あ~ん……。

 お、おいしい? ……うん、よかった。

 じゃ、じゃあ、わたしにも……あ~ん、して……?」


 ……ちょっと甘い月見団子だけど、キミからあーんしてもらったそれは、ドキドキして味がよく分からなかった。

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