第四話 まさかのプリンス登場

「気を付け、礼」

「「「ありがとうござました」」」

 授業を終え、昼休みになるとクラスそれぞれ昼食をとる為に移動する中、俺と大輝は机を合わせお弁当を袋から取り出すとガンッと横からもう二つ机が増える。

「あ、あの高橋君達よかったらなんだけど今日一緒に食べないかな⁉」

「桜子が一緒に食べたい気分らしいからいいかしら」

 少し恥ずかしがりながらこちらを見る宮下とどうもお願いしているようには見えない玲奈。対なる存在なの?と思わず突っ込みたくなるほどの正反対な反応。

「いやいや、こんな可愛い二人にお願いされたら断るどころかこっちがありがとうございますって言いたくなるくらいだよー、なっ、正吾」

「あ、ああそうだな!」

 口角が上がり切った大輝の勢いに負けたが、確かに昼を一緒に食べれば玲奈の気を引くことも可能かもしれない。こんなチャンスをありがとう宮下。

「私が可愛いのは当たり前。」 

「高橋君まで可愛いなんて、、。」

 またしても全くの正反対具合。その正反対さから派閥が分かれる理由を少し垣間見ることができたよう気がした。でも、可愛いなんて宮下レベルなら言われ慣れているだろうに、そんなことを思いながら赤面する宮下の頭の上を見るとそこには一〇〇パーセントの文字があった。


「それでね、隣のクラスの子が、、」

 他愛もない話をしながらそれぞれ食べ進めているのだが、宮下の頭にある一〇〇パーセントの文字が気になりすぎて中々弁当に手を付けることができない。本来なら今頃玲奈を惚れさせる計画を練っているはずだが、それどころではない。なんだなんでだ、一〇〇って好きってことだよな、、。記憶を辿りに辿るが惚れられるようなことをした記憶はない。

 宮下とは中学から一緒だが、中学時代にはまともに話したことすらない。

「高橋君、私の顔に何かついてるかな?」

 宮下の発言の後、宮下の横から鋭い視線がこちらに向いている。

「ああ、ごめん、なんでもないよ」

 私の親友をジロジロ見るなって警告かよ。

 そうだよ、俺は玲奈に振られたばかりで、諦めないって決めたんだ。

 他の子に色目を使っている場合じゃない。今は玲奈を落とすことだけを考えろ。

「冬崎さんいる?」

 きゃああ、かっこいいというクラスの女子が盛り上がっているかと思えば、二年B組のドアの陰から初めて見る男が顔を出す。

「池田先輩! 今行きますね!」

 玲奈が席を立ちあがり笑顔で先輩の元へ向かっていく。

「誰なんだ、あの人」

 不思議そうに俺が聞くと大輝が知らないのかよという表情で説明を始める。

「三年C組 池田レオ イギリスと日本のハーフでサッカー部主将。その甘いルックスと金髪から就美高校のプリンスと呼ばれてるが実の話、数々の女を手玉に取り泣かせるとんでもない男だって話もある。」

「そんな人がなんで玲奈を呼びに来るの?」

 宮下が疑問そうに聞くと大輝は机の真ん中に顔を寄せ小さな声で

「ここだけの話、あのプリンスが冬崎さんに告白したらしいがまだ返事待ちらしい。冬崎さん中々やるよ、あのプリンスへの返事を一週間も待たせてるって話だ。」

 玲奈が告白されて返事をまだしていない。俺はすぐに振られたってのに。なんでだよ、なんで。

「まぁ、あの難攻不落の冬崎さんだし、冬崎さんには正吾もいるし問題ないとは思うけどな」

 ハハハと笑いながら言う大輝には悪いが、たしかに、いくらイケメンでも玲奈のことだ、いつも通り振って終わりだろうでも振られたなんて言ったらどうなるんだろうか。

 あいつの隣は空いてるって言ったらどんな結果をお前は予想をするかな。

「どした、正吾」

「大丈夫? 高橋君」

「ああ、大丈夫。ありがとう」


 昼休みが終わりそれから数日、俺は玲奈と距離をとっていた。

 お弁当は要らないとメールをして購買でパンを買うように。

 毎日七時半に起き、玲奈が来る前に家出る。

 下校時も大輝と帰るようにしていた。

 その間、池田先輩と玲奈が一緒にいるところを何度か見かけたが、どの玲奈も笑顔ですごく楽しそうだった。悔しいがお似合いでそこに俺が入る余地はないように感じた。

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