第三話 好感度100な宮下さん

「おはよう玲奈、高橋君!」

 右手を上げ、ポニーテールを尻尾のように左右に振っている宮下がこちらに駆け寄ってくる。 

「おい、そんな下見ずに駆け寄ってきたら」

「下?」

 その忠告をきいたときにはもう遅い。宮下の左足は段差を越えていたが右足は段差に取られ、身体は前へと傾き始めていた。

「宮下!」

 受け止めようと前へ駆け出したが間に合いそうにない。あーあ、あれは顔からいったな。


 諦めたとき奇跡は起きた。

「ふんぬぅうう!」 

 なんと宮下は力強い声とともに左足を踏み込みその場に留まったのだ。

 さすが国体選手、恐ろしいほどの体幹を持っている。


「あー、危ない、危ない。見たかね二人とも!」

 ドヤァと自慢げな顔でピースした手を俺たちの前に出した次の瞬間、「あっ」横から飛んできたサッカーボールは宮下の顔に直撃した。

「ふみゃぁぁ⁉」

 驚きの声とともに宮下はその場に大の字で崩れ落ちる。

多分宮下誰かの不幸まで肩代わりしてるんじゃね?


「我が人生に一片の悔いな、、、。」

「いやあるだろ」


 なぜか人生を終えようとする宮下に駆け寄り身体を起こすと鼻血が出始めてきた。

「玲奈、宮下を保健室に連れていくから先行ってていいぞ」

「わかったわ、一つだけ言うけれど間違っても桜子に手は出さないでね?」

 宮下を抱える俺に、玲奈は圧力を感じる発言で釘を刺す。

 まぁ、玲奈の親友で唯一の友達だ。心配なのはわかるが俺が好きなのは玲奈だって知ってるくせに。

 

「すみません、一人倒れたんですけど」

 保健室に入るがそこには誰もいない。

 とりあえずベットに移動させようと向かう途中、宮下の目が開く。


「たたた、高橋君⁉ どっ、どういう状況⁉ 」

「ああ宮下起きたか」

 宮下を抱えたまま、顔を見ると焦っていた顔がどんどんと赤くなっていく。


 状況を理解した宮下は大きな声で「おおお、お姫様抱っことか好きな女の子以外にしたら勘違いされちゃうよ! 私大丈夫だから、じゃあ!」 

「宮下、鼻血は⁉」

「大丈夫! 気合で何とかなるから!」

 保健室のドアをバンッと閉め、慌てるように宮下は廊下を走り抜けた。


「どうしたんだあいつ、、。」


 キーンコーンカーンコーンとホームルームの予備チャイムが校内に鳴り響く。

 「やべっ、俺もいかないと」

 宮下を追うように保健室を後にする。


 なんで宮下あんな焦っていたんだろう。色々ありすぎて宮下の好感度を見ていなかったけど、もしかして俺のことが苦手であんなに嫌がってたのか、、。

 お昼にでも見てみるか。

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