三が知ってる秘密

バスタオルで、さんの頭を拭いてあげる。


「一緒に入りたくなかったやろ?」


「ううん。シャワー浴びてる間、寒かったんちゃう?」


「いや、大丈夫。これ、新しい下着」


「ありがとう」


「パジャマ、俺のでいいかな?」


「うん」


「じゃあ、これな」


パジャマを着ようとした俺を三は、引き寄せてきた。


「まだ、着てないんやけど」


「あったかい」


「当たり前やん。生きてんねんから」


「知ってる。」


三は、泣きだした。


「どないしたん?寂しなったんか?」


「竹君は、死なん?」


「それは、いつかは死ぬやろ」


「いつかなんか聞いてない。俺が、生きてる間はおってや」


「俺、5つも上やから三よりは長生きやない思うけど」


「いやや。生きてて」


三は、俺と出会った時みたいだ。


「俺より身長伸びてんのに、出会った時みたいに可愛いな。犬みたい」


「犬って」


「何か昔から捨て犬みたいな目してたやん。拾って下さい感。捨て猫かな?」


「竹君の為なら、捨て猫でも捨て犬にでもなろかな。」


「俺の事、好きちゃうやろ?」


「好きになりたいやったら、アカンの?」


「何やそれ。キープの女にゆうセリフか?俺に使うなよ。パジャマ着させて」


ガンッ…って、洗面台に押しつけられた。


「竹君、俺やったら嫌なん?」


「三、きゅうに酷いことゆったからおかしなったんか?」


「ちゃう、俺。もう一つ秘密しってんで」


「えっ?」


「17歳の時、竹君とたつくんやったやろ?キスも、それ以上も…」


「はあ?何ゆうてんねん」


俺は、三を離そうとするけど力は三の方が強くなってた。


「だって、竹君は押しに弱いやん。それ、竹君の悪い所やろ?必要やって感じたら、受け入れてまう。あの日も、してたやん。」


「あの日って……」


三が言った、あの日を思い出した。


はちに会えんくなって壊れてた若。


「若、俺がおるやん」


「今日、泊っていき。三も泊るって」


夜中、俺の上におい被さってる重みで起きた。


「若?怖いんか?」


「ギュッーってして」


「うん」


スキと好きが曖昧やった俺。


おかんを亡くして、求められたら返したくなった俺。


「竹、やろう?」


「はあ?」


俺は、男に興味なんかなかった。


「アホちゃうか、寝るで」


「竹、嫌なん?」


「えっ?」


「なぁー。竹は、俺が嫌いなん?」


「嫌いやないよ」


「それやったらええやん」


「ええの?」


「うん。みんなしてるで」


「みんなって、きざもしてるん?」


「してる、してる。男はみんな友達としてるから」


「ほんま?」  


「九と三かて、もうしてるから。だから忘れさせてや、竹」


俺は、若に嘘をつかれた。


別に初めてじゃなかったし…。


その後、数ヵ月は付き合わされてお互いに彼女が出来て自然に終わった。


俺は、友達同士でそんな慰めあいをするものなんやと思い込んでいた。


違うと知ったのは、22歳の時で。


「えー。そんなんあったやつっておかしいやろ?ないない。そんなん」


バイト先の数人に、友達の話しでって聞いたら全否定をされた。


あれは、若の嘘やったって気づいた。


「三、若に聞いたん?」


「聞いてへんよ。泊った日の夜中トイレ行く時に見た。我慢してる竹君、綺麗やったよ」


「三は、若が好きやろ?」


「たつくんも綺麗やったけど、それ以上に竹君は綺麗やった。俺、初めて下半身に熱を感じたんやで。今まで、なった事なかったのに。それから、竹君は俺のおかずやったよ。」


「いやいや、三が好きなんはずっと若やろ?」


「ちゃうよ。あの日から暫くは竹君に興味持ってた。でも、たつくんにそれは恋やないって言われた。俺も、そんな気はしてた。だって、下半身は熱をもつのに…。ドキドキは、せんかった。だから、やりたいだけやったんやと思う。」


三は、俺の鎖骨から手を滑らせる。


「興味やったんやと思う。この綺麗な体をいじめてやりたい興味。」


「三、俺は、せーへんよ。それは…。」


「何で?断れへんから。これも、つけさせたんやろ?性格全然かわってないやん。」


みかにつけられたキスマークの痕をつねられる。


「それは…」


「俺やったらアカンとかないから。わかるよね?」


「そやけど、あれから男とは…」


「しようとしてるやん」


「痛いよ、三」


三は、俺を獲物を見る目で見つめてる。


さっきとは、全然違う目で。


怖くて堪らなかった。


だって、俺は、三には…


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