はやてからの電話

「りすさんも、ハグしたげようか?」


「い、いいです。」


「してもらいなよ。せっかくだし。」


真白ましろさんに、肩を叩かれた。


「じゃあ、次、会う時を考えて軽めにね。」


俺は、りすさんを抱き締めた。


「めっちゃ、いい匂いします。」


「りすさんもしますよ。」


「吉宮さん、恥ずかしいです。」


「じゃあ、終わりにしましょうか」


俺は、離れた。


「りすさん、お疲れさまでした。不妊つらかったと思います。それでも、頑張りましたね。」


「ありがとうございます。」


りすさんは泣いて、真白さんもそれを見て泣いていた。


ブー、ブー


「ちょっと待ってね、はい。うん。わかった。」


俺は、電話を切った。


「ごめんね、はやてに会いに行かないと行けないから、帰るね。今日は、ありがとう。あっ、かっちゃん。紙ちょうだい。」


「はい」


「これ、俺の番号。りすさんは?」


「あっ、これです。」


「ありがとう。」


「じゃあ、送ろうか?」


「いえ、真白の車できてるので」


「じゃあ、気をつけてね」


「はい」


りすさんと真白さんは、車から降りて行った。


「また、お兄さんの話ですか?」


「うん。かっちゃん、はやての家に宜しく」


「わかりました。」


「ちょっと、休んでいい?」


「大丈夫ですよ。」


俺は、目を閉じた。


.

.

.

.

.


「つきましたよ。」


「ありがとう、かっちゃんついてくる?」


「いや、やめときます。」


「じゃあ、ありがとう」


俺は、はやてのマンションに行く。


ガチャ…。


真っ暗闇だ。


パチン


「はやてー。いるんだろ?」


俺は、歩いていく。


パチン


「また、カタツムリしてんのか?」


バサッ…。


ベッドの布団を捲ると、はやてが丸まっていた。


「凛」


「また、お兄さんと何かあったのか?」


「離婚した奥さんと子供に、お金やりたくないって、また言い出してるんだよ」


「またか…。で、次は何て?」


「従兄弟の子を形だけの養子にして、死んだ後その子にいくようにするんだとか何とか言ってた。再婚した兄貴に、子供が出来なくてよかったよ。」


「はやて」


俺は、はやてを抱き締める。


「兄さんが、離婚して三ヶ月後に今の奥さんと結婚しただろ?俺は、ずっと、不倫してたと思ってるよ。前の奥さんによくキレてたし。子供も可愛くないとかいいやがって…。出来ない人とか、俺達みたいなのとかさ。兄貴は、馬鹿にしてるんだよ。」


「はやて、気にするなよ。」


「縁切りたいのに友達いないのか知らないけど、俺にばっかり相談してくるし…。」


「また、従兄弟から、金貸してか?」


「ああ、電話きた。こどはやが、ブレークしてるなら、年収は、二千万ぐらいだろ?だってさ。だから、500万貸してだってさ」


「貸す必要ないよ」


「わかってるよ、凛」


「じゃあ、ビールでものもうか?話したい事あるし」


「大宮さんに、会ったの?」


「そうだよ」


「じゃあ、話し聞くよ。」


そう言って、はやては立ち上がった。


リビングに、はやてが、やってきた。


家族と仲いい俺と違って、はやては複雑な家庭環境だった。


「はい、ビール」


「ありがとう」


「俺には、はやての事わからなくてごめんな」


「凛には、こんな思いして欲しくないよ」


「央美の事、少しは理解できるのか?次の台本、結構なやつって話。チラッと聞いたけど」


「らしいね。海ちゃんから聞いた。なんとなく、自分を削りたいとは思ってるよ。」


「そっか」


俺は、はやての手を握りしめる。


「謝るつもりはないって。兄貴から、父さんの伝言。そのかわり、俺の稼ぐ金もいらないからって。」


「そうか」


「小さい頃は、ずっと殴られていたから…。海ちゃんが、13歳の時にスカウトにきてくれた時嬉しかったんだよ。やっと、この地獄から抜け出せるって思ってさ。」


「そうか」


「凛とは、理由が全然違うよね。凛は、好きな事見つける為になったんだもんね」


「そうだな」


はやては、俺の肩に頭を置いた。



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